「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影③

愛してる、そばにいて553

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 類に差し向けられた車に乗ってマンションに帰宅すると、すでに時刻は21時を大きく回っていた。
 しかし、部屋にたどり着いても、類の方はまだ会社に足止めされているらしく、無人の部屋はどこか寒々しく感じられる。
 …別にいつものことじゃない。
 司ほどではないとは言え、類もまた多忙な経営者の身の上。
 朝も夜もなく…というのも珍しくはなく、文句を言いつつもそれなりに社泊や出張もこなしていた。
 「…今日、泊まりなのかな」
 夕飯はいらないとは聞いていたものの―――、
 ブー、ビクッ!
 スプリングコートから取り出して、コーヒーテーブルに投げ出したあった携帯電話のバイブの音に、びくりと肩を揺らす。
 「る、類から?」
 慌てて画面を確認すると、予想のとおりその当人からのLINEで、今夜はやはり社泊になりそうだとかで、帰宅は明日の就業後になりそうだということが簡潔に書かれていた。
 予想していたのになぜか脱力。
 落胆した気持ちを抱え、ソファへと深く座り込む。
 「はぁ~」
 大きなため息が溢れた。
 妙にナーバスになっている。
 進が両親と交流を再開することに賛成したのは自分なのに、どこかで納得しがたい自分もいて消化しきれていない。
 …たとえ私と二人の関係がどうであれ、進には関係ない話なんだから。
 ちゃんと分かっていることなのに。
 ブー、ブー、ブー
 再び鳴り出したバイブの音に、つくしは慌てて受信画面をタップした。
 「は、はい?類っ!?」
 『……………っ』
 無言のまま息を飲んでいるらしい相手の様子に、怪訝に返事し直す。
 「あの…ぅ?」
 『えっと…その、あたし……つくし?』
 「っ!」
 …ママッ。
 『その…こ、こんな夜分遅くにごめんなさいね』
 そんな挨拶から始まった母・千恵子からの通話。
 この1年、これまでも何度か母とは電話でのやりとりを交わしてはいた。
 ただし、つくしからの一方的なもので、特に着信拒否をしていたとかそういうことではなかったが、それでも彼女の拒絶感はそれなりに伝わっていたのか、着信履歴で彼女の番号を知っているはずなのに、それでもあえて千恵子は自分の方からの電話は控えてくれていた。
 …出なかったかもしれない。
 あるいは、たとえ電話をくれたとしても、迷い悩みつつ無視をしてしまった可能性がある。
 たぶんそうしたことを千恵子も見透かしていたのだろうし、怖れていたのに違いない。
 ーーー親子だからこそわかった。
 あるいはそうした彼女の気遣いが、多少なりともつくしの頑な気持ちをある程度宥めていたのかもしれない。
 いざ、こうして電話を貰ってみれば、以前ほどの嫌悪感や忌避感を感じないことに気がつかされる。
 …それはそうだよね。
 司のことでさえも、今は遠い過去のことだと思い切ることができたのだ。
 血を分けた肉親である彼らのことを、赦せないはずもない。
 『あの、つくし?』
 あまりに無言のままだったからだろう、遠慮がちに千恵子に呼びかけられ、つくしは我に返った。
 「…あ、うん。平気」
 そんなカタコトの言葉が飛び出して、だが、それだけでは自分の意図が伝わっていないことに気がつき、言い直す。
 「えっと…今、外出先から、その、進のウチから帰って来たばかりだから、寝てたわけじゃないし」
 『うん、そうなの、良かった』
 いつものぎこちない空気は払拭できてはいなかったが、それでも千恵子なりの某かの決意を持って電話してきたのか、あえて明るい声音を装って、無言になりがちのつくしへとあれこれと話しかけてくる。
 『元気?』
 「…うん、まあ」
 『あんたのことだから、ちゃんとやっていけてるだろうけど、生活は大丈夫なの?』
 「ああ、うん、それは大丈夫」
 『責任感が強くて頑張り屋のあんただものね。どこででも、上手くやっていけるとは思うけど』
 「……………」
 『職場の人とはどうなの?』
 子供に聞くようなことばかりの質問に、緊張気味だったつくしの気持ちも解れてクスリと笑ってしまう。
 『何笑ってるのよ』
 「…だって、子供じゃないわよ」
 『それはそうだけど。親にとってみたら、いくつになっても子供は子供なんだもの』
 その言葉に、改めてハッとさせられた。
 つくしが千恵子に問いかけられている質問は、ずっとつくし自身が心の中で戒へと語りかけてきた言葉ばかりだったから。
 母親―――いまさらながらに、なおいっそう強く感じる。
 この人は、自分の母親なのだと。
 『もう33才よね?』
 「そ、そうよ。なに、忘れちゃったの?」
 確かめるような母の言葉に、返した返事の声音はどこか我ながら震えを帯びて、つくしは滲んできた涙をそっと指先で拭った。
 『忘れるわけがないでしょ。…33才はね、大厄と言って、女は特に気をつけなきゃいけない年齢なんだから、あんたも気をつけなさいよ』
 「何を気をつけるのよ」 
 『いろいろよ、いろいろ』
 気が付けばどこか気兼ねしていた上滑りな会話も、気安い口調でポンポンと言い合っていた。
 血は水よりも濃いと言われるが、彼らはたしかに母子だった。
 切っても切れぬ間柄に、時には深く傷つけ合い憎むことはあっても、どうしても無視し得ぬーーーそんな存在。
 「どうしたの…今日」
 『……うん』
 これまでつくしの隔意を感じ取って、あえて自分から連絡することを遠慮していたはずの、母の心境の変化はいったいなんによるものなのだろう。
 それもつくしが、弟の進に会っていたその日にだ。
 …あの子が、何かを言ったんだろうか?
 『なに、ってわけじゃないんだけど』
 「…………うん?」
 『ただね、さっき進から連絡があって、今度の休暇の時に、春樹を連れてウチに遊びに来てくれるっていうから』
 『……………』
 「あんたもそのことは承知してくれてるって聞いて…そうしたら、まだダメだとは思ったんだけど、だけど…遮二無二、つくしに電話してみたくなったのよ。ごめんなさい』



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>スミレ様

こんにちは。
いつも応援ありがとうございますm_ _m


一昨日に引き続き、ご指摘ありがとうございます^^


『夜討ち朝駆け』。
ご指摘のとおり、たしかに、朝も夜もなく、もしくは昼夜を問わずといった意味合いで使っておりましたが、軍事用語が元の奇襲するという意味合いだったんですねぇ。
これが営業マンや一兵卒的立場の人間であればまだしも、たしかに司や類のような経営者が他者をそういう風に訪問するとは思えず、スミレさんのおっしゃるとおり違和感があるというのももっとも。
認識不足でした、すみません。

とりあえず検索をかけられる範囲で修正いたしました。
ご指摘どうもありがとうございましたm_ _m


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