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「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花①

愛してる、そばにいて0595

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   たとい私が、人々の言葉や御使たちの言葉を語っても、
   もし愛がなければ、私の言葉は、喧しい鐘や騒がしい楽器と同じである。
   


 司教の聖書朗読が始まり、人々が粛然と耳を傾ける。



   たとい私に預言をする力があり、あらゆる奥義と知識とに通じていても。
   また山を移すほどの強い信仰があっても、もし愛がなければ、私は無に等しい。
   たとい私が自分の全財産を人に施しても、
また自分の身体を焼かれる為に渡しても、もし愛がなければ、一切は無益である。



 朗々と語られる言葉の数々は、まさに愛に満ちて…、‘愛の賛歌’と呼ばれるに相応しく清廉だった。
 それを聞く、司の心の中とは真逆に。
 


   愛は寛容である。



 …ウソだ。
 偽善だ。愛はすべてを奪う。
 司は心のうちで司教の声に唱和し、薄く嘲笑う。



   そして、愛は情け深く、また、妬むことをしない。



 彼にとって愛とは無慈悲なものだ。
 いつも嫉妬していた。
 彼女が見る、彼女の目に映るものすべてに。



   愛は高ぶらない、誇らない。



 …お前の愛が俺の上にある、それがどれだけ誇らしかったか。



   不作法をしない。
   自分の利益を求めない、苛立たない、恨みを抱かない。



 もし、本当に‘愛’というものが、それほどに清く正しく崇高なものだと言うのなら、けっして彼女は壊れてしまうことはなかっただろうし、彼もまた、罪を犯すことはなかっただろう。
 それとも、彼のそれは‘愛’ではなかったからだと言うのだろうか。
 …関係ねぇ。
 たとえ彼女へと抱いた感情が、愛であろうとなかろうと、彼にとってはどうでも良いことだった。
 ただ、そばにいて欲しかっただけ。
 微笑んで、彼と一緒にいることが幸せなのだと、彼女にも言って欲しかった。



   不義を喜ばないで真理を喜ぶ。
   怒らず、人のした悪を思わず、不正を喜ばずに真理を喜ぶ。
   すべてを我慢し、すべてを信じ、すべてを期待し、すべてを耐え忍ぶ。



 耐えることができなかった。
 彼女を―――いや、運命をこそ、信じることができなかったのだ。
 彼女と自分との間に、結ばれ得る絆がそこにあるだなんて。


 
   愛は決して絶えることがない。

     (※新約聖書 コリント人への第一の手紙~より)



 …そうだ、絶えることなどあるはずもない。
 彼が彼女を求めず、愛さない日など永遠に来るわけがないのだから。
 けれど、彼が愛している、彼を愛していると言ってくれた片割れである彼女は、真実とともに永遠に彼から失われてしまった。
 愛は…終わった、一方的に。
 いや、元々彼の上に注がれるべき愛情ではなかった。
 後ろを見ずして、そこにいるはずの男の存在を、司は強く意識していた。
 彼女が恋して、彼女が見つめていた……彼の親友。
 『花沢類』
 いまでも、彼女がまるで大切な宝物を抱くかのように、甘く幸せそうな声で、類を呼ぶ声が耳に容易く蘇る。
 軋る胸の痛みと、掻きむしりたいほどの嫉妬と共に。
 …お前は結局、何一つ労せずして、あいつを手に入れるのかよ。
 この世のあらゆるものすべて、手に入らぬものなどないはずの彼が、唯一喉から手が出るほどに欲したその場所を、かつてはなんら価値のないものだと置き捨てたお前が…と。
 所詮信など置けないゴシップ誌の綴る戯言に過ぎないと唾棄すればいいのに、なぜか彼にはそれが、根も葉もない絵空事などではなく、真実であるという確信があった。
 言うなれば、理由らしき理由にさえならないはずの、野生のカンともいうべきものだ。
 …あいつは、今、類のところにいる。
 結局、すべてはあるべきところに戻ったのだという思い。
 そして、そんな思いとは裏腹に、どうしてあの日…彼女を解放してしまったのだと、心の奥底で彼女を壊した獣が悶え叫ぶ。
 心のどこかで、いつかこの日が来ることを予感していたというのに。
 …そうだ、俺はわかっていた。
 たとえ、それが類ではなかったとしても、永遠に彼から彼女を奪い去り、彼女のすべて…心もカラダも愛も、微笑みも、何もかもを得る男が現れる日を。
 絶望には底がないのだということを、何度思い知らされればいいというのか。
 甘美な地獄。
 彼女と過ごした10年間は、彼にとって本当に至福の時だった。
 ともにいればいるほど深まる情愛に、この世の天国をたしかに見た気がする。
 しかし、それも長くは続かなかった。
 自分を追う‘罪’の存在に気がついたのはいつの頃だったのか。
 ヒタヒタと迫る足音に、気がついたその瞬間からが地獄だった。
 彼女が彼の詐術に欺かれ、いつしか彼を愛するようになればなるほどに、彼女を失う恐怖に気も狂わないばかりに悶え苦しんだ。
 恐ろしかった。
 彼女の慈愛が彼へと注がれれば注がれるだけ、愛されれば愛されるほどに…失う日を恐れて、嘘を重ね彼女の目を覆い隠した。
 まるで、雪原の雪玉がさらなる雪を孕んで大きく重くなってゆくかのように、彼自身にもどうしようもできないほどに、いつしか罪は大きく膨らんで…。
 そして…弾けた。
 …誰がっ。
 どこの何者が自分のせいで傷つこうと、苦しもうと、それを悪いことだなんて、一欠片も思ったことはなかった。
 彼女と出逢い、彼女を愛した17才のあの日まで、司は自分のしたことで、後悔など一度たりともしたことがなかったのだ。
 それなのに…。
 …俺は、あの瞬間、あいつを真実永遠に失う道へと突き進んでしまったあの瞬間に戻れるというのなら、何を犠牲にすることもできただろう。
 ーーー間違いなく。
 それでも、彼女に出逢い、彼女に愛されたことだけは悔いることができないのだから、結局、二人の道が永遠に分かたれることこそが、運命だったのかもしれない。
 …それがわかってたって、お前を諦めることなんて到底できねぇんだけどな。
 今はもう、彼の胸の奥底にのみ住まう最愛の女へと、ボヤき、ふんと、鼻で嗤う。
 それは彼ら、…司とつくしをそういうふうに運命づけた神への憤懣だったのか。
 いや、たぶんただ、自分を嗤っただけなのに違いなかった。
 たかが一人の女、…かつての彼が彼女へと嘲ったその言葉を、たった一人の人間に囚われ、一人立つことのできない自分への嘲りに変えて。




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