「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影⑤

愛してる、そばにいて592

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 どちらにせよ、つくしはシャッツのことも忘れてしまっていた。
 おそらく記憶喪失になる前に、真実を聞いていたとしても、それで何が変わったわけではなかった。
 司が変わらなければ何一つ。
 そして、あの記憶喪失がなければ、彼とつくしの関係は、きっと永遠に平行線のまま、結局は破綻するまで変わりはしなかっただろう。
 小川はシャッツのことばかりではなく、当時つくしに対して行われていた司の非道を止められなかったこと、彼の母親なりつくしの力になれる人間に、真実を告発する勇気がなく見過ごした罪についても謝罪した。
 いまさらだ。
 それは小川を恨みに思うと言うことではなく、全て時の向こう過去のことだという思いからの本心で、当時、道明寺家の雇い人であった小川が、司に逆らう真似などできなかったのは、当然のことだったのだという諦観がある。
 …私にだって無理だった。
 監禁とは言っても、実際には鎖に縛られていたわけではなく、一室に閉じ込められていたわけでもなかった。
 逃げようと思えば逃げられたのだ。
 あの日、道明寺邸のバルコニーの階段から飛び降りた時のように、やろうと思えばできないことではなかった。
 けれど勇気がなかった。
 たとえ逃げ出したとしても、司に連れ戻されることがわかっていたし、もっと酷いことが起こる気がして。
 小川にとって長年の気がかりだったのだろう。
 もうすべては過去のことだと赦したつくしに、何度も頭を下げ、小川はホッとした顔をしていたように思う。
 恐縮する小川を最寄り駅まで送り届け、つくしも真っ直ぐにマンションへの帰路についた。
 …いまさら。
 本当に今更だ。
 まるで紐解くようにして、次々に明らかになる司と自身の絡まり合っていたさまざまな糸。
 けれど、それをこそ、運命だったのかもしれない。
 すべての絡まりが解けた時には、互いの糸が切れていることこそが。
 もはや繋がることのない互いの糸の先は、いったいどこへゆくというのか。
 誰と繋がっているというのか。
 それは―――、
 ピッ、ガチャ。
 マンションの電子ロックを開け、玄関に入ると、人感センサーが彼女の存在を感知して、柔らかな光を放つ間接照明が明かりを灯す。
 「おかえり、ずいぶん遅かったね」
 「…類」
 居間の向こう側から、姿を覗かせた類が柔らかく微笑んで、彼女を出迎えてくれる。
 ふいに、本当にふいに、こみ上げた愛しさと…哀しみ。
 …なんで?
 悲しいことなんて、何一つあるはずもないのに。
 たとえ、司との誤解が解けたにせよ、今はもうすべては、二度とは戻ることのない過去。
 「どうしたの?」
 立ち尽くす彼女のもとへと歩み寄った類が、怪訝に首を傾げて、俯く彼女の顔を覗き込む。
 「……おいで?」 
 手を握られ、優しく部屋の中へと導かれて、ソファへと腰を下ろす。
 「ちょっと、待ってて?」
 「……うん」
 両手の中に顔を埋め、そっと目を瞑った。
 どれくらいそうしていただろうか。
 しばらくして、類が戻って彼女の横へと腰を下ろした気配に、顔を上げる。
 「はい、これ飲んで?」
 「…ホットミルク?」
 「うん、ブランデー入り。熱くはないけど、けっこうアルコール分あるからゆっくり飲むんだよ?」
 「ありがと」




*****




 特に何があったのかと聞かれることもなく、ブランデー入りのホットミルクを飲んでいる間中、類はただずっと隣に座っていてくれた。
 優しく肩を抱かれ、髪を撫でられる気持ちの良さに、ホットミルクでリラックスした心がさらに慰められ、荒いでいた心も次第に落ち着きを取り戻す。
 甘えるように、逞しい肩に頭を寄りかからせ凭れると、チュッと軽いキスが頭に落とされる。
 そんな彼女の和らいだ気分が類にも伝わったのだろう。
 「…落ち着いた?」
 「うん」
 「今朝は徹夜だったんだろ?目の下にクマが出来てる。…今日はもう寝ちゃえば?」
 「………そうだね。今日はごめんね。急に外食頼んじゃって、類はちゃんとご飯食べた?」
 「会社でね。疲れた時や忙しい時まで無理しなくていいよ。あんたは雇い人じゃないんだし。それに俺のことだってさ、そんなに心配してくれなくても、ちゃんと食事しないと、遠藤からあんたにご報告がいっちゃうから、ちゃんとそれなりにやってるよ?」
 苦笑されてしまう。
 「人間の基本は三食なんだから、心配してもらえるだけ感謝しなさいよ」
 「ふふ、そうだね。…いつもありがたいと思っています」 
 「分かればよろしい」
 顔を見合わせ笑い合う。
 目と目が合って、気が付けば…キスをしていた。
 ん?と首を傾げる類の顔を、つくしがジッと見上げる。
 「牧野?」 
 「……類は私が欲しくないの?」
 わずかに類の目が見開かれ、2度、3度と瞬くのを見つめた。
 自分でもどうしてそんなことを聞いてしまったのか。
 とんでもないことを聞いてしまったという後悔もないわけではなかった。
 それでも…。
 …知りたいの。
 類が自分を本当はどう思っているのか。
 彼のプロポーズのその意味を。
 好きだとか、愛してるだとか。
 類に感じている自分のこの想いはなんなのだろう。
 あまりにも司とは違う男性。
 隼斗に感じていた感情とも違う気持ち。
 「あんたは?牧野は、俺のことが欲しい?」
 聞き返された言葉に、虚を突かれた。
 けれど、ただたじろいで誤魔化してしまうほど、もう子供ではないのだから。
 自分の中にいる自分自身へと問いかける。
 答えは簡単に出た。
 意外なほどにあっさりと、…シンプルに。
 「たかがセックスじゃん。あんたがしたいのならしよう。でも、したくないのなら、それだけのものだよ?」
 たかがセックスーーー本当にそうだ。
 俺だって普通の男だって言ったくせに、とおかしくも思う。
 …全然普通の男なんかじゃないよ。
 少女の頃に夢見た王子様、スーパーヒーローそのままに、彼女の心を包み癒してくれた男性。
 彼が傍にいてくれたからこそ、きっと自分は、今こうして司を懐かしくも…愛していたとあらためて認められたのだ。
 ありのままに。
 「しよっか、類」
 類の首に両腕を回して、彼の唇へとキスをする。
 ふっと柔らかく微笑んだ類が、つくしを横抱きに抱え上げ、ソファから立ち上がる。
 「牧野、あんたが欲しい」




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えぇ・・・

マジですか?次で結果が分るか・・・・。
本当に「つかつく」・・・ですよね?
純粋に司&つくしを応援する読者として、
最後までこ茶子さんを信じてみます。

最悪、類とSEXしたとなると、
司はショックで心が壊れるか、愛が冷めるかですよ・・・。
むしろ愛が冷めない方が不自然かな。ダチですよ?類って。
記憶がなかった隼人のときと違いますし、
完全ではないにしろ記憶が戻ってるつくしが類とSEXする!?
・・・・司を愛していたとあらためて認められた?
気持ちが軽すぎて、とても伝わってきません・・・・。
10年間の幸せは過去のことってアッサリしすぎでは?
そもそもシャッツのことも、あれほど怒っていたのに・・・忘れてた!?
そりゃそうでしょうね。
死因はどうであれ埋葬されたお墓さえ知らなかったのですから。
もちろん花も手向けてません。
もともとシャッツを飼いたいと言い出したのは、つくしです。
ペット飼うという責任が欠けてるのでなかろうか。
少し酷いなと感じました・・・。
司の立場で考えたら、いくら愛した女でも
ダチに抱かれたとなると、正直気持ち悪いかな・・・。
司のEDはますます直らないのでは?
もし司が寝取られて喜びを感じる変態な性癖なら直るかも(汗)。
でも違いますよね?そんなの司のイメージぶっ壊しですし。
これは強引な展開にしないと、二人が結ばれるのは厳しい感じがしますね。
何にせよ次が不安で仕方ありません・・・。

こ茶子さんの思惑どおりに?!

長かったような短かったようなこの1年近く😂
頑張りましたね? 私も! (*^^)

パスワード獲得のため、スケジュールに登録して、公開されたら、すぐさま獲得! 間違ってないか、何度も確認!
翌日の新章が開いて、ほっとして。\(^o^)/

八章 素敵でした! 終了後の気持ち😆
 昏い夜を‥‥は、拒否反応が起きた私ですが!

類と出会わなかったら、類もつくしも、ぐるぐると闇から抜け出せずに、苦しい人生だったかも (ノД`)

お互いが、理想的な セラピスト? 
心も体も冷えきった時の、湯たんぽ?(手も足も出てこない)

類も救われ、つくしも救われ、私も救われました。
つくしは、司と別れたからこそ、司を愛していたことが、分かったのですから。

あとは、戒が、司みたいに非道なことを起こさないうちに、
助けて下さい

これからの展開!楽しみにです。

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でもさ

司のことを愛してたと自覚したのなら
尚更、類とSEXなんてできないのでは?
類はあくまで高校生のときの初恋の相手というだけであって、
当時、自分は助けてあげられないと突き放したこともある。
後々で言い訳してるが、それは静を諦めた後で言われてもなぁ。
類を憧れてたのは、記憶が失う前のせいぜい2、3年ってことだろうし。
でも司の場合、幸せだった期間が10年というかなりの長さ。
戒も産んでいる。つくしは愛して生んだと考えてはいるが、
自分を優先して、結果息子を捨てたようなもの。
その罪悪感からか、血のつながりのない子供を
戒の代わり?親しくなっては、その親の男性と結婚するに至る。
でもこれは司を愛していたという記憶が戻っていないため致し方ない。

でも、類との再会から話が違ってきます。
司を愛してた記憶は戻ってきている。
それなのに、あっさり過去の話だと簡単に割り切れるとしたら
つくしにとって、司への愛は、その程度だったということなのかな?
類とSEXすることを了承しては、司を愛してたといわれても
普通なら躊躇すると思うのだけど・・・。
さらに、類と肉関係を持つと、戒への弁解も難しくなるような。
司=元旦那の親友(御曹司の環境は似たようなもの)でもあり
それが嫌で逃げだしたこともある。
言ってることと、やってることが矛盾してないかなと疑問に感じてなりません。

戒の絶望って一体なんだろうか・・・気になります。
自分が信じていた母親像が違ったと、
同級生の中傷が事実だったと誤解することなのかな?
それとも新たな事件か!?
こ茶子さんの面白みは、読者へ良いカウンターパンチがあるとこですね♪
ワクワクしますが、ときときキレ味が凄すぎて不安になりときもあります(笑)

あうち

訂正:

さらに、類と肉体関係を持つと、戒への弁解も難しくなるような。
類=元旦那(司)の親友(御曹司の環境は似たようなもの)でもあり

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