「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影③

愛してる、そばにいて560

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 これまでの本気にしかねるプロポーズとは、何処か違うセリフ。
 結婚しないかと、冗談交じりだったり、自信なげに彼女にすべてを委ねてしまうのではなくて、『しよ?』と明確に彼自身の意思を含んだ言葉に、つくしは息を呑んだ。
 大きな手で顔反面を隠すように前髪をかきあげ、上目遣いつくしを伺う類の顔は、意外なことに照れて真っ赤だった。
 「結婚?」
 「うん。NYでも、俺、言ったよね?また、申し込むって」
 言ってただろうか。
 『はい』とも『いいえ』とも答える前に、ただ宣言しておきたかっただけだと、彼の方から打ち切られてしまった。
 悩んだ。
 類の言葉は、その時もずっと以前の時のようには冗談交じりではなかったけれど、それでも答えを求めていないただ一方的なもの。
 だから応じる応じない以前に、どうその申し出を捕らえて良いのかさえもわからなかったのだ。
 「あんたといると、俺はいつも新しい感情を教えられる。俺の知らなかった感情が生まれる」
 「………」
 「泣いたり、笑ったり、怒ったり。いつも忙しそうで、一生懸命生きてるそんなあんたを見ていると、俺の中でも少しづついろんな事が変わってゆく。ガキの頃、いや、出逢った最初の頃は、あんたのことマジでうざいって思ってたけど、いないと寂しい、あんたが苦しんでいると助けてやりたいって、そう思ったよ」
 「…類」
 「でも俺は、いつもそういうことに気が付くのが遅くて、いつの間にかあんたは、本当の意味で司のものになって…なんかどっか穴が空いた。それが何か、俺にはずっとわからなかったけど」
 類の真摯な言葉。
 つっかえつっかえに語られるそれは、彼らしくなく不器用で、けれど、この上なく彼らしいぶっきら棒なものだった。
 「あんたのことが、好きだ」
 ぎこちない笑みを浮かべ、類が手元の花を摘む。
 「大輪のバラの花束の方が良かったかな?」
 彼女のためだけに、類自ら摘んだ、野の花々で作られた花束が差し出される。
 それは本当にささやかで質素なものだったけれど。
 類の手を見つめ、そっとつくしはその花束を受け取った。
 「ううん、嬉しいよ。ありがとう、類」
 「ん。…返事、聞いてもいい?」
 類の問いかけに息を呑む。
 それはたぶん―――、
 「私………私、私ね」
 俯いた顔が上げられない。
 言葉が出なかった。
 たった二つの選択肢だというのに。
 今、自分は彼からの言葉に、どう答えようとしているのか。
 「私っ」
 「まだ、答えを出すことができない?」
 ハッと顔を上げれば、ただ優しいだけの微笑みを浮かべた柔和な顔に出会う。
 「言ったよね?断られるとか思わないけど、承諾してくれるとも思えないって。少しは、俺の気持ちに牧野も近づいてきてくれたんじゃないかって思ってたけど?」
 「……………」
 なんと答えて良いか迷って、何度も口を開きかけては、答えられる言葉がなくて閉じることを繰り返す。
 「話せることを話してごらん?どちらにせよ、諦めるつもりはないんだ。俺に聞きたいことや話したいことがあるなら言ってよ?」
 類に聞きたいこと、話したいこと。
 「あるでしょ?」
 「…さんっ」
 「…………」
 「静さんのことは…っ!?」
 飛び出した言葉に、むしろ驚いたのは類よりもつくしの方だったかもしれない。
 けれど、静のことを、今、彼が彼女のことをどう思っているか、聞かずにはどうしても済ませることができなかったのだ。
 自分もまた、司への複雑な気持ちを完全には捨てきれていないというのに、それでも知りたかったのだと、あらためて気がつかされる。
 「静さんのこと、本当にもういいの?」
 あれほど類が愛した女性。
 ずっと愛して、焦がれて…彼女ゆえに心を病んで。
 …それに。
 あの写真の女の子の存在がある。
 以前、その写真を意図せずして見つけてしまった時には、その子の父親のことをあやふやなままで話を終わらせてしまったけれど。
 …でも、あの子は、あまりに類に似ていた。
 似過ぎているほどに。
 そして、類にもまた身に覚えがある以上、自分でもわかっていたはずなのだ。
 その子と自分の関係を。
 「静のことは、終わったことだと言ったよね?」
 一瞬、類の顔が苦痛に歪んだ気がした。
 自分は今、彼の心の傷に触れようとしている。
 彼はけっして彼女の傷に触れようとはしなかったというのに。
 すぐにでも、自分が口にした問いかけを撤回したいという誘惑に駆られては、真実を隠して見ないフリ、聞かないフリのままではダメなのだと、もう一人の自分が言う。
 …また繰り返してしまうから。だから。
 「たぶん、ガキの頃の俺があいつに抱いていた感情は、恋というよりも、生まれたばかりのヒナ鳥みたいな想いを寄せていたんだと思う」
 「……………」
 雑草の中からタンポポの綿毛を探し出した類の指先が、プツンと茎を手折る。
 そして、窄めた唇の前に掲げて、ふっと息を吐いて綿毛を散らした。
 「静は俺にとって、母親であり姉であり…憧れの女性だった。あの頃の俺のすべてだった」
 わかっていた。
 まるで崇めるかのように、静のポスターにくちづけを贈る彼を見た時から。
 「あいつが本当のところ俺のことをどう思っていたか、それは俺にも正確にはわからない。弟のようには想っていてくれていたと思う。だけど、そうだな。静にしても、そこらへんは曖昧だったのかも。俺たちは近すぎた。近いのに血の繋がりのない赤の他人で…。依存していた俺よりも、先にそういうことに気がついた静が逃げ出した」
 「…逃げ出した?」
 「そう。俺から…俺の束縛と依存から。静は俺を疎ましく思っていたんだ」



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