「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影②

愛してる、そばにいて531

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 歩き疲れては近くのベンチで一休みして、ただボウっと周囲の賑わいを眺めているだけでも楽しい。
 隣に座っている類も、それほど大げさに喜んでいる風ではないが、そうして彼女と過ごす休暇の一コマを楽しんでいるように見える。
 ついジッとその美しい横顔に見入ってしまっていた彼女の視線に気がついたのか、なに?というように小首を傾げるのに、つくしは小さく横に首を振って再び視線を前に戻し、柔らかな日差しに目を細めた。
 春のセントラルパークは本当に素晴らしく美しい。
 緑の若木や木漏れ日、色とりどりの花々、それら大自然の恵みだけではなく、そうした自然の下、微睡む人々や交流を楽しむ人々の幸せなオーラに満ちて、その場の空気に触れてるだけで癒される気がする。
 「あ…」
 「いい風だね」
 陽に温められて温んでいた頬を、柔らかな風がそよそよと撫でて吹きすぎてゆく。
 わずかに乱された彼女の髪のひと房が唇にかかったのを、類の長い指先が掬って、優しく耳へとかけてくれる。
 「…ありがと」
 「うん」
 「髪…切ろうかな」
 なんとなく思いついて、そんなことを口にしてみた。
 「どうして?」
 「ん…特に理由はないけど」
 肩下10cmほどの長さの自分の髪を一つまみして、枝毛を見つけ、つくしはムッと顔を顰めた。
 「長いと家事をするのにも邪魔だし、もうそんなに若い子じゃないんだから、短い方がサッパリしてて感じがいいかなって」
 「そう?俺はあんたの長い髪の髪型、けっこう好きだけど?」
 「……………」
 けっこう好き。
 類の世界は曖昧なモノに満ちていて、凄く好きだとか凄く嫌いだとかはほとんどなく、だいたいがけっこう好き、なんとなくイヤの二つに分類されている。
 だから彼が、『けっこう好き』だと言ってくれるなら、それは彼にとって好ましいものなのだと今の彼女は知っていた。
 「ふっ…顔赤いよ?」
 「……暑くなってきただけ」
 そんなつくしの言い訳なんて、とっくにバレているとわかっているくせに、それでも意地を張ってしまう彼女がおかしいと、類がクスクスとご機嫌に笑う。
 彼は本当によく笑うようになった。
 再会したばかりの頃もそんなことを思ったけれど、今の類は、いくつもの硬い殻を脱ぎ捨て大きく変わったように思う。
 …ううん。本当はこれが、この人の本当の姿なのかもしれない。
 今はまだ、その姿はつくしやごく親しい一部の人たちの前でしか開かれてはいなかったけれど、それでも柔らかな穏やかさに包まれ、彼自身もまた以前よりずっと幸せそうに見えた。
 「またジッと見てる」
 「…そうかな」
 「総二郎あたりなら、そんなに俺ってイイ男かって聞くところだと思うけど」
 「ふふ。類が言っても、許されるとは思うけどね」
 「笑い飛ばされるのがわかってるのに、そんなこと言うほど、俺はおマヌケじゃないよ」
 「え~」
 もちろん笑い飛ばすのも、彼らをそんな三枚目に貶めてしまえるのも、彼女以外には、他に誰もいないに違いなかった。
 「類もさ」
 「うん?」
 「ずいぶん髪が伸びたなあって」
 呼びかけてみたものの、彼を見ているのに、これといってこうと言える理由がないことに気がついて、咄嗟に間に合せの理由づけで誤魔化してしまう。
 けれど、口にしてみると、そんなに的外れなものでもなかった。
 彼女の言葉に、指先で自分の長く伸びた髪を摘んでいる類を、あらためてマジマジと眺めてみる。
 「もしかして、日本に帰国したばかりの頃くらい長いんじゃないの?」
 髭はないが。
 「まさか。もうちょっとは短いよ」
 「もうちょっとは…ね」
 言葉尻を捕らえて揶揄るつくしに、類が肩を竦める。
 「高校生ん時くらいじゃない?」
 「…………普段通勤する時には、オールバックにしてるから注意されないんだろうけど」
 「ぷっ、俺に誰が注意するの?」
 そう言われてみれば、たしかに自社の副社長に注意出来る人間もそうはいない。
 「遠藤さんとか?」
 「…ああ、まあ」
 日本に残してきた第一秘書を思い起こしたのだろう、類も苦笑している。
 「やっぱり注意されてるんだ?」
 「いや、髭は辞めてくれくらいかな。……この髪型嫌い?」
 「そういうわけじゃないけど」
 たしかに今の彼の髪型は、日本に帰国した頃の彼というよりは、高校生の時を彷彿とさせた。
 …肌色もすっかり戻っちゃってるし。
 類はつくしのように童顔ではないが、それでも今のようにスーツではないラフな格好をしていると、いまだに学生と間違われたり、わりに若く見られる方だ。
 …高校生の時くらいかぁ。
 少し前までのネオGIヘアというのだろうか。
 前髪以外、かなり短めに刈り込んでいた髪型もよく似合っていたが、つくし的にはむしろこちらの髪型の方が馴染みがある。
 しかし、それだけに―――、
 「高校生の時に戻ったみたいで落ち着かない?」
 「…あ」
 「見かけがどうだって、時が戻るわけじゃない。…タイムスリップできるわけじゃないよ」
 見透かされたことがいかにもバツが悪く、彼女を見守る類の優しい眼差しから視線を反らしてしまう。
 しかし、類はけっして彼女を追い詰めない。
 気が付けば、なんとはなしに生まれてしまっていた気不味い空気も、時間と共に自然に解けてゆく。
 類は何を言うわけでもなかった。
 ただそこにいるだけ。
 けれど、そのただそこにいるだけ、ということがいかにもつくしにとってはありがたく、得がたいことだったか。
 …ボーッとした人。
 いや、ボーッと自分が出来る人だと、隼斗から問われた類像を思い起こし、あらためて実感させられた。
 根掘り葉掘りと聞かれても、答えられないことがある。
 それと同じで、追い詰められれば追い詰められるだけ、自身のうちを探っても、それを言葉にすることがいかにも難しかった。
 「お弁当作って、外でランチにすれば良かったかなぁ」
 「ああ、うん、ホントだ」
 普段はアウトドアとは縁遠い類も、あまりに珍しいくらいの陽気の良さに、つくしと同じように思ったのか同意してくれる。
 …本当にそうだ。
 時間があればおそらくそう提案しただろうが、もう1時間もすれば空港に向かわなくてはならない。
 話の接穂にふと言ってみただけのことだったが、いざ口にしてみれば、いかにもそれが残念でもったいない気がした。
 「……まあでも、また今度来た時にでもそうすればいいよ」
 「類」
 「何度でも、また一緒に来よう?」
 「……うん」
 はにかんで微笑むつくしへと、類が一つ頷いて、
 「じゃ、そろそろ行こうか?あんまりここでのんびりしてると、ボーッとしすぎて、残りの滞在時間もあっという間に終わっちゃいそうだし?」
 「ふふ」
 類ならば、きっとそれでもかまわないのだろう。
 そして…つくしも。
 立ち上がろうとした類の腕を、つくしは咄嗟に掴んで引き止めた。
 「牧野?」
 「あのね、……あのね。私、空港で司に会ったの」



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