「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影④

愛してる、そばにいて570

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 「悪いけど…」 
 「なんだよ?なんか予定でもあるのか?それなら俺がどこへでも送って行くし?」
 総二郎を警戒しているわけではなかった。
 また何を言われるにしろ、いまさらで、特に忌避するようなことではない。
 しかし、単純に、
 …パーティションを下ろしてもらえれば、大丈夫だとは思うけど。
 だが、総二郎はわざわざ『話がある』と前置きしている。
 人目を気にせずにいられるような話ではあるまい。
 場合に寄っては耳目を憚る話だろう。
 プライバシーに配慮しないでは、いくら同席しているのが西門家の運転手とはいえ、総二郎にしても話しにくいに違いなかった。
 「まったく、類といいお前といい」
 「類?」
 ムッと顰めた総二郎の顔をキョトンと見つめ、つくしが首を傾げる。
 「まさか、お前まで類みたいに、俺が女なら見境なく襲いかかる男だとでも思ってるってか?」
 「え~」
 それこそ思わぬことだ。
 たしかに、総二郎のことは、無類の女好きだと思っているし、そういう意味では警戒しないでもないが、その気がない女に無理強いするほど困っていないことは彼女もわかっている。
 …第一、私相手にそんな気にもならないだろうし。
 男性が怖くて忌避することと、そうした冷静な判断とではまるで違うものだ。
 「類が何か言ったの?」
 「…自分以外の男は、マンションには全面立ち入り禁止だとよ」
 「自分以外の男…って」
 当然、その言葉の真意がわかっているのはつくしだけだろう。
 優美な美貌に似合わぬ粗野な仕草で、ガシガシと頭を掻いて憤慨している総二郎を、何とも言えない顔で見やる。
 「特に俺みたいな、女に見境がない男はっつー注釈付きでよ。他人の、ましてやダチの女に、手を出すかっつーのッ。どんだけ嫉妬深けぇんだよ、類のヤツ」
 …類。
 「マジで話あんだよ。別に類が同席でも全然構わねぇけどよ。あいつ、面倒臭がって、飲みにも出てこねぇし、第一、一度お前ともじっくり話しておきたかったしな。それともあらためて、俺と飲みにでも行くか?メシでもいいぜ?」
 おそらくというか間違いなく、総二郎が自分に話したいというのなら、司のことに違いあるまい。
 関係ない…と突っぱねるには、もうかつてのように、ただ司を恨んでいた過去とは心情が違う。
 そしてなによりも、類とこの先もずっと一緒に生きてゆくつもりならば、彼の親友である総二郎や―――司と完全に縁を切ることなど、どちらにせよ、できないことなのだ。
 「西門さんが信用できないわけじゃないよ。私も、…類も」
 「そうかぁ?」
 疑わしげな総二郎の視線からわずかに目を外らし、つくしは小さく息を吐いて、それから顔を上げた。
 「たぶん、類は私のトラウマを慮ってくれたんだと思う」
 「トラウマ?」
 怪訝に眉根を寄せる総二郎へと、曖昧な笑みを浮かべ大きく頷く。
 「そう。…ちょっといろいろあって、私、男の人と二人っきりっていう状態が苦手なの」
 「苦手…って」
 広い地下駐車場を見回し、誰もいないのを確認して、総二郎が再びつくしへと尋ねるように顎をしゃくってくる。
 「実は、今もちょっと…ね。ここは広さがあるし、それなりに人の出入りもあるからまだいいんだけど、密室だったりすると、ひどい時には過呼吸の発作を起こすこともあるの」
 「過呼吸って、お前。それ、ちょっとどころか、絶対普通じゃねぇだろ」
 さすがに驚いたらしい。
 「まあ。とにかくそういうことなの。たぶん類は、そこら辺のことで私を気遣って、男の人をマンションに入れないでくれているんだと思う」
 男どころか、類はほとんど個人的に人付き合いをしない男だ。
 必然、男=幼馴染みたちを寄せ付けない以上、他に訪問してくる人間もいるはずもない。
 …どおりで誰も訪ねてこないはずよね。
 第一秘書の遠藤は別だが、彼の場合、業務上の送迎だけなので、そこに類が同席しないことはまずないし、そもそも室内にまでは立ち入らせない。
 もちろん社会生活を送る上で、まったく男性と二人っきりにならずに済むということはありえないことなのだが、二人っきり=即発作とまでいかず、その時々で波があった。
 また、現在はある程度耐えられるからこそ、カウンセラーなりの、病院やそれに類する施設への通院を見送っていられるのだ。
 そういうこともあり、つくしは新しい就職先にしても、これまで小さな病院などではなく、ある程度の規模があるところを選択していた。
 「どういう事情があって、というのはあえて聞くつもりはねぇけど、なるほどな」
 総二郎なりに思い当たることがあるのか、一瞬浮かべた痛ましげな…そして、同時にどこか疚しげな彼の表情につくしも気がつかされる。
 総二郎はあきらに比べれば一見ドライに見えるが、そうでもないことは、長年の浅く細くの付き合いの中で彼女も察していた。
 しかし、彼に習って、つくしもあえて気がつかないフリをする。
 互いに掘り下げても、気不味い思いをするだけのことだし、そもそもつくしにしたら、いくら司の親友が相手だとは言え、今になって司の過去の罪を聞かせたいとはとても思えなかったし、第一彼女自身もわざわざ口にしたいような事柄ではなかった。
 「私の家なわけじゃないから、私からは西門さんに遊びに来て、とかそういうことは言えないんだけど、今度類に話して置くわね」
 「大丈夫なのかよ?」
 「まあ、そうじゃなきゃ、まともな社会人生活をこれまで送れてこれなかったし、多少はね」
 類が同席してくれていれば大丈夫だろう。
 もちろん、友人が訪ねてくるのだ。
 長時間の滞在になれば、類が必ずしもべったりつくしに張り付いていられるわけでもなく、時には離席したり、意図せずして総二郎と二人っきりにされてしまうこともあるだろう。
 しかし、彼女自身、そう言う意味でも一年前とは事情が違っていた。
 そして、その一つの変化が、自身のトラウマを総二郎に…というか、他者に話すことができたこと。
 これまでどうしても、必要な場面以外、ちらりとも自身の病について、他人に口にすることなどできなかったのに。
 それだけの心理抵抗があったのだ。
 病の存在を話したことくらいで、自身の経験の全てを知られてしまうというわけでもあるまいに、いつ誰に自分の過去が暴かれるか、レイプされたことを知られてしまうのではないか、そんなことが怖かったのかもしれない。
 たとえ、後に愛し愛される存在となった司によってなされたことであっても同様で、愛していても愛されていても、それだけで‘強姦’されたとうショックを消し去ることなど、とてもできはしない。
 心と体に加えられた傷は、本人や周囲の努力だけではどうしようもないものなのだ。



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