「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影③

愛してる、そばにいて559

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 「ああ」
 そういえばそうかもしれない。
 『花沢類』から、『花沢さん』と呼ぶようになって、そしていつの間にか、『類』と呼ぶようになった。
 呼び名が変わるのと共に、互いへの気安さが変わり…そして、想いが変わった。
 …変わったのかな。
 たしかにつくしの彼への気持ちは大きく変わった。
 少女の頃の憧れから、…身近な、けれど得がたい一人の男性へと。
 しかし、彼にとっての自分の存在は?
 「…もうバイオリン弾かないの?」
 「うん?」
 「ほら、昔、よく学校の音楽室でバイオリンを弾いてたじゃない?」
 「ああ」
 運転の合間、チラッとつくしが横を見ると、類は狭い助手席で、それでもそれなりにお寛ぎ遊ばしているのが目に入る。
 眠そうにしている横顔に、少年の日の面影を蘇らせ、同時に余計なことまで思い出してしまった。
 「…………ちょっとムカッとするかも」
 唐突に不機嫌な声を出した彼女に、類が不思議そうに目を瞬かせる。
 「なに?」
 「いや、高校の時のあんたって、ホント無愛想だったなって思い出したの」
 「そ?」
 「そうよぉ。私なんて、上手だって褒めて、何の曲か聞いただけだったのに、うるさいの一言で冷たくあしらわれちゃったんだから」
 たしかあれは、司の命令で集団レイプされそうになったところを類に助けられ、その礼を言った時のことだ。
 司のことは赦しているつもりだが、それでもまったくわだかまる気持ちがないというのにはウソがある。
 …この人も、けっこうひどいこと言ってくれたような憶えがあるわね。
 『たかが処女喪失、うるさくされるくらいなら助けなければ良かった』、そんな感じだっただろうか。
 「別に今も愛想がイイとは言われないけど?」
 ガクッ。
 そのとおりではあるが、自慢にもならないことを平然と言われて項垂れる。
 「それで怒ってるわけ?」
 「怒ってはいないけどさ」
 いまさら責めても仕方のないことだ。
 「今度、何か弾いて聞かせてよ?」
 「ん~、もう何年も弾いてないから指が動かないし」
 「ああ」
 つくしにしてみても、道明寺家の若奥様教育でさんざん訓練を受けたピアノレッスンだったが、あの家を出て以来一度も弾いていなかったから、もう何か人に聞かせられるような曲を弾ける気がしない。
 …猫踏んじゃったくらいは弾けるかな?
 それでもロクに楽譜も読めなかったところからのスタートだったのだから、必要に迫られてとはいえ、よくも頑張ったものだと当時の自分を褒めてやりたくなった。
 「類が音楽室で弾いてたあれって、何の曲だったのかなぁ?」
 「さあ?」
 「…………」
 「…………」
 そこでまた再び話が途切れた。
 気まずくはない沈黙。
 無言の二人の間に、どこかで聞き覚えのある男性アーティストの甘く切ない歌声が流れてゆく。
 …類、寝たのかな。道、こっちで大丈夫かなあ。
 暇さえあれば寝たがる男だ。
 とりあえずはカーナビもセットしてあるから大丈夫だとは思うが、彼女の気のせいか行きとは違う道のような気がして仕方がない。
 …いや、でも、類がちゃんとセットしていたはずだし。
 そろそろ空も赤焼けし始め、夕闇が迫っている。
 不慣れな田舎道。
 山道ではないのは幸いだが、それでもできることなら、完全に夜になってしまう前に別荘に辿りつきたい。
 「あっ」
 「え?」
 怠惰な猫よろしく、倒したシートにゴロゴロしながら窓の外を見ていた類が、ガバッと体を起こす。
 「そこ!どっかで適当に車停めて?」
 「へっ…そこって」
 「路駐しても、とりあえず邪魔にならないところ?」
 
 
 
 
*****




 「凄い」
 つくしの第一声がそれ。
 しかし、二の句を継ごうにも他に言いようがなくって、結局また同じ言葉を呟いた。
 「本当に凄い」
 「…けっこうイイでしょ?」
 「うん、綺麗」
 一面の花、花、花、花。 
 一年中、色取り取りのバラを咲かせている庭を見たことがある。
 高価な胡蝶蘭を所狭しと競わせている温室も。
 けれど、こんなふうに野生に自生している花々の群生を見たのは初めてだった。
 一つ一つは名も無き小さな雑草の花が、まるで大地をキャンバスのようにして咲き誇り、沈みかけた夕日の残照を浴びて、幻想的な光景を作っていた。
 「こっち」
 類に手を惹かれ、少し小高くなっている開けたところへと移動する。
 類が懐から取り出した大判の男物のハンカチを地面に広げ、
 「ここ座って?」
 「あ…うん、ありがと」
花畑に腰を下ろすように誘導してくれる。
 二人並んで、大自然の作り出した見事な絵画をぼんやりと眺めた。
 「いい季節だね」
 「…うん」
 「寒い?」
 あらためて問われたことで、わずかに肌寒い気がした。
 今日は良く晴れて、昼間は暖かかっただけに軽装だったからよけいだ。
 けれど、寒いと言ってしまえば彼に気を使わせてしまうことはわかっている。
 …なにげにレディファーストが身についてるお坊ちゃまだものね。
 普段の言動からして、とてもそうは見えないけれど。
 「大丈夫だよ」
 「ハァ…また、そうやって痩せ我慢するんだよね、あんたは」
 ため息をついた類が、薄手のジャケットを脱いでつくしの肩へとかけてくれる。
 「大丈夫だって」
 「いいから、着てな」
 かけてくれたジャケットを返そうとするつくしの手を上から押さえて、そのまま地面へと縫い止めてしまう。
 そして、わずかにつくしから視線を反らした類が、唇を舐めて、ゴクリと唾を飲み込んだ気がした。
 「あのさ」
 「なに?」
 「ん………、俺と結婚しよ?」 



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