「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影③

愛してる、そばにいて556

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 「うう~、食べ過ぎた」
 「平気?」
 走行する車の開け放った窓に張り付いて、つくしは腹と口元を抑えてぐったりだ。
 「こんなところでゲロ吐かないでね」
 「……………」
 お綺麗な口から溢れたあまりのセリフに、ゲンナリしつつ、それもいつものこと。
 …王子様張りの美男とお洒落なオープンカーかなんかでドライブとかだったら、きっとすっごい素敵なシチュエーションだったんだろうな。
 が、その当の王子様の口から出てくるセリフがゲロ。
 しかも、王子様が運転し遊ばしてるのは、思いっきり中古車の国産軽自動車。
 シートを一番後ろまでズラしてはいるが、長い足にはそのコンパクトな運転席はかなり窮屈そうだ。
 初夏とはいえ、幸いまだそれほど日差しも強くない5月、あくまでも暦上でのこと。
 開け放った窓から窓へと車の中を通り抜ける風が、ちょうどつくしの食べ過ぎた吐き気を軽減してくれていた。
 それでも、類がいつもどおりの末期的な運転技術を発揮してくれていたら、あえなく王子様の眼前で派手に粗相をしてしまっていたことだろう。
 「…なによ、やろうと思えばちゃんと丁寧な運転だって、できるんじゃないのよ」
 ついボヤきたくもなってくる。
 「俺、別に運転下手じゃないよ、っていつも言ってるだろ?ただちょっと楽しくなって、気分のままに遊んじゃうだけだよ」
 「……………」
 おいおい、ってなもんである。
 いかにも類らしいお気楽なセリフだが、命がかかってる
 「まあ、いいわ。どうせ、私が何言ったってロクに聞きゃあしないんだから。それよりも、これからどうするの?真っ直ぐ農園の方に行く?サクランボ狩りって、あんまり遅くまでやってないよね?」
 食べ過ぎたと言ってるそのすぐそばから、もう次の食べる予定を頭に思い描いてウキウキしているつくしに、さすがの類も呆れたらしく、苦笑している。
 「なによ?」
 「いや、もう何も食べられないんじゃなかったかな、って思ってさ」
 「あ~、まあ、それはそれ?別腹ってやつ?」
 「…やっぱ、別腹あるんじゃん」
 「なんか言った?」
 「別に」
 に~っこり。
 軽く睨め付ける彼女に、類も逆らう愚は犯さない。
 つくし的にも多少は気恥ずかしくなくもないが、自分の食い意地は、どのみち彼にも熟知されてしまっている。
 いまさら取り繕っても仕方がないし、それ以上に、寝起きのすっぴんの顔やら、酔っ払ってゲロを吐いたところまで、すでに結婚生活ウン十年の熟年夫婦真っ青な明け透けさだった。
 …も、もしかしたら司の時より、気を抜きすぎてる?私。
 初恋の王子様への遠慮やら、見栄などもはやどこへ、だ。
 「あっちについたらさ、腹ごなしに少しテニスでもやろうか?」 
 「えっ、テニス?」
 意外な人物からの意外な提案。
 たしかに類とテニスならうっとりするほど似合っていると思うが、しかし彼の実態も知りすぎてるつくしにしてみれば、やはり意外でしかない。
 「乗馬でもいいけど、テニスならウチの別荘にコートがあるし」
 「へえ?もしかして厩舎もあるの?」
 「いや、近場に乗馬クラブがあるけど」
 「なるほど…でも、時間的に無理なんじゃない?」
 一応今日明日の一泊二日の小旅行だが、それでも類は明日も仕事だったから、早朝出発の予定で、サクランボ狩りをするのなら今日しかなかった。
 「まだ時間も早いし、大丈夫だよ。第一サクランボ狩りをするって言っても、観光農園とか、そういうところに行くわけじゃないしね」
 「え~、そうなの?」
 「そういうところに行きたいのなら、今からあたってみて貸し切ってもいいけど、そうする?」
 「いやぁ」
 事の発端は、先日進宅訪問の際に、類が手土産で持って行ったサクランボだったのだ。
 あまりの美味しさに、ほっぺが落ちそうだと喜色満面食べていた彼女に、そんなに好きならもっと送らせようかと言ってくれたことから、なぜか大型連休の中で唯一類が取れた休日に、サクランボ狩りへ行くことに。
 …貸し切るとか、やっぱり類の発想も庶民じゃないわよね。
 いかに庶民ナイズされていたとしても、つくしのような生粋とは違う。
 「今の時期、そんなの無理に決まってるでしょ。…じゃなくって、じゃあ、どこに行くつもりなの?」
 「うちのワイナリーの一つが、別荘の近くにあるんだけどさ。葡萄酒だけでなく、りんご酒やイチゴジャム、サクランボの砂糖漬けなんかも販売してて、そこの契約農家の一つにお邪魔する予定。だから、多少は時間も融通がきくんだよ」
 「へぇ~」
 「もう少しすれば、桃も楽しめるよ?」
 「桃!食べた~い!!」
 満腹でもう何も食べれないと言っていた舌の根も乾かないうちの現金な歓声だ。
 「ぷっ、…いいけど、吐き気はいいわけ?」
 「へへへ、だ・か・ら、別腹!」
 気が付けば、さすがに空腹というほどではなかったが、それでもはち切れそうだったつくしの腹具合も、ずいぶんと落ち着いてきていた。
 「まあ、さすがに俺は来月またここに来れるかわからないけど、もし桃狩りも楽しみたいなら、ほら、この間の友達…」
 「優紀?」
 「そう、その彼女でも誘ってまたくればいいよ。うちの別荘に何泊でもしてさ?」
 思わぬ類の提案に、つくしが顔を綻ばせる。
 本当に来るかどうかはともかくとして、彼の心遣いが嬉しい。
 「ありがと」
 「ん……じゃ、そろそろ気分も良くなったみたいだし」
 「え?」 
 つくしが首を傾げた瞬間―――、
 ギュゥンッ!
 「いいかげんノロノロ運転も飽きちゃったから、ちょっとペースあげるね」
 「ひっ~、ぎゃああああああああっ!!」
 カーナビの警告音を振り切って、類が車のスピードを一気に上げた。
「だから!軽で140Km/hとか、勘弁して!ここはレース場じゃないっつーのぉっ!」
「これ、たぶん180Km/h出てるよ」
「ひっ!」




*****




 いくら気分が良くなかったからといって、やっぱり類に運転を任せるんじゃなかったと後悔しながら、どうにかこうにか車を這い降りて、フラフラの体を車のボンネットに手をくことでなんとか支えた。
 「へ~、ずいぶん久しぶりに来たけど、こんなんだったっけ、ここ」
 「……………ずいぶん久しぶりって」
 「ん~、俺が日本にいた頃…中学生くらいだったかな。司たちと遊びに来て以来だから、20年ぶりくらい?」



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