「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影③

愛してる、そばにいて536

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 バッチリ見てしまった…。
 いや、いまさら男の下半身の一つや二つ?、かつては二度も結婚した身で何を言わんや、カマトトぶるような小娘でもない。
 しかし、家族でも夫でもない男性の、となると事情が異なる。
 「なにフライパン片手に、一人でうんうん唸って悩んでるわけ?」
 かけられた声に振り返れば、天使張りの美貌の男がスラックス一枚、バスタオルを被っただけの姿で、指先をテーブルの皿へと伸ばしていた。 
 サッ。
 お玉を振り被ったつくしの姿に、類がニコッと笑って、たくわんに伸ばしていた手をそそくさと引っ込める。
 が――、
 「ちょっと!髪っ!!ボタボタと水滴が落ちてるっ!!」
 「ん~?」
 呑気に足元を見下ろし、首を傾げている様は無邪気に美しいが、のんびり見蕩れていては、この家の美化清掃担当者は勤まらない。
 「タオル、貸して!あんたは、とりあえずここに座るっ!」
 どうせあれこれやれと言ったところで、気が向かなければのらりくらりと言い逃れて、結局やりはしないのだ。
 それならば、つくしがさっさと代わりにやってしまった方が楽だ。
 …まったく、子供じゃないっていうのに。
 そんなことを思いながらも、椅子に座らせた類の髪をワシャワシャとバスタオルで拭いてやり、ついでに床の水滴もつくしが拭いてしまう。
 「いくら室内は暖房してるからって、まだ夏ってわけじゃないんだから、いつまでもそんな格好してると風邪引くんじゃないの?」
 「平気、シャワー浴びたばっかでまだちょっと暑いから、もう少しこのまんまでいいよ」
 「もうっ。はい、ちゃちゃっと食べちゃって?」 
 あとは類が座るばかりに用意してあった朝食を手早く配膳し、自分も類の対面側の椅子に腰を下ろす。
 「今日は少なめにしたから、残さないでね?」
 「了解」
 細々と言われるつくしの小言に苦笑して、それでも逆らわずに類が両手を合わせて食事を始める。
 今やすっかりこれが二人の日常で、まるで何年もこうして暮らしてきたかのように違和感がない。
 おそらく類にしてみれば、これまで誰かに指図を受けることなど滅多になかったことだろうが、不思議に反発することもなく素直に受け入れてくれている。
 それこそ時々、自分の過ぎた干渉を煩く思われるのではないかと、つくしの方が危惧しているくらいだ。
 しかし、あんがい類的には許容の範囲内のことのようで、喜んでいるわけではなさそうだが、嫌なことはいやとガンとして受け付けない男が黙っているのだから大丈夫なのだろう。
 「パンツ…元の場所に戻しておいたから」
 「……ん」
 「自分が面倒臭いから、洗面室の棚に移してくれって言ってたんでしょ?それなのに、忘れちゃうんだから」 
 「そうだっけ?」 
 「そうだよ」
 ハァ~とため息。
 いったいどこのスーパーコンピュータだと言いたくなるような明晰な頭脳の持ち主のくせに、こうして類はまま日常生活ではかなりの大呆けをかますことがある。
 それを本人としてはまったく苦に感じていないらしいだけに、いつまでたってもいっこうに改善の兆しが見られない。
 …八つ当たりしたり、人のせいにして怒るワケじゃないから別にいいけどさ。
 「…いくら見当たらなかったからって、マッパで寝る人がいる?」
 「ノーパンでパジャマだけ着ているのも変じゃない?」
 小首を傾げて同意を求められても、同意し兼ねる。
 「だったら、起こしてくれればいいのに」
 「よく寝てたし、…今日から初出勤でしょ?」
 「そうだけど」
 だからと言って、マッパは困る。
 なにせ彼女も一緒に寝ているのだから、うっかりそのアレコレに触ってしまいでもしたら一大事ではないか。
 …良かった。寝てる時に気がつかなくって。
 「何時からだっけ?」
 「ああ、えっとぉ、あたしは10時からかな。全然余裕あるから、こっちのことは気にしないで?」
 つくしはこの4月から、再びソーシャルワーカーとして、近隣の総合病院の相談室に非常勤で勤めることになっていた。
 もともとの社会福祉士の資格を活かした職業でもあるし、類との同居の一年間でいろいろ調べて、他の道も模索したが、結局どんな職業にも一長一短。
 学生時代の時ですら、具体的な夢などなかったのだ。
 いまさら右往左往するよりも既得の資格を活かして、自分なりのやりがいをみつけようと、以前類に勧められた精神保健福祉士の講座にも通い、資格も取得して、ランクアップに努めた。
 一年間の、高額での住み込みのメイドという立場は、彼女に学ぶ余裕をくれたーーー時間的にも、金銭的にも。
 あらたなる資格取得も、そう難しいものではなかっただろう。
 だから、ホンの短期間だが、志したこともある心理カウンセラーの道を再び志すことももちろん考えなかったわけではない。
 また、どうやら彼女は勘違いしていたようで、心理カウンセラーというのは、いくつかの職種と同様これといった資格があるものなのではなく、臨床心理士や精神科医、あるいはそれらに代わる有資格取得者を総称したものだった。
 それらがあればあるに越したことはないが、大学等で専門の教育を受けていなければならないものばかり。
 それだけに、おいそれと取得できるものではなかったから論外として、つまり、名乗るだけなら臨床心理士等の資格を有していなくても構わないのだ。
 それならば心理カウンセラーを目指すことはできただろうし、あるいは拘りや意固地を捨て、類のコネを頼ればその職種で就職することも可能だったかもしれない。
 だが、彼女には自身が抱えている心の病がある。
 またそれだけの問題ではなく、彼女の年齢的にも、とてもではないが敷居が高く、立場的にも呑気に学業についている場合ではない。
 …もう子供じゃない。
 もはや将来を模索する時期ではなく、成熟を目指して精一杯邁進すべき時期なのだ。
 類は、好きにすればいい、勉強をしたければすればいいじゃないか、などとお気楽に勧めてくれたのだが。
 …さすがにね。
 とにもかくにも、かつての自分が熟考した結果選んだ職業なのだから、医療ソーシャルワーカーの道を極めるのも悪くない。
 「もしかして、またコネだとかなんだと気にしてる?」
 「え?」
 別に何かを思い悩んでいるつもりはなかったのだが、ついそんなことをツラツラと考えていたのを誤解されたらしい。
 「ああ、いや、そうじゃないよ。このご時世だもの。ただ漫然と就職活動しているだけじゃ、そうそう仕事なんてないのはわかってるし」
 「そう?」
 かつて、司に同じことをされた時には拒絶反応を起こした彼女だったが。
 「裏口で斡旋してもらったっていうのならともかく、別にそうじゃないんでしょ?」



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