「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影④

愛してる、そばにいて575

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 結局、チーズやフルーツ、デザートも順調に進んで、フルコースラストのコーヒー、そしてプチフール(※小さな洋菓子)の段階に至っても、類の父からつくしに対して痛烈な言葉が放たれることはなかった。
 おそらく、そこには途中登場した類のせいもあっただろう。
 しかし、不思議なことに、つくしはこの類の父親である大企業の経営者から、なぜか好意的なものを感じていた。
 けっして、司の母・楓が向けてくれなかった眼差しと温かみのある言葉。
 本来ならば意向を伺う必要もないはずだというのに、類の父は一々彼女に気遣いを見せていた。
 息子に相対する態度や立場的なものからしても、けっしてこの花沢が、お人好しやそれに類する人物ではないことはあきらかであるのにも関わらず…だ。
 …どうして?
 誰がどう好意的に見たとしても、つくしと類とではまるで釣り合いは取れていなかったし、花沢家のような富裕の実業家一族ではなく、ごく一般的な家庭であったとしても、バツ2子持ちのワケアリ女など、諸手を挙げて歓迎してくれる家などそうそうないに違いない。
 しかし、類の父親が息子の手前、刺激的な話題を避けているように、つくし的にも、類を前にしてそのものズバリを聞くことができないでいた。
 「……私の大学時代の友人の一人で、心身症の研究やカウセリング関して、定評のある人物がいるのだが」
 何食わぬふう切り出された類の父の言葉に、つくしは俯き加減に飲んでいたコーヒーからハッと顔を上げ、ついで類と顔を見合わせた。
 「お父さん。それは」
 眉根を寄せ、口を挟もうとした類を片手で制し、なおもにこやかな笑みを浮かべたまま、類の父は言葉を継いだ。
 「あなたも察してらっしゃることと思う。不躾な話ではあるが、少々あなたのことについて調べせてもらった」
 「……っ」
 「道明寺家の若夫人時代のことや、その前歴についてはあまりに有名だし、いまさら道明寺家が問題ないと受け入れたものを、掘り起こすことは無意味だから、そこらへんはある程度端折ってはいるがね」
 わかっていたことだ。
 類と関わりそのすぐ近くにいる以上、彼の求婚を受け入れる受け入れないに関わらず、彼の実家が干渉してくることは想定の範囲だったし、当然彼女の身辺調査が行われるのも必然。
 そうしたこともあって、類の求婚に二の足を踏んでいたところもある。
 自身の心の問題や病とはまた別に。
 震える手を膝に置き、ギュッと握り締める。
 その手を横合いから伸びた類の大きな手が、包み込むように握ってくれた。
 …大丈夫だよ、俺がついている。
 彼の目がそう言っている。
 …私も大丈夫だから、と握ってくれている手を逆に握り返し、つくしも小さな笑みで返した。
 どちらにせよ、いつかは向き合わなければならない問題の一つだったのだ。
 類の両親、ひいては花沢家とのことは。
 「俺と牧野の付き合いは、まだあなたや花沢物産がどうのと介入してくる段階ではないと、お伝えしてあったはずです」
 類がつくしの手を握り締めたまま、真っ直ぐに自身の父親を見据え、臆することなく言い切る。
 「俺は十代の子供や親のスネを齧っている学生じゃない。花沢物産の副社長としての職務を疎かにしているわけでもなければ、反社会的あるいは反道徳的言動を行っているわけでもなく、好きな女性と交際している、ただそれだけのことです。イイ年をした息子のことに、いまさら親が干渉するのもたいがいにしてくれませんか?」
 「ああ…誤解しないでくれ」
 類の抗議にはちらりと視線をくれただけで、曖昧に首を傾げ、つくしを安心させるように花沢が一つ頷く。
 「類の言ってることは重々承知しているし、私も息子の恋愛事に一々口を出すようなマネをするつもりはない。だが…」
 口ごもった類の父の言葉の先をつくしも予想する。
 息子に相応しい付き合い、花沢家の家格に相応しい相手であれば、という注釈がつくのだろう、と。
 しかし、類の父の言葉は、
 「ただ、本人も言っているように息子もいいかげんイイ年だ。女性の場合とはまた違うとは言え、私や家内も常々心配していてね。それもあって、過干渉だとは承知でこれまで見合いを斡旋したり、知人に声をかけて、息子と気の合いそうな女性はいないものかと、頼んだりもしていたんだよ」
 ぞんがいソフトな言い回しが不審といえば不審だった。
 彼らの世界では、家の利益のために政略結婚はあたりまえ、恋愛など無用の長物で、まるで一般家庭の親が心配するようなことを、名だたる名家の当主が口にする奇妙を思う。
 「…まあ、女性の影はこれまでも、それなりになくはなかったようだが」
 「否定はしませんよ」
 つくしを息子の恋人だと目算しているにしては、歯に衣着せぬ話だが、類にしても、肩を竦めて堂々と肯定しているのだから、どっちもどっちだ。
 「それが、好きな女性ができたから、もう見合いはしないと断ってきた」
 つくしは再び、自分の手を握ってくれている類へと視線を向けた。
 「見合いはもうしないって言ったよね?」
 「ええ」
 「見合いをしないならしないなりに、恋人がいるなら紹介しろと言っても、まだ時期じゃないの一点張りだ」
 「……………」
 それは類のつくしへ気遣いだっただろう。
 交際している自覚さえ希薄で、結婚を申し込まれても曖昧な返事を返すばかり。
 何をするにも二の足を踏んでいるのに、そこへ両親を紹介すると言われても、困惑するばかりで、むしろなおのことつくしは怖気付いてしまっていたかもしれなかった。
 「息子の判断を信用しているし、尊重もしている。しかし、親としてもそうだが、我が家の事情や花沢物産という会社の経営者として、おいそれと下手な女性に入れ込まれては…と私が老婆心を発揮するのもやむ得なかったのだと、大目に見ていただければありがたいのだが」
 阿るように尋ねてくる類の父に、つくしも反発することなく受け入れる。
 「わかります」
 「あなたのことを知った時の私の心情としては、…率直に言わせてもらって、とても快哉を叫んだとは言い難い」
 「…それも理解できます」
 「あなたがすでに二回も結婚していて、子供がいることや、我々とはいわゆる出身階級が違うことを別にしても、その一度目の結婚相手というのが、あの司君であるということに困惑したよ」
 「……………」
 それはおそらく、司が類の親友だからというわけではないだろう。
 大人になった彼らは互いにどれだけ親しかろうと、ただの一個人などではなく、巨大な企業を背負うジュニアだった。
 いや、すでにもうジュニアの域を脱出し、大企業を担う次代のリーダーとして、自身の背負う会社と大勢の従業員たちの生活に責任と義務を持つ立場なのだ。
 司は道明寺ホールディングスの‘道明寺司’であり、類は花沢物産の‘花沢類’だった。
 「あなたと司君の離婚に関して当時は、社交界でもさまざまな憶測を含んで、いろいろ取り沙汰されていたよ、ご存知かな?」
 「……いえ」
 もはや関係ない世界のことだ。
 何を言われようと、どう他人に後ろ指さされようと構わないと、当時の自分は、物見高く騒ぎ立てていた世間からあえて目を背け、耳を塞いでいた。
 ―――戒に迷惑さえかからなかれば、とそれだけが心配だった。
 「だが…結果的に、私はあなたで良かったと思っている」
 「え?」
 「牧野つくしさん、私は―――花沢は、あなたが我が家の一員に加わると言うのなら、反対しないし、…むしろ歓迎することでしょう」



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