「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影③

愛してる、そばにいて535

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 司―――。
 それは、空耳だったのか。
 彼女に呼ばれた気がした。
 かつて、彼を愛していると、抱きしめ頬ずりしてくれた日々のように。
 ―――つくし、つくし。
 彼女へと伝えるべき言葉がなにかあったはずなのに、その名を心の中で繰り返し呼び、彼女の名前で心をいっぱいに埋め尽くすことしかできなかった。
 『司?』
 『社長、離陸時間が差し迫っております』
 怪訝な滋の呼びかけと、西田の声に促されて、後ろ髪を引かれる思いで、…それでも彼女へと背を向けられた自分を褒めてやりたいくらいだ。
 だが、彼女が先に背を向けなければ、けっしてその場を動くことなどできなかったに違いない。
 自分はさぞがし物欲し気な、情けなくも憐れな顔で彼女を見つめていたことだろう。
 焦がれて焦がれて…恋しくて、1日たりとも彼女を想わない日はなかった。
 …なぜ、NYにいた?
 …なぜ、俺を見ていた?
 ………なぜ、お前は今、俺の隣にいないんだ?
 たくさんのなぜが生まれては消え…。
 ともすれば、今自分がどこにいて、何をしているのかさえも忘れてしまいそうになる。
 横に座るつくしではない女に、自身の異常を悟られたくはなくって、何食わぬ顔で、ゴクリと喉に詰まったような熱く苦い塊を飲み下し、それを誤魔化すように、指先を襟元とネクタイの間に入れグッと緩めた。
 …どうして、俺はあの時、お前を追いかけなかったんだ。
 すぐそばに、あれほど恋しくて愛しい女がいたというのに。
 根が生えたような足を少しでも動かして、一度でも駆け出していれば、きっと自分は、もう彼女を逃がしはしなかっただろう。
 どんなに懇願されたとしても、もはやお前をどこにもやらない、行かせはしない、離さないと、再び腕の中に捕らえ、固く閉じ込めていたに違いない。
 けれど、もはやそうするには、彼はつくしを愛しすぎていたのか。
 彼女をこれ以上壊してしまうことよりも、壊れてゆく自身を許容した方がマシだったのだから。
 つくしを守るために、…司自身の妄執から彼女を守る、ただそれだけを念じて、彼女から断腸の思いで背を向けた自分を褒めてやりたい。
 …ふっ、伝えるべき言葉?
 いまさらそんな、あらたに伝えるべきものなどあるはずもない。
 彼にとって彼女に伝えるべき―――伝えたい言葉など、いつでもただ一つしかないのだから。
 今も昔もずっと。


 ただ、―――愛してる。
 愛してる、お前に今そばにいて欲しい。



 それだけ。



 愛してる、つくし。
 ずっと………お前だけを。
 まるで一つ覚えのその言葉を胸に大切に抱いて、もはや慣い性となった瞼の裏の彼女の残像へと、司はただ、ただ、いつまでも掻き口説き続けた。




*****




 ジリジリジリジリ!!
 今時レトロで耳障りな携帯の目覚まし音に、もぞもぞと動き出し、長い腕をさらに伸ばして、ベッドヘッドの上の携帯電話を探って手を彷徨わせる。
 顔はしっかり枕に伏せたまま、右手には携帯電話、反対側の手で肌けた掛布団を、類はちゃっかりと引き寄せていた。
 ジリ…もぞもぞ、ピッ、ピピ、ピッ。
 ほとんど鳴り出すのとほぼ同時、携帯電話の目覚ましのアラームを止め、裸の上半身ばかりか、頭から布団をスッポリと被って深く潜り込む。
 「………………zzzzz」
 バアアアアァァンッ!!
 「ちょっとぉ!!もうとっくに目覚まし鳴ってるでしょっ!?人がせっかくわざわざ、ウルサイ音を選んで設定してあげてるって言うのに、止めて寝直さないでよ!」
 毎日毎朝の恒例行事だ。
 一向に改善の兆しを見せない類も類だが、それくらいで起きないとわかっていて、なんとか携帯の目覚ましだけで起こそうとするつくしもたいがい諦めが悪い。
 いったいいつの時代の人間だというような行動様式で、手に持った鍋の底をドラがわりに、布団に潜っている類の頭と思しき膨らみのあたりを狙い、麺棒でガンガンと叩きまくる。
 ガンガンガンガンッ!
 「うううう……う、うるさ、い~」
 さすがに堪らず、団子虫を決め込んでいた類も、耳を抑えて布団から顔を覗かせた。
 「まったく、あんたって人は…ああああっ!」
 スヌーズ設定を切ろうと類の携帯に手を伸ばし、スヌーズどころかアラーム自体がとっくに切られていたことに気がついて、つくしが絶叫する。
 「ちょっとぉっ!何ちゃっかりスヌーズまで切っちゃってんのよっ!!このうすら寝坊けっ!!!」
 かなり耳にキーンときたらしい、寝ぼけ眼でベッドに座り込んでいる類の目は、朝っぱらからもうかなり虚ろだった。 
 「…牧野、お願い。もう少し、声量抑えて。近所迷惑だから」
 「うっ」
 それを言われるとツライ。
 が、しかし、ここは防音設備も完備の高級マンションだったと開き直って、仁王立ちに両手を腰にビシッ!
 「だったら、さっさと起きる!もう~!ただでさえいつもギリギリに起きてるんだから!!それに先週までNYになんかに行っちゃって、仕事溜まってるんでしょ?遠藤さんからは、いつもより30分早く当分迎えにくるって頼まれてるんだからね!早く支度しなさいっ!!」
 「あ………」
 ぷりぷり怒って部屋を出ていこうとしていたつくしが、類の声に振り返って…再び絶叫。
 「ぎゃああっ!」
 「………俺の新しいパンツってどこだっけ?」
 「なに、マッパで寝てるのよっ!?この露出狂!!」 



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