「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影④

愛してる、そばにいて576

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 「それは…どういうことなのでしょう」
 隣で大きく息を吐き出した類を窺えば、仕方なさそうに苦笑しているばかりだ。
 父親の言葉に安堵しているとか、喜んでいるというよりは、まさに苦笑。
 そしてその顔に、類が父親の言葉をすでに予想していたのだと気づかされる。
 …まさか、どうして?
 「先走りすぎだと言ったでしょうに」
 「なんだ、お前、まだグズグズと牧野さんにプロポーズもしていないのか?」 
 怪訝な顔で睨めつける父親へと肩を竦め、そうだとも違うとも類は答えない。
 しかし、その態度にある程度のことを察したのだろう。
 「もちろん息子とあなたのことは、二人に任せるし、この先も私はよけいな口出しをするつもりはありません。それこそ、いい大人のことですから」
 「…ええ」
 どうやら、花沢がつくしを受け入れると言ったことは、彼女の勘違いや聞き間違いではなかったらしい。
 「だが、私にとっても、これの母親にとっても、類は一人息子だ」
 「……………」
 「できれば孫の顔を見たい。…花沢の後継者問題は別にしても」
 意外ではない。
 人間として、親としても当然の望み。
 「会社に関しては、どうしても直系の人間でなければならないということはないでしょう。実際に、かつて私は類に期待するあまり、厳しく接しすぎて心を病ませてしまったことがある」
 高校時代、つくしも類の親友たちから聞いたことある。
 おそらく元々の彼の性格からして、そうした厳格さに馴染めなかったということもあるのだろう。
 一概に親のせいばかりとは言えないが、だが子供時代のそうしたことが影響して、現在の彼をカタチ作り、またそのことをこの父親が悔いているのが見て取れた。
 …類のことが可愛くなかったわけじゃない。
 つくしもまた一人の息子を持つ親として、表には出さない類の父親のそんな後悔と自責が理解できる気がした。
 「そんなこともあって、一時期は息子に花沢物産を継がせることは諦めていたこともあるのだから、いまさらあなたに対して過大な重責を科すつもりはありません」
 無言のまま、優雅にコーヒーを啜る類の横顔からは、そんな苦渋に満ちた父親の心が届いているのかいないのか、まるで窺い知ることができない。
 ただつくしに対して細心の注意は向けているようで、彼女が視線を向ければ何かしらのリアクションで応えてくれていた。
 今もまた、類の反応を窺う彼女へと、『なに?』というように小首を傾げている。
 それには緩く首を振るだけで答えず、つくしは再び彼の父親へと向き直った。
 「しかし、なのですよ。しかし…」
 「…ええ」
 「このままあなたが類との未来を考えてくれているのなら、誰にも後ろ指を指されぬようキチンと籍を入れるべきだし、籍を入れるつもりなら一日も早い方がいい」
 それも理解できる。
 たしかにイイ年齢をした大人のことだ。
 自分で自分の責任を取れる覚悟があれば、本来、誰に何を言われる筋合いもない話だ。
 だが、それでも世間体というものがあり、類のような名家の御曹司ならなおさらのことで、いつまでも籍を入れずにダラダラと同棲していることなど、言語道断見過ごせないと彼の父が言うのも当たり前のこと。
 また、本当に結婚をするにしても、互いに子持ちの再婚同士というのならばともかくとして、類は初婚なのだ、当然、親としては孫を望むだろう。
 なにかも、類の父の言うとおりで、むしろ彼はつくしに対して礼儀正しく寛大だった。
 過分なほど…。
 「あなたの心身症のことは聞いてます。道明寺家との兼ね合いや司君との離婚、それ以前に慣れぬ世界に入って気苦労も多かったのだろう。あなたがストレスを抱え、それが深刻なものになった経緯もとても同情できるし、共感できなくもない」
 …気苦労。
 つくしの病状はあくまでもPTSD(※心的外傷後ストレス障害)による心身症を患っているのであって、気苦労によるストレスと言われても、そういったものが直接の原因ではなかったから、たとえ治療に通ったとしても、一朝一夕そう簡単に改善するものでもなければ快癒するようなものでもない。
 しかし、通り一遍の調査を行ったにすぎない類の父には、そうした彼女の事情や病状について理解できていなくても仕方がないことだったし、その原因についてつくしも話せないのだから、それ以上どう詳しく説明しようもない事柄だった。
 類にしても、父にそうしたことを、話してはいないだろう。
 話せるはずもない。
 …私だってちゃんとした病名とか、どうしたら治るのかなんてわかってるわけじゃないものね。
 つくしはこれまで、まともに病院に通院したこともなければ、正式に病名を診断されたこともなかったのだ。
 だからつくしも、あえてその花沢の勘違いに満ちた気遣いを訂正することはしなかった。
 「一度、気楽な気分で受診されてみてはどうかな?……あるいは妊娠・出産となった場合、そうした治療が妨げになることもあるのだから」




*****




 「ごめん、疲れた?」
 類の父と別れ、類が乗ってきた送迎の車の後部座席にエスコートされ、つくしがシートに収まってすぐのこと。
 会談の間中ずっと握っていてくれた類の手は、車内に戻ってからも離されることはなく、漣のように揺れ動いて晴れない彼女の心を慰撫して、握ったままの手を指先で優しく撫でてくれる。
 「疲れた…というか」
 「ん?」
 「驚いた、かな」
 疲れていないわけではなかったが、やはりそれが一番の彼女の正直な今の気持ちだった。
 類の父が突然、彼女に会いに来たことも驚きなら、話があると連れ出されたレストランでかけられた言葉も意外すぎた。
 それだけではなく、
 「類、私にSPつけてたの?」
 「あ~…」
 困って苦笑した顔が、まったく否定していない。
 「フ―――ッ」
 非難…はしていないが、それでもいかにも不機嫌な顔で大きく溜息をついたつくしを窺うように、類が彼女の顔を覗き込んでくる。
 「…怒った?」
 まるで叱られた子供か、主人におもねる子犬のようなシュンとした顔。
 …その顔は反則でしょ。
 ただでさえ、人並み以上に整って綺麗な造作なのだ。
 それなのにそんな顔をされてしまったら、とてもじゃないが怒るに怒れない。
 叱って悲しい顔などされたりしたら、心が痛む。
 ましてや、それがつくしの為だとわかっているから、なおさらのこと。
 「怒ってないよ」
 「ホント?」
 本心だ。
 ただちょっと、納得したくない気分なだけだ。
 「ホントだよ、これでも以前は、司の…道明寺家の若奥様だったし?」
 わざとらしく嫌味っぽく言ってやれば、もっと困った顔。
 「ごめん、俺が悪かったよ。勘弁して?」
 あっさりと降参して頭を下げてくれる潔さに、それ以上責めることもできなくなってしまう。
 …ホント、ズルいんだから。
 それに、つくしは本当に怒っているわけではなかったのだ。
 ただ、
 「内緒で…っていうのが気に入らなかっただけ。あんたが私にSPをつけてたのも、理解できるもの。私のためなんでしょ?」



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