「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影④

愛してる、そばにいて563

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 「類…」 
 「そろそろ日も完全に落ちるな。真っ暗にならないうちに帰ろうか」
 パンパンとスラックスの埃を叩いて、行こうと差し伸べてくれる類の手に手を乗せ、つくしも引き上げてもらう。
 「あ、上着!」
 借りてしまっていた上着を脱ごうと手をかけたところに、肩を抱かれ押し止められる。
 「……っ」
 「そのまま着てな。行こ」
 肩を抱かれたまま車へと誘導され、今度は助手席へと誘われた。
 「この辺は俺の方がまだしも知ってるから、ここからは俺が運転するよ」
 「…でも」
 「安全運転を心がけます」
 ドアに手をかけた類に、シートに座れと待たれてしまって、つくしも仕方なく従う。
 「今度は三度目の正直」
 「は?」
 「次で三回目のプロポーズだからさ。うんって言ってもらえるように頑張るよ」
 「三回目って」
 怪訝に類を見上げるつくしの頭をクシャりと撫でて、類が運転席へと回り込んでシートに座る。
 …やっぱり最初のヤツはジョークだったんだ。
 つくしの記憶では、まだ二人が同居し始めてそれほど経たない頃、冗談交じりに『俺と結婚するつもりない?』と言われたことがあったはずだ。
 その時の理由が理由だったから、つくしにしてもまるっきり本気にしていたわけではなかったが、それでもいざ忘れられているとなると、それはそれでなんとなく面白くない気もする。
 それに…、
 …三回目のプロポーズにも私が応えられなかったら、この人はどうするつもりなんだろう?
 諦めるという意味なのだろうか。
 そんなことをツラツラと考えて、窓ガラス越しの類の横顔をジッと見つめる。
 「どうしたの?疲れた?」
 「ん…そ、かな」
 「いいよ、別荘まで寝てて。そんなに距離ないけど、着いたら起こしてあげるから、一眠したら?」
 むしろ疲れているのは類の方ではないだろう。
 つくしも今は病院勤めで前日も仕事だったし、今日はけっこうな長距離移動をこなしている。
 …すいぶん、はしゃいじゃったしねぇ。
 彼女にしてもかなりの疲労度だ。
 しかし、土日祝日もほとんど関係なしに、毎日激務に立ち向かっている彼には遠く及ばないに違いない。
 だが、プロポーズをされたそのすぐ後で、何事もなかったかのように、くだらない雑談や四方山話をする気にはとてもなれなかったからーーー。
 「じゃあ、申し訳ないけど、少しだけ寝させてもらおうかな」
 「うん」
 ドアに寄りかかって、そっと目を瞑る。
 「……憶えてるよ、本当に本当の最初のプロポーズも。でも、あれは真剣じゃなかったから、験を担ぎたいんだ。ただそれだけ。もちろん…また断られても、今度は101回目を目指すけどね」
 彼女が目を瞑って、そう間を置かずに類がぼそりと呟いた。



*****




 「101回目って…」
 サクランボ狩りから帰宅して、夕食前のひと時。
 埃っぽいのが気になるのと眠気覚ましを兼ねて、類はシャワーへ。
 つくしの方は別荘の料理人に夕食の準備を任せ、手持ち無沙汰にテレビ鑑賞で時間を潰していた。
 珍しいくらいに安全運転に従事していた類だったが、さすがに疲れたらしく、夕食前だというのにかなり眠りたがっていた。
 しかし、時間的にもまだ早く、夕食時までもうあまり間もなかったことから、むずかる類の尻を叩いて睡眠よりも食事を優先させることにした。
 本人的には一食や二食抜いても寝たかったのだろうが、どうせ翌日も別荘を出るギリギリまで寝こけたあげく、朝食をスキップすることは目に見えている。
 …まったく、子供かっつーの。
 類の場合は、昼食も大して量を食べていたわけでもなく、サクラノボもけっきょくほとんどつくしが一人で食べて、ホンの数本口にしていただけのはずだ。
 …それなのに二食も食事を抜くなんて、いくらなんでも不健康すぎるわよ。よくあのデカい体を維持できてるもんだわ。
 そんなことを暇潰しがてらツラツラと考えていたら、
類が先ほど言っていた『101回目を目指す』の意味に、つくしはふと気がついた。
 …もしかして。
 彼が言っていたのは、かなり古いテレビドラマのタイトルからの連想だったのではないだろうか。
 つくしもさすがに古すぎてしかとは憶えてはいないが、たしか何度もプロポーズを断られた男性が、101回目のプロポーズで見事念願を果たすといった内容だったはずだ。
 それにしても、
 …どんだけテレビっ子なのよ。
あの花沢類がと思えば意外でもあり、普段の類を知るつくしにしてみればいかにも過ぎて呆れるやら。
 けれど、類という男はそんな男だった。
 近寄りがたい美貌と、不用意に触れる者を鋭利に斬りつける刃のような冷たさを持つその内側で、そんな子供じみた純粋さと、繊細で密やかな気遣いを持つアンバランスな魅力を持つ男。
 高校生の頃のつくしは、常に彼が見せてくれるだけの彼の一面をしか見ることを許されていなかったけれど、それでもどこかで感じていたように思う。
 彼の優しさや柔らかな心を。
 …やっぱり私には、宇宙人に感じる部分の方が多いけどね。
 「…ん?何見てるの?」
 風呂から出てきた類が、髪をワシャワシャとバスタオルで拭きながら、つくしが座っているソファの背もたれに肘を置いて覗き込んでくる。
 「わっ!水、水っ、水垂れてる!」
 ポタポタと落ちてくる水滴に閉口して、呑気な男の首根っこを押さえ、つくしが首回りのバスタオルを取り上げ、やや手荒に拭きまくる。
 「痛いって、牧野、優しくやって?」
 「優しくやってと頼む前に、自分でちゃんと拭いて来い!」
 「え~」
 文句を言う類の髪を一通り拭いて、バスタオルをつっ返す。
 彼に雇われている時には許容して、黙って後始末をしていたつくしだったが、雇用関係を解消して対等の立場になってからは、言いたいことは言っていた。
 …躾しなおすつもりまではないんだけどさ。
 いざ類を躾ようと思ったら、おそらく司を躾けた時よりもさらに難航するのではなかろうか。
 「ドライヤーもやってくれる?」
 「は?やるわけないでしょ。子供じゃないんだから、自分でやれ、甘えるな」
 「やっぱダメか」
 ボヤいてるわりには、本人も言っているとおり言ってみただけのようで、あっさりと納得して、ミニバーへと向かう。
 「牧野もなんか飲む?」
 「あ~、いいや。もう食事だし…っていうか、夕飯の支度もう出来てるんだから、いつでも食堂に来てもらって構わないって、厨房担当のメイドさんから連絡あったけど?」
 「ん~、めんどいな。今日はこっちに運ばせない?」
 「え~、…まあ、いいけど」
 迷惑なのではないかと思案して、だがどちらにせよ、食堂で食べることにしても給仕係がつくことになるのだから、面倒をかけるのは同じかと思い切る。
 「まだ、時間も早いし、食事がてら少しなんか飲もうか?」
 「お酒ってこと?」
 「うん。せっかくワイナリーのすぐそばにある別荘に来てるんだからね。地下にある貯蔵庫のいいワインだすよ」



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