「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影④

愛してる、そばにいて573

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 くくくと笑い続ける類の父親を、つくしはただ見ていた。
 …この人もやっぱり笑い上戸なんだ。
 目尻にできる笑いジワが類よりも濃い。
 たしか高校生の頃、とても厳しい父親で類をひどく内向的にしてしまったという話を総二郎だが、あきらから聞いた覚えがあったから、ずいぶん意外にも思う。
 けれど、経営者として、また時代の後継者を育成するべき者としての立場もあったに違いない。
 ツラツラとそんなことを考えながら、観察しているつくしの視線に花沢も気がついたのだろう。
 スーッと笑いを収め、
 「すまなかったね、ずいぶん失礼な物言いを言してしまった」
 「…いえ」
 「気分直しと言ってはなんだが、食前酒を飲んでみてはどうかね?さっきから一口も口にしていないでしょう?」
 「あ、いえ、けっこうです」
 元々酒を飲むつもりはなかった。
 ただでさえ、アルコールに弱いのだ。
 食前酒とはいえ、悪酔いして醜態を晒すのわけにもいかない。
 気を張る相手の手前、勝手に注文してゆく相手を制止してまで、水を頼むわけにもいかなかっただけのことだ。
 「まあ、そう言わず。ここのワインは、私の父のシャトーで作ったものを入れているんだよ。たいがいが道楽のようなものだが、いくつかはそれなりに銘柄を確立して名のあるレストランでも仕入れられていてね。ぜひ、息子の妻になる女性にも、味わってもらいたいと思っているんですよ」
 「………っ」
 驚きに目を見張る彼女をよそに、花沢がグラスを手に取り、香りを楽しんでから一口口に含む。
 「うん、美味い!……手前味噌だがね」
 嬉しそうな顔がまるで無邪気な少年のようだ。
 そんな顔をしていると、ますます類に似ている気がした。
 もっとも類の方はその父親と違って、食べ物や飲み物で、そんなふうに嬉しそうな顔をすることはまずなかったけれど。
 類の父に倣って、つくしもグラスを手に取り、一口口に含んだ。
 とたん、甘く柔らかな香りがふわっと鼻に香って、まろやかで芳醇な味わいが口中に広がった。
 「美味しいぃ~」
 が…、
 …うは、後からむわってきた、むわっと。これってシェリー酒だよね。
 凄い酒好きというほどではないが、つくしも一時期はスーパーセレブの妻だった立場上、それなりにアルコール類にも詳しく、飲んでみれば酒の種類や銘柄、産地くらいは大まかにあてられる。
 「あまり酒には強くないようだね?」
 「…嫌いではないんですけど」
 「カクテルかシャンパーニュにするかね?それともミネラルウォーターの方がいいかな?」
 花沢の方から申し出てくれて助かった。
 「ミネラルウォーターでお願いします」
 正直すぎたのか苦笑されて、慌てて取り繕う。
 「あ、いえ!その、えっと、とても美味しいお酒だったんですが、私には少々アルコール分が強すぎるようですので」
 困った顔の彼女に、類の父も鷹揚に頷いてくれる。
 「かまいませんよ」
 こだわることなく、さりげない仕草でこちらへと注意を向けているギャルソンへと合図して、花沢がつくしのためのミネラルウォーターを注文してくれた。
 「どうやら、もう一人前料理を注文しなければならないようだ」
 「は?」
 空気が変わった気がした。
 類の父と彼女が連れ立って、レストランに入店した時にも、彼らに気がついた人々がざわめいていたが、その時とはあきらかに違う華やいだ気配。
 つくしが背後を振り向けば、案の定、店の入口に立つ類の姿がある。
 「類」
 「どうやら息子が、あなたにつけさせている人間が上手くここを探し当てて、アレに報告したようだね。まいたつもりだったんだが、中々優秀な人材だったようだ」
 「は?」
 支配人と話していた類も、どうやらつくしたちに気がついていたらしい。
 かなり遠目なのに、彼が彼女を認め、ホッと安堵の息を小さくついたのが見えた気がした。
 案内係の支配人をほとんど置いてけぼりにする勢いで、こちらへと歩み寄ってくる。
 ほどなくして、通り過ぎる客席の人々の纏わりつく視線も無視した類が、彼らの席に到着した。
 「牧野。…良かった」
 「類」
 わずかに腰を浮かせたつくしへと微笑んで、しかし、類はそんな彼女へと向けた温かな眼差しとは、180度真逆な冷たい視線を父へと向ける。
 「久しぶりだな」
 「どういうことです?俺に無断で、彼女をこんなところへ連れ出して、誘拐とは穏やかじゃありませんね?」
 「ゆ、誘拐!?」
 驚いているのはつくしだけで、むしろ父子二人は、怜悧で冷めた眼差しを交わし合っていた。
 「誘拐とは人聞きが悪い。私がお前の大切な人に何をするというのかね?私が彼女を何処ぞに連れ去って、隠してしてしまうとでも?」
 「何度電話をしても無視をされれば、そうととられても仕方がないことでしょう。もちろんその場合には、俺も黙ってはいませんが」
 「まったく。…穏やかじゃないのは、どうやらお前の方のようだ。少しは冷静になったらどうだ?」
 「冷静ではないように見えますか?」
 「いつになく好戦的ではあるように見えるがな。ふ~。とりあえず類も来たことだし、個室の方へ移動しましょうか?牧野さん」
 「え?あ……はあ」
 一見提案しているかのような柔らかな物言いだが、やはりそこらへんは息子の類とよく似ていて、彼が口に出した時にはすでに決定事項なのだろう。
 …まあ、社長さんだしね。
 つくしが返事を返す前には既に、支配人に目で命じてしまっている。
 「俺たちは」
 反論しかけた類を花沢が手で制止して、奇妙な成り行きに困惑しているつくしへと頷きかけてくる。
 「もう少し付き合っていただけませんか?まだ、食事もしていない」
 そのとおりだ。
 食事に誘われてここにきた。
 まだ食前酒を口にしたのみで、オードブルさえも目にしていないのだ。
 それに…、
 「私は彼女に会いに来たのだよ、類、お前にではなく。お前の妻となる人が、どんな人なのか知りたかったからね」



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