「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影②

愛してる、そばにいて527

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 明日でNY滞在最終日。
 朝一から午前中いっぱいを類は会社で過ごし、午後のいくばくかの時間をつくしと共にフリーな時間にあてて、そのまま日本に帰国することになっている。
 帰宅した類からスーツの上着を受け取り、ハンガーにかけている最中、スカートのポケットで鳴った携帯電話の着信音に、「あ…」とつくしが声を上げた。
 「なに?」
 気が付いた類に尋ねられる。
 携帯電話を確認したつくしの顔には、柔和な笑みが我知らず浮かんでいた。
 「……いい知らせだった?」
 「あ…うん。えっと、病院から」
 「うん?」
 「その、陽ちゃん…息子の手術、無事に終わって予後も順調だろうって」
 「そう、良かったね」
 つくしがこの継子をどれだけ気にしていて、その彼を見舞うためだけに渡米したことを知っている類はそれだけを言い、彼女の肩を祝福するようにポンポンと小さく叩いてくれた。
 多くは語らず、ただ包み込むようなさりげない優しさをくれる彼の気持ちが温かい。
 「…まだ、少し早いね」
 「ああ、そうだね。まだ、お夕飯の支度終わってないんだけど、お腹空いてる?もしなんだったら、夕食ができまでの間に合わせに、何かルームサービスでもとろうか?」
 日本での生活と同じような生活を送っているが、マンションとは違いホテルでのこと。
 もし類が空腹なようなら、とりあえずはルームサービスでも注文するかと尋ねる。
 しかし、時計を確認して、類が首を横に振った。
 「いいよ、そこまで腹減ってない。それよりも、せっかく海外まで来てるんだし、そこまでキッチリしなくてももっと気楽にやりな?どうせあんたのことだから、俺がいない間、ロクに観光もしてないんでしょ?」
 「あ~」
 類からは仕事で来たわけではないのだから、彼がいない日中、一人で観光でもしているようにと言い置かれていたが、結局つくしはほとんど外出しなかった。
 かつて住んでいた場所だから、目新しくないということではない。
 むしろ司と暮らしていた頃は、常にSPがついての外出で、好きな場所に行く自由などなく、たまに外出することが許されても、ほとんど屋敷と目的地の往復のみだったのだ。
 もちろんその目的地だとて、観光などという私的なことではなく、あくまでも道明寺家から課せられた義務を果たす為だけのもの。
 司もまた、当時は彼女を実家や周囲に認めさせることで精一杯で、とてもではないが彼女の気晴らしに付き合うほどの時間も精神的余裕もなかった。
 「特に出かけたいところがあるわけでもなかったし」
 …一人で行きたいところなんてない。
 どこにいても、一緒にいてくれる人がいなければ、異邦人の悲哀と孤独を強く感じるのみで、楽しむことなどできそうにもなかったから。
 「まだけっこう時間早いし、たまにはデートらしいことしよっか?」
 「え~」
 先日の自由の女神観光に引き続き、類の意外な言葉に驚かされてしまう。
 「この間のデートの後も、結局ルームサービスで済ませちゃったし、ここのところは牧野に夕食も作らせちゃってるから、まだここのレストランで食事してないよね?夜景を見ながら、三ツ星レストランのシェフの味を楽しむとかどう?」
 「はは…夜景を楽しむって、最上階のここから見る眺めの方がいいし、ルームサービスでも同じ味を楽しめるじゃない」
 実はデートとか言いながらも、出かけるのが億劫な類の魂胆が読めた。
 「まあ、それはそうだけど、たまには気分変えるのもいいでしょ?食事の後、バーで少し飲んでもいいし、ダメ?」
 「ん~」
 類らしくない誘いだが、たまにはそういうのも悪くないかもしれない。
 思えば学生時代にしても、道明寺家の若夫人時代にしても、そうした経験がつくしにはほとんどなかった。
 もちろん、高級レストランでのディナーはつくしにとっても珍しいことではなかったけれど、それらはあくまでも接待が主であり、個人的な楽しみのためではなかったからだ。
 それらの理由から、つくしのNY在住時代はロクにどこにも出かけることができず、屋敷に引きこもりがちだった。
 また司にしても、彼の背景のことばかりではなく、彼自身の性質として、立場上どうしても必要なパーティや招待など、どうしてもやむ得ない場合以外、そもそも彼女を酒の席に引き出したり、あえて人目に触れさせることを好まなかったので、つくしは隠された妻でなくてもずいぶん箱入り的な人生だったのだ。
 …あいつ、そう言えばここにいる時が一番酷かったな。
 もちろんこうしてその過去を思い出して、司の心情もある程度察すれば、彼が当時それだけ不安で、いつ彼女がすべてを思い出して、自分のもとから逃げ出してしまうのではないかと、常に戦々恐々としていたせいもあるのだと思い至れたが。
 「どうする?」
 一人で出かけるの気分ではなかっただけで、つくしにしても、もともと出不精なわけではなかった。
 「行く?」
 「…行こうかな」
 「じゃ、決まり。…俺は日本から来たメールとかチェックしてるから、その間に支度しておいで?」
 「あ、はい」
 さっさと背を向ける類を見送って、慌ててつくしも支度にとりかかり出す。
 そうと決まれば男性とは違い、つくしにはそれなりの身支度というものがある。
 高級レストランでのディナーとは言っても、公式の立場での接待か何かではなくあくまでもプライベートなのだから、それほど格式ばった恰好をする必要はないが、それでもデートなのだ。
 それなりにオシャレには気を使いたい。
 …類に恥をかかせちゃうわけにはいかないものね。
 ただでさえ連れの類は、並みの美女さえも霞ませる絶世の美男なのだ。
 サクサクと着替えを済ませ、手早くいつもは薄化粧の顔に少し濃い目の化粧を施してゆく。
 「ま、私がどれだけオシャレしても、元が元だもんね、大して変わんないけど」
 鏡台の鏡を覗き込んで、落ち着いたワインレッドのルージュを唇に刷き、仕上げにグロスをのせる。
 久しぶりに華やいだ装いに、なんだかウキウキしている自分を発見した。
 「う~、なんかちょっとドキドキしてるかも」
 …一緒に暮らしている男と出かけるのに?
 それどころか、一緒のベッドで寝起きしている相手でもある。
 それでもやはり自分はまだ、浮ついた気持ちもトキメキも残っている‘女’なのだと再認識して、苦笑するとともに嬉しさもあった。
 夫だった隼斗とデートした時には感じなかった喜び。
 それは彼とは夫婦という関係だったからなのか、それとも相手が初恋の類だからなのか。
 あるいは―――。
 最後に、昨年の誕生日に類から贈られたネックレスを身に着け、そっとその煌めきにつくしは指先を這わせた。



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