「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影③

愛してる、そばにいて547

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 「なに?もしかして花沢さん?」
 隠す間もなく正面から画面を覗き込まれ、優紀がニンマリ。
 「な、な、な、なによ?」
 あまりのタイムリーさに驚いて、ついどもってしまう。
 別になんということもないことなのに、優紀がニマニマ笑いを止めてくれない。
 「…べっつにぃ~、いいから出なさいよ。電話切れちゃうじゃない」
 「はぁ~」
 今は何を言ってもからかわれる立場なのは、自分であることは間違いないと、仕方なく優紀の目を気にしながらもスマートフォンの画面をタップする。
 …別に何を聞かれてたって、困る会話があるわけじゃなし。
 「………はい……」
 『牧野?俺』
 「うん」
 『こっち、今、仕事終わったところだからさ。そっち迎えに行くよ』
 「えっ?!」
 たしかに日頃から、夜道の女の一人歩きはするなと、彼女にほとんど干渉することがない類にしては、妙に口煩く注意されている。
 「いや、いいよ。…あんた、明日も仕事じゃない」
 基本やる気のほとんどない類だが、さすがに毎週週末休めるわけもない。
 ここのところ忙しいらしく、連日連夜、社泊も珍しくなかった。
 『それとも今日、そっちに泊まるの?』
 「うーん。どうしようかな、って思ってて」
 優紀を見れば、帰りなよ、と口パクされてしまっている。
 …さっきまで、泊まっていけって言ってたくせに。
 『でも、あんた確か明日、弟のところに顔を出すつもりだって言ってなかったっけ?』
 「あ~」
 そうだった。
 3日後に控えた甥の春樹の誕生日プレゼントを渡すために、進の家に訪問する予定だった。
 …あちゃあ~、プレゼント、マンションだ。
 進一家も共働きで、そうそう電撃訪問できないから、予定は簡単に変えられない。
 「…帰るよ」
 『そ?じゃ、行くから』
 「え~、いいって。まだ終電終わってないし、第一、類、ここ知らないでしょ?」
 『カーナビ使うから大丈夫。メールで住所送っておいて?じゃ、あとで』
 「ちょっ…」
 プツッ。
 さっさと言いたいことだけを言って、通話を切られてしまった。
 ツーツーという電子音を響かせる携帯電話を見つめ、ため息を一つ。
 仕方なしに指示通り、呼び出したアドレスの優紀の住所を類へと転送する。
 …もう~、なにげに強引なんだから。
 「迎えに来てくれるって?」
 「……うん」
 「へっえ~っ!いいじゃない!?」
 「なにがよ」
 妙にハイテンションな優紀の勢いにたじろぎながら、座卓の上の瓶やグラスを簡単に片付け出す。
 「いいよ、そのままにしておいて。あとでちゃっちゃっと片付けるから」
 「いや、手伝うよ」
 飲み食いしっぱなしで帰宅するのは忍びない。
 「いいからいいから。それより身支度しちゃいなって。あんたんとこのマンションとここだと、30分もかからないんだから、すぐ迎えが来ちゃうじゃない」
 「…身支度って」
 自宅に帰るのに、なんの身支度がいるというのか。
 「ほらほら、もう、髪なんかぐちゃぐちゃよ!化粧だってはげ落ちちゃってるし、早く直して!」
 「…いや、それってもういまさらだから」
 …なんせ一緒に暮らしてますから。




*****




 優紀の住むアパートも類のような高級マンションではなかったから、たいがい込み入った住宅街の一角にあった。
 ざっと片付けを手伝おうとしたというのに、優紀になぜか急かされ、化粧直しやら身支度を整え、アパートの前で類を待ち受けること10分。
 「もうすっかり春だねぇ」
 「まあ、時々思い出したように寒い時もあるけどね」
 つくしのことも急かしたが、優紀自身も真夜中だというのにバッチリメイクを直し、さっきまでの酔いどれ30女の風情を完全に拭い去っていた。
 「あ、あれじゃない?」
 通りの向こうのヘッドライトに目を向けるが、何度目かの見当違いに溜息を付き合った。
 「はぁ~。待ってるくらいなら、電車で帰った方が楽なのに」
 「まあまあまあ、電車で数分の距離って言ったって、駅前とかけっこう女の一人歩きはなにかと物騒なんだからさぁ」
 「…そりゃそうだけど」
 さすがのつくしも、駅から延々と夜道を歩くほど迂闊ではない。
 学生時代は平気でほっつき歩いていたこともあるが、さすがにこの年齢でさまざまな経験も積んでいる。
 周囲が思うほど学習能力がないわけではないのだ。
 程よい夜風が酔いに火照った体に気持ちよく、酒に濁った頭も徐々に冷め始めていた。
 「でも、安心した」
 「ん?」
 「…つくし、幸せそうで」
 「え?」
 幸せ。
 たしかに不幸ではないが、幸せという自覚を持つほどの何があるというわけでもないのだが。
 「不幸じゃないんでしょ?」
 「…まあ、それはね」
 「だから幸せなんだろうってこともないだろうけど、幸せって不幸を感じていない…心安らかでいられる平凡な毎日の積み重ねだと思うんだよね」
 「ああ」
 たしかに。
 若い頃は、『幸せ』には特別な定義があるのだと思っていた気がする。
 キラキラと輝いて、まるでそれ自体が祝福された何かでさえあるかのような錯覚。
 しかし、この年齢になってくると、そうではないことがわかる。
 不幸ではないから幸せなのではないのと同じように、平凡だから不幸なのではなく、心苛む悲しみや怒り、寂しさ、辛さ、孤独―――それら諸々の負の感情を感じずにいられる日々が、どれだけ貴重なものであるか、今の彼女はよく知っていた。
 そして、そうした毎日は、自分の努力だけで作られるのではなく、一緒にいてくれる誰かが共に作り、守ってくれるものなのだと。
 …類。
 「あ……」



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