「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影③

愛してる、そばにいて538

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 「えええっ!?プロポーズっ、ほえぇ~」
 「しぃ~っ!しっ」
 誰もいないというのに、とっさに優紀の口を片手で抑え、つくしが反対側の人差し指を自分の口元に立てて見せる。
 「……大きな声出さないでよ」
 「ごめんごめん。でも、まあ、いくら壁が薄くて近所に聞こえたにしても、誰もあたしたちの会話の内容なんてこれだけじゃわからないからさ」
 「そりゃそうだろうけど」
 それでも自身のプライベートのことを、ほいほい言いまわりたいものでもない。
 簡単な買い物を済ませ、初訪問の優紀の一人暮らしのアパートは、つくしが隼斗や陽太と過ごした所帯向けのマンションとはやはり違って手狭だったが、女性らしい小物や家具でこざっぱりと飾り付けられた居心地の良い空間だった。
 優紀が以前暮らしていたアパートも似たようなものだったが、これが普通のOLの一人暮らしというものなのだろう。
 つくしも一人暮らしの経験はある。
 だが、司によって用意された住まいは、とても一人で暮らす用途のものとは思えないほど広大な面積を持つ、豪奢な超高級マンションだったのだ。
 不満顔でサワーの缶を持ち、ぐびりと音を立て、ジュースのようなベタ甘いお酒を一口含む。
 …類や司だったら、『なんだこれ、飲み物か?』とか言って、顔を顰めて飲めたものじゃないわよね。
 一時期つくしにしてみても、妙に口が肥えてしまって、馴染みのはずの庶民の味を美味しく感じられず焦ったものだが、人間なんにでも慣れるものだし、子供の頃に馴染んだ感覚は案外あっさりと戻るものだ。
 類が未開の地でも生活できたように。
 未開の地で生活できたくせに、日本に戻ったとたんあれが嫌だ、これが嫌だと我儘を言い出すのが解せないが、そんなものなのだろう。
 今でもたまに類に連れられ、高級レストランでとる食事も普通に美味しいと感じられる。
 しかし、ジャンクな味も大好きだったし、平気で食べられる。
 「まあ、結婚しない?ってけっこう普通に言われたから、もしかして言ってみただけなのかもしれないんだけどね」
 「……いや、結婚でしょ?言ってみただけってありえないから」
 「うーん」
 呆れたような優紀の視線が痛い。
 しかし、直接に類を知らない優紀にはわからない感覚かもしれなかったが、彼ならそんなことも普通にありえそうだ。
 …ホント、宇宙人っていうか。
 「でも、類ならありえるんだよね。ほら、言ったじゃない?ず~っと前、全然そんな雰囲気じゃなかった頃にも、冗談ぽくそんなこと言われたことがあるってさ」
 「結婚しない?って?」
 「ん~、そんな感じかな」
 あれはまだ、類と雇用関係になってそれほど経っていない頃、類の見合い話がまだそれなりにあった時分か。
 いったいどんな脈絡か、見合いの為に夜食のキャンセルを連絡され、そのついでのようにサラッと言われたのだ。
 『そうだ、あんた、俺と結婚するつもりない?』
 …ありえないわよ。
 たしかにその頃から添い寝はしていたが、だからといって互いに恋愛感情もなく、何者でもない関係だったのだ。
 しかもその理由が、
 『単純に誰かとどうしても結婚しなければならないとしたら、あんたとするのもいいかと思っただけなんだけど』
だ。
 …正直、なんだそりゃ、だわよね。
 たしかにつくしにしてみても、少女の日のような結婚に対しての憧れや、夢などというものはもはやなきに等しいが、それにしてもそんな理由で結婚を決めるほど人生を投げてはいない。
 「ふぅん?まあ、その時はともかくとしてさ、そのプロポーズって、そんなに変なシチュエーションだったの?冗談にしてしまうような?」
 「うーん、それは…まあ、そうでもないかも」
 一度目はともかくとして、先日セントラルパークでのそれは、もっと至極真面目なものだった気がする。
 あの類が照れていたのだ。
 冗談ではないだろう。
 だが、それにしても…、
 …静さんのことがある。
 自然に思い浮かんだその名前に、どきりと胸が鳴った。
 普段、意識していないつもりで、どれだけ自分が彼女のことにこだわっているか、改めて気付かされたから。
 それはそうだ。
 誰よりも類が愛して、愛して、…焦がれていた女性なのだから。
 そして、あの写真の幼女のことも。
 「つくし?」
 「あ、うん、えっとそう。…司に、道明寺に未練がないなら、俺と結婚しないかって。私となら特別な何かがなくても、毎日に幸せや温かさを感じられそうだからって」
 そんな言葉だったと思う。
 「へぇ…」
 茶化すでもなく優紀が頷くのに、今はつくしの方が妙に照れてしまって、グビグビと酒を一気に煽ってしまう。
 「いいじゃない。それって、あんたが学生時代に思い描いていた夢、そのものなんじゃないの?」
 「優紀?」
 「苦労人のせいか、あんたって昔から堅実で生真面目だったから、あたしたちみたいにただカッコイイ人と付き合いたいとか、ワクワクするような恋がしたいとか言うんじゃなくって、平凡でもいい、そういうふうに互いがいることで心が温かくなる、互いを大切にしたい…そういう恋愛を望んでたよね?」
 自分でも見失っていたかつての自分の恋愛観。
 夢物語の世界の恋をしか知らない、幼い少女の夢想と憧れのようなものではあったけれど。
 「まあ、花沢さんが相手じゃあ、平凡とは程遠いとは思うけど」
 「ははは」
 …確かに。
 「でも、花沢さんは、そんなあんたが高校時代凄い憧れて、…好きだった人だよね?初恋の人」
 「……………そう、だね」
 縁というのなら、類とつくしの縁もまた、なんと稀有なものだったのか。
 類ではないが、彼女もまた、よもや彼と再び出会って、こうして共に暮らし、プロポーズされる間柄になるとはどんな夢の中でも思い描いたことはなかった。
 「でもさ」
 「…うん?」
 口調の変わった優紀の声音に顔を上げれば、困ったように眉をハの字に下げて、言葉に迷っている風の優紀の複雑な顔に出会う。
 「なに?」
 「ん…これ、言ってもいいのか、わからないんだけど」
 「うん?」
 珍しく言いあぐねて、言葉を選んでいる優紀に先を促す。
 「花沢さん、あんたに道明寺さんのことを聞いたわけでしょ?」
 「え…?」」
 「未練がないのかって聞くのって、隼斗さんのことじゃなくって、道明寺さんのことなんだ?」



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