FC2ブログ

「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影③

愛してる、そばにいて537

 ←愛してる、そばにいて536 →愛してる、そばにいて538
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「まあ、そうして欲しいなら、してあげられないとは言わないけどね」
 キラリと面白そうに光った目が、つくしの反応を見て楽しんでいる。 
 しかし、特に反発するでもなく、ジッと彼の返事を待っている彼女の様子に類が肩を竦めた。
 「そんなことしなくても、あんたの実力ならどこだって欲しがるよ。俺は人を探しているらしいって情報を回しただけ。…別に非常勤でなくても、常勤でも良かったんじゃない?今のところはともかく、常勤で来て欲しいってところもあったんでしょ?」
 外国人患者受入れを行っている大病院の就職口の情報も、類からもたらされ、一度は面接や試験も受けた。
 以前勤めていた大学病院での履歴もそうだが、彼女の持つ語学の実力を重宝され、逆に常勤での就職を打診されたくらいだ。
 「……フルタイムになったら、ここの管理をちゃんとできる自信ないし」 
 「別にもう俺から給料は受け取らないんだから、そんなの気にしなくてもいいのに」
 つくしは病院への就職が決まるにあたって、類のメイドを退職していた。
 元々臨時の約束だったのだ。
 それがいつの間にか、一年…そして、気が付けばただの雇用関係ではなくなった。
 もっとも恋人というには微妙な間柄ではあったけれど、それでもそれが彼女なりのケジメだったのだ。
 …プロポーズしてくれてる人から、お給料もらうとかありえないでしょ。
 一時はメイドを辞するにあたって、当然だが、類のマンションを出てゆくことも考えた。
 しかし、
 『それなら、今度は雇用主と被雇用者の関係じゃなくって、同居人になろうよ。家賃はいらないから、代わりに今までどおり…というか手の届く範囲で、部屋を管理してくれるってことでどう?』
というあらたな提案を類から受け、そして、それをつくしも受け入れた。
 今はまだ、彼とどうこうなるとまでは心を決めることはできていなかったけれど、それでも彼の手を振り払って、一人歩いて行こうとはもう思えなかったから。
 スッと伸びた大きな手が、つくしの頭をくしゃくしゃっと撫でた。
 「あんまり生真面目に考えすぎるなよ。もっと気楽に生きな?」
 「類」
 優しく笑ってくれる男の美しい笑みに見惚れる。
 と、
 「ぷっ、ぷぷぷ」
 「?」
 「……凄い、まるで頭に鳥の巣乗っけてるみたい。髪、爆発してるよ?」
 「!!る~っいぃッ!!!」
 …あんたがぐちゃぐちゃにしたんでしょおよおぉ!!



*****



 「つくし、こっちこっち!」
 うっかり通り過ぎかけて、かけられた声に慌てて振り返ると、パイプハンガーラックの向こう側にかがみ込んでいた優紀がつくしを見つけ、小さく手を振っていた。
 「…ごめん、ちょっと遅れた」
 「ううん、全然。どのみち、あたしの方もまだどれにするか決まってなかったし」
 歩み寄った彼女へと、手に持っていた二着の服を掲げて見せ、優紀が首を傾げる。
 「どっちがいいと思う?」
 「ワンピース?」
 「うん。さすがにスーツは辞めようかと思って。やっぱ、こっちかなあ?こっちの方が無難でいい気もするけど」
 「ん~、あたしもやっぱりそっちかな。初顔合わせって言ったって、お見合いじゃないんだし、それほど堅苦しい席じゃないんだよね?なら、親しみやすい方がいいんじゃないの?」
 「そうだよね。…よし、決めた!こっち買ってくるね」
 嬉しそうに微笑んだ優紀が、選ばなかった方のワンピースをハンガーにかけ直し、いそいそとレジへと走る。
 その背を見送って、なんとはなしに、つくしも並んでいる洋服を手に取り眺め始める。
 …そういえば、最近、私もぜんぜん新しい服買ってないなぁ。
 そのわりにワードロープが増えているのは、いつの間にか上手く言いくるめられて、類に‘制服支給’されてしまっているからだろう。
 「お待たせ」
 仕事帰りに待ち合わせて、今日は優紀と夕食を一緒することを約束していた。
 「先週初出勤だったんでしょ?どう、仕事に慣れた?」
 「う~ん、どうだろ。やっぱ一年ぶりだしね、けっこう戸惑うことも多いかな」
 「そうだよね」
 あれこれと、歩く途中でも目についた洋服や雑貨の店に立ち寄り、ウィンドーショッピングを楽しむ。
 学生の頃よりは懐にも余裕があり、買いたいものを買えるだけの収入もあったが、優紀にしてもつくしにしても、基本財布の紐はそこそこ固く堅実だ。
 「花沢さんのお夕食の支度とか、大丈夫だったの?」
 「あ、うん。今日の夜は会食で遅くなるって言ってたし、もしかしたら、そのまま会社に戻って社泊するかもって」
 「花沢さん、忙しいんだ?」
 「いつもね」
 「へぇ」
 一見飄々としているからあまり感じられないが、一般社員などよりよほど忙しいのは間違いない。
 それこそ、自分で適当に息を抜かなければ、とてもではないがやっていられないだろう。
 …その点、司よりずっと要領いいよね。
 司の方は、あれで案外生真面目すぎるくらいに真面目だったから、つくしが何度口を酸っぱくして注意しても、倒れるまで働くことも珍しくなかった。
 「じゃ、遅くまで大丈夫だよね?」
 「うん、あらかじめ断ってあるし、行き先も言ってあるから平気」
 「やった!」
 女同士の四方山話は尽きることがない。
 互いに大人になってから、そういう機会はそうそうないだけに、積もる話がいくらでもある。
 「でもさ」
 「うん?」
 なんだかニヤニヤして、優紀が悪い顔になっている。
 「つくしったら、なんだかすっかり奥さんみたいだよね」
 「はぁ?!いやいやいや」
 ギョッと、思いっきり否定する。
 「何言ってるのよ、優紀!」
 「え~思わない?」
 「思いません!」
 焦るつくしが睨め付けると、さすがにそれ以上は揶揄うのをやめるが、それでもニヤニヤ笑いはそのままだ。
 …もう!
 「でも、前までは所帯持ちよろしく、家を留守宅にするわけにはいかないからって、夜は絶対付き合わなかったじゃない?それってもういいの?」
 「ああ」
 これまでつくしは、類のマンションのメイドという立場から自重して、彼が出張などで留守の時や、帰宅する頃合いの外出は避けていた。
 類からはそこらへんは自己判断で自由に行動していいと言われていたが、やはり雇われ人には雇われ人の仁義と責任というものがあると、つくしが頑固に自己規制していた事柄の一つだったのだ。
 「えっとさ、話すと長くなるんだけど、……その、類との雇用契約は解消したの」
 「ええ?」
 それなりに類とのことは優紀にも話してはいたが、それでもやはり、昼は普通に勤め人の彼女とはすれ違うことも多く、なかなかゆっくりと話す機会を持つことができなかった。
 「あ、ごめん、ちょっとだけスーパー寄って?おつまみは用意してあるんだけど、つくしが今どういうの飲むかわからなかったから、お酒買ってないんだよね」
 「OK」
 どっちみち今も昔も大して酒量は変わらず、どうせサワー缶の2、3本も飲めば十分で、それ以上飲むと寝てしまうのだ。
 今日の女子会は、優紀が一人暮らしをしているアパートだから安心だとは言え、泊まるつもりはなかった。
 …さすがに、泊まりはねぇ。
 優紀からは大丈夫だと誘われはしたのだが。 
 サクサクと互いに好きなアルコールを入手して、帰路につく。
 「さってと!うちに帰ったら、さっそくそこのところを話してもらうからね!」
 「ええ~、そこのところって」
 「一体全体、あんたと花沢さんって、今、どういうことになってるの?」



◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ




web拍手 by FC2



関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて536】へ
  • 【愛してる、そばにいて538】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて536】へ
  • 【愛してる、そばにいて538】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク