「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影④

愛してる、そばにいて578

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 「そんな…静さんを類から遠ざけたいだなんて」
 類と同じ階級に生まれ、美貌、教養、才知、何をとってもずば抜けた女性。
 かつてあの嫉妬深い英徳の女生徒たちですら、お似合いだと羨望する者こそいても、妬む者はいなかった。
 ましてや、静は類とは幼馴染み。
 類の父にしてもよく見知っている女性だろう。
 「昔とは事情が全然違うよ」
 ハッとつくしが類を仰ぎ見る。
 「それにたぶん、父…親父は俺が静と不倫していたことを知ってる」
 「…類」
 「離婚経験者と既婚者では、外聞的にも天と地ほどにも違う。ましてや、静が結婚した相手は、ヨーロッパ法曹界でも名の知れた名家で、親族の中にはフランス法相経験者もいるくらいだ」
 もし類と静の関係が暴露されてしまえば、醜聞どころの話ではないかもしれない。
 最悪、ヨーロッパにおける、花沢物産の繁栄に陰りが落ちる事態にも成りかねないことが、今のつくしにはわかった。
 もしかしたら、類の父にとって、つくしはそんな危険を孕んだ類と静の関係に、楔を打ち込む救世主的な存在と映っているのかもしれない。
 たとえそれが、花沢家とは到底釣り合わぬ家柄の生まれで、さらには2度もの離婚経験がある、ある意味瑕疵のある女であっても。
 「でも、もう類は静さんと……別れたんでしょ?」
 そう質問するのに、つくしの中にもかなりの葛藤があった。
 類の心を気遣い心配する気持ち。
 そして、その気持ちとは裏腹に、いつも彼の背後に静の影を感じ、密かに嫉妬している自分を自覚させられ、そんな彼女を類に知られてしまうのではないかという恐れ。
 …何をいまさら。
 自身の望みの為に、司を陥れ、我が子を捨てたことさえ知られているのだ。
 惨めさも、醜悪さも、何もかも類に取り繕えるものなど、いまさら何一つありはしないというのに。
 「もちろん、そうだよ。…言っただろ?」
 「ええ」
 けれどそれは、類から切り出された別れではなかったはずだ。
 「でも、それは、俺から切り出した別れじゃない」
 ドキリ。
 いつものように、気がつかないうちに自分の口から考えていることが洩れてしまったのかと、つくしの心臓が音を立て鳴る。
 だがしかし、そうではなかった。
 「親父は、俺がいまだに静に未練を残しているんじゃないかと疑っている」
 「未練」 
 「そう。未練があって、何かしらの事態の変化で、また俺が静に戻るんじゃないか、取り返しのつかないスキャンダルに、花沢家と花沢物産を巻き込むんじゃないかと常々恐れていたんだと思う」
 そして、きっと、それは故なき恐れなどではなく、類の父もまた、息子の心を正確に見抜いていたのだろう。
 …未練がないはずがない。
 そして、類もまた、それを否定しはしなかった。
 肯定したわけでもなかったけれど。
 「あんたはさ、子持ちであることをデメリットだと考えてるみたいだけど」
 「何言ってるのよ!私は戒のことを、デメリットだなんてっ!」
 カッと反駁しかけたつくしの眼前へと手のひらを向け、類が静かな眼差しで彼女を制止して、小さく首を横に振る。
 「そういう意味じゃない。あんたが息子をどれだけ愛していて、大切に思ってるか、できることなら、今でも戒を取り戻したい、…自分の手元で育てたいと願っているかなんて、俺だってわかってる」
 そうだ。
 けっして、望んではいけない、望めるべき願いではないとわかっていながら、心の奥底のどこかでいつも燻っている想い。
 類に悟られてしまっていたことに驚いて、つくしは息を飲む。
 自分自身でさえ、意識には上らせないようにと、常に心に蓋をし、押し込めてきたというのに。
 「私は…」
 「いいんだよ」
 「……っ」
 類から視線を反らせて、熱くなりかけた目頭にぐっと力を込め、唇を何度も舐めて心を落ち着かせる。
 そうしないと、今にも彼に取り縋って泣き噎せてしまいそうだったから。
 けれど、つくしはけっしてそうはしたくなかった。
 自分を憐れむことはいかにも楽で、気持ちのいいことではあるけれど、しかし、そうした道を選んだのは自分自身なのだ。
 …私がそうした。
 彼女が選んだ道。
 戒を巻き込んで。
 …だから、泣く資格なんてない。
 泣いてはいけないんだ、と。
 「……じゃあ、そのデメリットって?」
 「俺の父親に対して、あんたが感じた引け目だよ。バツ2子持ち女を、ウチの親が認めるはずがない、そう思ってたんだろ?」
 「それは…そう、だよ」
 世間一般の常識からしても、よほど寛大な親でもなければ許さない結婚だろう。
 「あんたは初婚で、音に聞こえた名家の一人息子。家柄にしても財産にしても、あんた自身の美質からしても、どんな条件のいい女性も選り取りみどりなんだよ?それなのに、って普通の親は思うでしょ」
 自薦他薦を問わず、きっとこれまでも、雨霰と条件のいい縁談はあったはずなのだ。
 「有力な後ろ盾さえない私を、まさかあんたのお父さんが受け入れてくれようだなんて」
 「有力な後ろ盾ならあるだろ」
 「は?」
 何を言い出すのだ。
 類も彼女がごく庶民、…それも現在は道明寺家に寄生している一家の娘であることくらい、知っているはずなのにと、つくしが怪訝に眉根を寄せる。
 「道明寺家だよ」
 「何言ってるの?」
 まさか、司が彼女の後ろ盾になるとでも?
 自分を陥れた元妻を憎んで恨みこそすれ、他の男と再婚しようというのに、尽力するはずもないではないか。
 「あんたは戒の母親だ。今は‘道明寺司の財閥’も…いずれは‘道明寺戒の財閥’になる。牧野、あんたが道明寺財閥唯一の後継者の実母であることは、なにがあっても一生変わることはないんだ」



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