「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影④

愛してる、そばにいて562

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 「静とのことはとっくに終わってる…違うな、俺との未来を考えてはいなかったあいつとの関係は、最初から始まってもいなかった」
 そして、つくしと司との関係もまた同じことだ。
 砂の上に築いた城は、どんなに堅固に鎧い囲ったとしても、所詮砂上の楼閣。
 繕っても繕っても、いつかは水に洗い流されてしまう。
 そして、その痕跡は、もう跡形もない。
 …消えてしまった。
 この世のどこにもない。
 「でも……」
 「ん?」
 「結婚って…そんな、まだ私たち…」
 類の言葉に心を動かされた。
 彼に惹かれている自覚もある。
 けれど、
 「何が問題なの?」
 問題なら数限りなくあるはずだ。
 むしろ問題ではないものを数える方が少ないくらいで、二人の間に横たわっているものはどれもこれも見過ごし難く、それを克服しようとするのは困難を極めるに違いない。
 その最たるものの一つが、つくしの男性接触嫌悪症だった。
 …それに、この人も。
 これまで類とは一年近く同衾してきた。
 年頃の男女ならあって当然の衝動の存在を、完全に無視して。
 いや、違った。
 おそらくそれは類だけだ。
 厚い胸板に、逞しい腕に、男らしく美しい美貌に、ドキドキと胸が高鳴ったことはなかったか。 
 男の欲望や匂いとは無縁の彼の、淡白さに安堵する気持ちとは真逆に、女として求められない失望や寂寥を、彼女が感じたことがなかったとはとても言えやしない。
 しかし、それらをズバリと聞く勇気と上手い言葉が見つからず、なんとか説明しようとするが、どうしてもシドロモドロになってしまう。
 「その…問題っていうか、ええと。結婚とかなると、その…いろいろ?あるし」
 「いろいろ?」
 「そ、そう、いろいろ。ほら、結婚ってさ、ただ一緒に、その…添い寝とか?するだけじゃなくって…え~とぉ」
 「…ふぅん?」
 落ち着きなく視線を彷徨わせ、必死で言葉を探して口を開き、カタコトを口にしては、再び閉じることを何度も繰り返している支離滅裂な彼女をジッと見て、類が不思議そうに首を傾げている。
 だが、それでも彼女が言いたいことの核心は伝わっていたらしい。
 「それってもしかして、セックスのことを言ってる?」
 「ええっ!?」 
 あけすけな類の指摘に思わず飛び上がる。
 「違う?」
 だがしかし、あらためて念を押されて、小娘でもあるまいに、そういつまでも照れてあれこれ言うのも潔くはないと、一つ頷いた。
 「そ、そう。そのこと…かな。その、私たちずっと一緒に眠ったりしてきたけど、そういうの全然なかったじゃない?」
 類の彼女に寄せてくれる真剣な気持ちは伝わっている。
 彼女と真面目に向き合いたい。
 それが結婚だというのなら、それが彼なりのつくしと作っていこうとしている人生のカタチであり、愛なのだと理解できる。
 けれど、そうした理解とはまた別のところで、結婚となればただ手を繋ぎ、気の合う友達のようにデートをしていればというわけではないだろう。
 彼は‘家庭’と言ったのだ。
 …類は私に対して、本当にそういう感情を抱いてくれているの?
 類のいう好きは果たして恋愛なのだろうか。
 もしかしたら、それは人間愛や友情というものであって、一人の女としてのつくしを求めているのではなく、つくしが隼斗を求めたようなものなのではないか。
 つくしにしてもまた、積極的にパートナーを求めてきてはいなかったが、だからと言って恋ではなく、人とのしての愛だけでまた再び家庭を築くには大いに迷いがある。
 色恋を求めずに、気の合う男性と家庭を築くことはたしかに楽だ。
 そうして結婚した隼斗との関係が破綻したから言って、次もまた同じ結果になるとは限らない。
 隼斗と類では、まったく個性の違う男性なのだし、彼女の彼らへと抱く感情はまるで異なる。
 …どうせこの先も、マトモに恋愛なんてできないかもしれない。
 セックスを忌避している以上、恋愛を語る以前のことだ。
 それでももし類を受け入れてしまえば、いずれ彼のすべてが欲しくなる自分をつくしはわかっていた。
 人は心と体の両方で愛を感じる生き物だから。
 そうして得る幸せをつくしも知っていたからこそ。
 「セックスのありなしがそんなに大事なこと?」
 「え?」
 よもや類の方からそんなことを言われるとは思ってもいなくて、戸惑ってしまう。
 「もちろん、俺もまだ若い健康な男だから、そういう衝動や欲望があることは否定しない」
 …否定しないんだ。
 それならば、自分に対しては?
 これまで求められたことも、その気配を感じたことすらないのだ。
 類が総二郎のような男性だとは思わない。
 以前はともかくとして、つくしと同居してこの一年、類に彼女の他に女性の影はなかった。
 行きずりの女性をベッドに引き入れるどころか、彼の生活はどこまでも品行方正で、仕事とマンションを往復する以外は、彼女と休日を過ごしてきた。
 体の関係を除けば、優紀が言うように、彼とのそれは恋人や夫婦との関係とほとんど代わりがない。
 衝動や欲望の存在を否定しないというのなら、それらをつくしとの関係に付帯させずして、彼はいったいどうしようと考えているのか。
 「ふがっ、ん!」
 つい物思いに耽ってしまい、俯いてしまっていたつくしの鼻を、類が突然に摘んだ。
 「ちょっと!?……っ!?」
 チュッ。
 羽のような…淡い接触。
 まるでウブな中高生の少年少女が交わすようなバードキスが、顔を上げた彼女の唇の上に降ってきて、つくしがポカンと口を開けたまま大きく目を見開いた。
 唇に、再び、チュッ。
 チュッ、チュッと可愛らしい音を立てて、二度、三度と繰り返し可愛らしいキスが落とされる。
 「ぷっ……鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔」
 そんな彼の悪戯っぽい言葉に、我に返るよりも先に、カッと頭に血が上って顔が赤らんだ。
 「る、る、る、る、類っ!?」
 片手で唇を押さえ、つくしが上擦った声を上げる。
 「な、なに!?なになになに、今の?!」
 「なにって、キス」
 「そう、キス。キスぅ!?」
 「だって、体の関係がないのが不満なんでしょ?」
 「ふ、不満っ!?」
 絶叫だ。
 しかし、当の類の方は動揺どころか、まったく彼女の動揺を意に介さず、あくまでもいつもどおりのマイペース。
 しかし、さすがにつくしのテンパリようには苦笑して、
 「10代の子じゃあるまいし、キスくらいでそこまで動揺しなくてもいいんじゃないの?」
 …そ、そりゃそうだけどさ。
 自分でもわかってる。
 今時中高生だってもっと、濃厚なキスやそれ以上のこともしているだろう。
 なによりも過去に二度も結婚して、甘いも酢いも経験した自分がここまで動揺するのも、類が言うようにおかしなことだという自覚もあった。
 けれど、なのだ。
 …いままで、そんな気配なんて欠片も匂わせなかったじゃないのよっ!?
 いや、手を繋いだり、頭や頬にキスくらいはされたことがあったか。
 ーーーしまいには添い寝までしていて、たしかにいまさらではある。
 「その様子なら、大丈夫そうだね」
 「……………」
 ソロリソロリと顔を上げ、類を見やる。
 「驚いてテンパってるけど、もう怖がってない」 
 「え?」
 「あんたってさ、自分じゃあまり自覚がなかったみたいだけど、俺が顔を近づけると赤くもなるよね?でも、それだけじゃなく、目をぎゅうっと閉じて、いつも体がガチガチになってるよ。添い寝もさ、最初の頃はずっとそんな感じで、いつ俺があんたに襲いかかるか、ひどいことするのかって窺って、……俺が人畜無害だとわかるまで凄く怖がってた。寝てる時には擦り寄ってくるのに、起きてる時は傷ついて臆病になってる小動物みたいだったかな」



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