「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影④

愛してる、そばにいて564

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 「え、これ類のところで販売してるワインなの?」
 「と、いうか、ワイナリー自体うちの持ち物だし」
 「ああ、そうか、そう言ってたっけ」
 美味しい食事に、美味しいお酒。
 目の前には目にも美味しい美男というこの上なく極上の贅沢に浸って、ほぉっと溜息。
 …お昼に食べた懐石も美味しかったけど。
 わざわざ外食に出なくても、自身の別荘でも一流の料理を堪能できる環境にいる富豪の御曹司、それが類なのだ。
 …よくもまあ、日頃、私の作る庶民料理なんかで満足してくれているよね。
 つくしも専門家に習っていた時期もあり、料理には自信がある。
 だがそれはあくまでも素人にしては、という程度のことで、さすがに専門の訓練を受け、腕を奮い続けているシェフと比肩するべくもないのは当然のこと。
 ほとんど家人が訪れることがない別荘だということもあって、さすがに道明寺邸のようには専属のシェフを常駐させているわけではなく、ワイナリー付属のレストランのシェフの一人に出張を頼んだらしいのだが。
 「は~、ホント、プロってすごいわよね。どうやったらこんなに上手く臭みだけを除いて、旨みを引き出せるんだろう」
 「俺は牧野が作った料理の方が好きだけどね」
 「またまたまた」
 お世辞を言う男ではないが、それでも真顔でシラッとそんなことを言われてしまうと、どう反応すればいいのか困ってしまう。
 「まあ、レパートリー広げたいんだったら、ついでになんか習っていけば?レシピ頼んどく?」
 「え?いいの?そういうのって秘伝だったりするから、迷惑じゃない?」
 「……かも?」
 ガクッ。
 「いいです、無理強いしなくても。旦那様がわたくしめの拙い料理でも構わないと仰ってくださるならですが…まあ、たまにネット検索すれば、それなりにレパートリーは広げられるし」
 今の世の中、ちょっとキーワードを入れれば、プロの料理とまではいかないが、ほとんど料理研究家の域のカリスマ主婦の神レシピが無料で手に入るのだ。
 ちょっとおどけてそんなことを言うつくしに、類がわずかに首を傾げる。
 「旦那様…って、それ、俺のプロポーズを受けてくれるってこと?」
 「は…?」
 あまりに思いもよらぬ返答に、ポカンとしかけて、すぐに我に帰る。
 「その旦那様じゃないわよ!ダーリンじゃなくって、ご主人様!マイロードとかサーの方でしょ!?」
 ついムキになりかけて、悪戯な光を帯びた目の楽しげな類の顔に出くわして、やっとからかわれたのだと気が付いた。
 「……ねぇ、なんで‘結婚’にこだわるの?」
 「ん?」
 切り分けた肉の最後の一欠片を口に放り込んで咀嚼し、ゴクンと飲み込む。
 少し脂っこくなってしまった後口に、30年ものの一品だという赤ワインを流し込んで、サッパリとさせる。
 「美味しい」
 「良かったね」
 「うん」
 この穏やかな時間が、ずっと続いてくれればいい。
 つくしだってそう思う。
 けれどーーー。
 求婚してくれているのが普通の男性だったら、‘結婚’することで、その穏やかな日々をさらに強固に維持する縁にすることができるのだろう。
 しかし、類が相手ではまるで事情が異なってしまう。
 「私はもうすでに二度も結婚してるし、類も知っていると思うけど、類のおウチとでは釣り合う家の人間じゃないわ。今こうして、二人でいることを大切にするだけじゃ、どうしてダメなの?」
 おそらく結婚を前提にしてしまうことこそ、今の関係を変えてしまうことになるのではないか。
 …許されるはずがない。
 道明寺楓が彼女を憎んだように、類の両親も彼女を憎んで、類自身をも窮地へと追いやることになってしまうのではないか。
 ―――司と同じように。
 手に握っていたナイフとフォークを置いて、類が口元をナプキンで拭う。
 その仕草さえ、付け焼刃のつくしとはまるで違って、優雅で洗練され、いかにも彼女とは生まれも育ちもまったく違う…本来なら生きる世界さえも違う人間なのだと目の当たりにさせる。
 「俺も、‘結婚’というカタチがどうしても必要なものなかどうかは、実際のところよくわからない」
 「……………」
 「紙切れ一枚だけのことだと思わなくもないよ。でも、その紙切れ一枚やカタチが、時に大切な誰かとの間を隔てたり、強固にしてくれるものなんだってことを、俺もいろいろ経験したからさ」
 「類」
 それはおそらく静とのことを言っているのだと、つくしにもわかった。
 「あんたがこのまま、誰とも波風を立てずに、平和に生きていきたいっていう気持ちもわかるよ、たぶんね。わかるし、俺もできることならそうしてやりたいとも思う。でも、それじゃあ、永遠は手に入らない」
 「永遠?」
 あまりにつくしにとっては、綺羅星の如く眩しく…儚く、そしてなんて遠いものなのか。
 「そう、あんたと…牧野と、ずっとこの先も一緒にいたいんだ。だけど、このままじゃいられない。ただ漫然と毎日を消費するだけじゃ、ダメなんだ。手に入らない。温もりも優しさも、愛しさも、そして―――あんたも。…もう俺たちはガキじゃないからさ」
 ガキじゃないから。
 「たぶん、あんたが気にしてるものの一つには、俺の実家のことがあるよね?」
 ズバリと言い当てられる。
 「あんたは一度、司の妻になって、俺たちの世界や、そこにある不条理とか理不尽さを見てきている。だから心配してるんだろうし、……恐れてもいる」
 「……そうだね」
 認めないわけにはいかなかった。
 かつて、赤札にも立ち向かった、無鉄砲な少女はもうどこにもいないのだ。
 「俺が守るよ」
 「類」
 「ガキじゃないって言ったろ?…あんたには情けないところばかり見せてるけど、こう見えてもう何年も、それなりに海千山千の財界人たちの中で立ち回って来てる。花沢物産内でも、お飾りの役職なんかじゃなくって、ちゃんと実力で、それなりの地位や立場を築いてきたつもりだよ?」
 少年の日の司とは違う。
 粋がって、父親の庇護の下で、勘違いをしていた蛙の大将ではもうないのだと、そう掻き口説く類をつくしは見つめた。
 今までとはどこか違うーーー新たなる一面を垣間見せる一人の男性として。
 「だから、俺の家のことは俺に任せて、家じゃなく俺自身を見て欲しい。案外今の俺はしぶといし、図太い男だよ。なんせ未開地のドサ回りなんかも経験したくらいだしね」



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