「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影④

愛してる、そばにいて584

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 「あ…っと」
 目を泳がせる総二郎をよそに、類はまったく平然としたままだ。
 当然、総二郎がそんな気まずげな様子を見せるのは、類のためではなく、彼女への気遣いであることはつくしにもわかっている。
 「そんなに後ろめたそうにしてくれなくてもいいわよ、西門さん」
 「そ…そうか、そうだよな」
 「海の孤島に住んでるわけじゃないんだから、こっちの雑誌にだって、それなりに情報は流れてくるし、いくらでもネットで見ることもできる情報だよ?牧野がそんなこと知らないわけないじゃん」
 ね?と類に尋ねかけられ、つくしも同意する。
 「うん、知ってる。去年の今頃だったかな?けっこう大々的に雑誌とかにも掲載されてたけど、ジューンブライドにしたいって言うの、新しい奥さんの要望なんでしょ?」
 「まあ、そういうことらしいな」
 実際にそのとおりなのかはまた別の話で、もしかしたらそうした逸話も、世間向けのいかにも仲睦まじさをアピールするための広報の一貫である可能性もなきにあらずだ。
 しかし、逆に言ってしまえば、司の結婚はもともとがそうしたものなのだ。
 家のための結婚。
 互いの利益と利便を追求した結びつき。
 そこに個人の心情が入る込む余地などはない。
 けれど、と思う。
 「仲良さそうだったし」
 「は?…会ったのか?」
 まさか、といった総二郎の言葉に、つくしではなく類の方が答える。
 「ん~、NYの空港で見かけたらしいよ。司と…再婚相手が腕組んで歩いてるとこ」
 「へぇ……」
 チラリとつくしを伺う総二郎の目に曖昧に笑む。
 おそらく今の彼の認識では、つくしはあくまでも司を嫌い憎んでいる‘牧野つくし’であって、だからこそどういう態度をとっていいのかわからないでいるのだろう。
 …司の話題が出るのがわかっていて、どうして彼の親友の類のところに来たのかって、前に聞かれたものね。
 その時には偶然だと答え、実際にそのとおりだった。
 しかし、かといって今の彼女が、司の妻だった当時のことを思い出していて、もはや彼への怨嗟よりも懐かしさと愛しさを感じていることを伝えたとしても、なおさら総二郎は困ってしまうだけだろう。
 …それに、もう私には関係ないことだ。
 司が結婚しようと、誰を愛そうと。
 もはや彼と自分の道は分かれてしまっている。
 ただ一点、二人の間に生まれた‘戒’という絆を残して。
 「つか…道明寺の新しい奥さんって、どういう人?」
 それくらいは尋ねても許される範囲だろう。
 「あ~、俺も社交の場で挨拶したくらいで、個人的にはよくは知らねぇんだけど」
 「うん?」
 「まあ、なんつーか、財閥令嬢なんて肩書きが似合わねぇくらい…あ~、破天荒つーか、能天気っていうか、やたらめったら元気な女だったかな」
 「それってかなりの変わり者って言わない?」
 横合いから口を挟んだ類の言いようからして、どうやら彼はその女性に面識がないようだ。
 「類は会ったことがないの?」
 「俺、去年までアフリカにいたし」
 「司の婚約者もその頃、死んだ元旦那とそこら辺にいたんじゃなかったっけか?」
 ―――死んだ元旦那。
 司の婚約者も再婚だということは知っていたが、その夫のことまでは、つくしは詳しく知らなかった。
 もちろん世紀の一大カップルとして一世を風靡している二人だ。
 調べればいくらでも情報は出てくるだろうが、つくしには興味がなかった。
 いや、興味を持ちたくなかったのだ。
 自分がいまだに彼に対して、完全に未練を断ち切れていないことを十分に自覚していたし、無意味な意地を張るには、もはやつくしも大人になっていたから。
 「オマーンだったか、サウジだかその辺でしょ?いったいどういう括りに入れれば、その辺になるわけ?お前」
 「ん~、砂漠の国?」
 「……………」
 「……………」
 どこまで本気なのか、…おそらくほとんど本気ではないのだろうが、総二郎はポンとグーとパーにした両手を打ち合わせて、
 「そうだ!俺らでさえ、おいそれとは行けねぇ超マニアックな国?!」
 「バカは置いておいて、……牧野、ついでだから言っておくね」
 「え?なに?」
 笑って二人のやりとりを見ていたつくしも、口調を改めた類へと向き直る。
 「おい、バカはねぇだろ、バカは。ちょっと雰囲気明るくしようと気を使って、ボケかましただけだっつーの!」
 自分を無視して話しだした二人に、総二郎がブーイング。
 しかし、すでに類の関心は、総二郎からつくしへと反れてしまっていて、そんな彼の抗議など一顧だにしない。
 「本決まりになったのって昨日だったから、言いそびれてたんだけどさ」
 「うん?」
 「おい、こら!無視すんなっ」
 「ちょっと、総二郎煩い、黙っててよ」
 「……まったく」
 さすがに自分でも大人げないと思ったのか、ハエでも払うように類にあしらわれ、仕方なく総二郎も口を噤む。
 「俺、来月、NYにまた出張になったから」
 「ああ、そうなの?珍しいね」
 基本、日本本社副社長の類の出張はアジアが中心で、ほとんどヨーロッパやアメリカに行くことはない。
 先日のNY出張はむしろつくしに付き合うために、類がゴリ押しをして実現したものであって、本来ならば異例のことだったのだ。
 その点、花沢物産と道明寺財閥とでは、やはり経営手法や方針がまるで違う。
 類の父も先日はたまたま日本にいたが、普段はヨーロッパを起点に活動していて、日本やアジアに出張することは稀だそうで、長年妻とともにヨーロッパに在住していて、今回の日本帰国も本当に数年ぶりのことだったそうだ。
 もちろん、その帰国も会社的都合というよりは、つくしに…息子の付き合っている相手に会い、検分する為の来日だったのだろう。
 彼ら花沢一族の場合、道明寺財閥の経営者一族のように、世界各地をオールラウンド的にカバーしているのではなく、それぞれの権限を守って、管轄の範疇を逸脱することはほとんどないらしい。
 …まあ、普通はそうだよね。
 楓や司の非人間的な過密スケジュールと激務は、そうした中央集権的な体制から来るもので、それだけに絶対的な権力を経営者一族である道明寺家が握ってはいたが、その分、彼らに超人的かつ殺人的な重過労も課して無理を強いてもいる。
 司の父親のように、肉体的に破綻するその時まで。
 「6月にNYで司の結婚式があるから」
 「え?」
 「会社からの命令で、司の結婚式に、俺も出席することになったんだ」



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