「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影④

愛してる、そばにいて586

 ←愛してる、そばにいて585 →愛してる、そばにいて587
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 結局、総二郎のするつもりだったという話はしないまま、来訪当初の予告の通り、まだ夜更けには間があるという時間帯に総二郎は帰宅して行った。
 学生時代はオールナイトでクラブで遊びまわったり、外泊も当たり前だったというが、さすがにそういったことはもう滅多にないらしい。
 女性関係は…というと、相変わらず派手なようだったが、それでも近々結婚するらしいという類の言葉のとおり、今年中には結納を済ませて結婚という運びになることは確かだそうで、やはり見合い=結婚という図式は最初から決まってるのだとか。
 「西門さんも年貢の収め時なのかぁ」
 「いつまで大人しくしてられるもんだか、って感じだけどね」
 「またまたぁ」
 テーブルの上の皿やらコップを片付けながら、話すともなく先ほど総二郎が言っていた話を反芻する。
 さすがに椅子を立って片付けに参加するほどではないが、類もここ数ヶ月でだいぶつくしに躾けられて、カウンター越しに食器類を受け渡すくらいのことはするようになっていた。
 雇用関係が成立していた間は彼を甘やかしていたつくしも、解消したとたん手のひらを返し、かなりスパルタに躾出したのだが、今のところ類も案外素直に従っている。
 …まあさすがに、茶碗洗わせたりするような家事までさせるつもりはないんだけどさ。
 縦のものを横にもしなかったお坊ちゃまとしては上出来だ。
 「昔から三つ子の魂百までもって、言うじゃん?」
 「それはね」
 つくしも類の懐疑に同意する気持ちもなくはない。
 「女癖が悪いのとギャンブル好き、それに借金癖は治らないって昔から言うものね」
 「だね。まあ、それでもさすがに結婚してしばらくは、さすがのあいつも、生活態度をあらためないわけにはいかないんじゃないかな」
 「うん、そうだよね。茶道界とは全然違う世界の…政治家のおうちの人なんだっけ?お相手のお嬢さんって。まだ、大学卒業してホヤホヤで、ずいぶん年も離れてるらしいし、西門さんが気遣って守ってあげなきゃいけないわよね」
 「ん~、そういうことともちょっと違うような」
 「なによ?」
 真正直に受け取って、素直に心配したつくしに、類も特にそれ以上反論することもなく肩を竦めた。
 「総二郎のことはもういいよ。それより牧野は、明日、休み?」
 「うん、類は仕事だよね?」
 「…………ハァ。司の結婚式になんて行けなくても全然構わないから、休みたい」
 「ははは」
 類の気持ちもわからないでもないが、ビジネスとはまた違う観点で、少しは親友の祝賀くらいには行ってやろうという気にはならないのかと呆れてしまう。
 「ならないよ」
 「ありゃ。また、口に出てた?」
 「まあね」
 あらかた綺麗に片付いたテーブルに手をつき、類がダイニングチェアから立ち上がる。
 「どうせ司の結婚だって、ビジネスでしかないんだ。あいつだって別に祝われたくもないだろ?」
 「そんなのわかんないじゃない」
 「そ?」
 類が首を傾げる。
 「違うの?」
 逆に問い返す。
 「知らないけどさ」
 類は小さく息を吐いて、珍しく逡巡するように少しだけ間を置き、だが結局は口に出すことにしたようだ。
 「俺的には、こんなこと言いたくはないんだけど」
 「………なに?」
 「ホントにいいの?」
 つくしには類の言いたいことがわからなかった。
 何がいいというのか。
 あるいは…なにがダメなのか。
 「いいも悪いも、私が口を出すいわれはない話でしょ?出来るものでもないし」
 「まあ、それはそうだけど」
 ましてや司の‘結婚’にはビジネスが絡んでいるのだ。
 総二郎と同様、司自身にさえ今更どうしようもないことだろう。
 たとえその結婚が、本人にとって意に沿わぬものになってしまったとしても。
 「優しい人だといいな」
 「……………」
 ポツリと呟かれたつくしの言葉に、類が彼女の顔を振り返り、ジッと見る。
 「西門さん、あんな言い方してたけど、イヤな人って印象じゃなかったみたいじゃない?……たとえ何があったとしても、戒のことはきっと司が守ってくれる。そういう人だもの。でも、司の新しい奥さんもいい人で、戒や…司を大事にしてくれればいいって、本当にそう思う」
 「そうだね」
 「うん」
 類が「ん~~」と大きく伸びをする。
 「も、寝るよ」
 「ん、そうして?」
 「牧野も片付けは適当にして、もう寝ちゃいな?いくら明日が休みだって言ったって、日頃疲労してるんだから、たまにはのんびりすればいいんじゃない?」
 類の気遣いに彼女も小さな微笑みで返す。
 「そうだね。…でも、食洗機もあるんだから、簡単にだけだよ」
 仕方なさそうに小さく苦笑して頷いた類が、ゆっくりとつくしの傍らへと歩み寄り、そっと彼女を抱きしめ、柔らかなキスを彼女の唇へと落とす。
 最初は驚くばかりだったつくしも、いつの間にか自然に目が閉じるようになっていた。
 まるでローティーンの少年少女のような、淡く可愛らしいバードキス。
 「おやすみ、牧野」
 「…おやすみなさい」
 もう一度微笑んで、類がつくしの体に回していた腕を解き、踵を返す。
 見るともなくそんな彼の後ろ姿を見送る。
 しかし、何を思ったのか、類は寝室のドアの前で立ち止まって、もう一度彼女を振り返った。
 「ああ、そうだ。あのさ?」
 「うん?なに、どうしたの?」
 キョトンと問い返す。
 「あんた、去年、いや一昨年か、静と岡山で会ったんだよね?」
 「へ?」
 唐突な質問に、咄嗟に頭がついていけず、いったいなんのことかと思い悩みかけて、すぐに記憶が繋がった。
 「あ、ああ…う、うん。そう言えば、そうだね」
 ホンの一瞬の邂逅だった。
 たしかに静もつくしに気がついていたが、友人というにはほど遠く、意外なところでの再会だったから、互いに会釈を交わしただけ、………ただそれだけの再会。
 …まさか、あんなところで静さんに会うとは思わなかったけど。
 それを言ったら、今こうして類と暮らしていることの方が、よほど想定外のことだったか。
 「ふぅん、なるほど。てっきり、実家との兼ね合いの一時帰国かなんかのついでの受診だと思ってたけど。そういうことか」
 何がそういうことなのか、一人で納得してしまっている類の言葉に怪訝に首を傾げる。
 「類?」
 「総二郎が、あんたに話したかったってこと」
 「う、うん?」
 「それに親父が急遽、静観するのをやめて、あんたに会いに来た理由」
 いったい何を言いだしたのだと、呆気に取られて類の顔を見ることしかできない彼女をよそに、類の言葉は確信に満ちていた。
 「たぶん今、静は日本にいるんだ」
 「え?」
 「それももしかしたら、東京に。だから、親父や総二郎が浮き足立ってるんだ。…まあ、俺にはもう全然関係ない話だけどさ」



◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ




web拍手 by FC2



関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて585】へ
  • 【愛してる、そばにいて587】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて585】へ
  • 【愛してる、そばにいて587】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
女性に大人気!ビジネスから恋愛相談まで全部500円~!  
価格満足度97%、日本最大級のココナラに今すぐ登録!!

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘