「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影②

愛してる、そばにいて526

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 出会いは一期一会。
 昔、習った茶道の精神だったか。
 …西門さんは、また別の意味で使ってたみたいだけどね。
 困った茶道の師匠の色悪めいた美貌を思い出し、一人苦笑する。
 タマ、そして、陽太―――。
 死に近いところにいる人たちが教えてくれたこと。
 常に悔いのないように、人との出会いが一期一会だからこそ、人との関わりこそが奇跡なのだと大切にしたい。
 今、後にしたばかりの病院を振り返って、つくしはもう一度だけ会釈をして歩き出す。
 「……あ」
 道路に路駐していた高級車から、見慣れた美貌の男が降り立つ。
 慌てて駆け寄ったつくしへと、類が柔らかな笑みを浮かべ出迎えてくれた。
 ふわりと心を温めてくれる優しさ。
 気が付けば、つくしもまた彼へと微笑みかけていた。
 「おかえり」
 「…ただいまって、なんでまだこんなところにいるの?」
 いったいいつからここにいたのか。
 走り去ってゆく車を、たしかに見送ったはずなのに。
 「予定変更があってさ」
 「え?そうなんだ?」
 「とりあえず、乗って?」
 「あ、うん」
 差し伸べられた手に手を乗せ、優雅な仕草でエスコートしてくれる類の手に導かれて、つくしも車へと乗り込んだ。




*****




 シュ、シュとゴボウのささがきの山が入ったボールを手に取り、ざっとザルに上げ、ス――ッと流しに消えてゆく茶色い水を眺めて小首を傾げる。
 「この茶色い水って、アクじゃなくってポリフェノールだとか聞いたことあるけど」
 テレビで得た豆知識。
 けれど、そうは言っても、やはりこれだけ濃い色の土色を見ていると、とても体に良いものだとは思えない。
 NY滞在4日目。
 到着した日と翌日と、二日連続おサボリを決め込んだ類だったが、さすがに3日目ともなると、日本に残された彼の第一秘書の遠藤によって派遣された現地の秘書によって、いやいや会社に引きずられて行った。
 『ちぇ、これじゃあ、遠藤だけじゃなく三浦も残してきた意味ないじゃん』
 そんなボヤきを残して。
 三浦は、遠藤に次ぐ、類の第2秘書だ。
 その第2秘書まで置いて来た内実には呆れるしかない。
 …やっぱり確信犯だったってわけね。
 必要最低限やらなければならないことはこなしているようだが、間違っても仕事熱心とは言えない類を日頃操縦している遠藤の苦労を思う。
 そんなやる気がない上司を擁していても、仕事が回っているのは、そんな優秀な秘書軍団の功績とともに、なんだかんだ言って天才肌の類の基礎能力の高さにあるのだろう。
 一を聞き、十を聞く類の能力は、凡人の自覚のあるつくしにしてみれば舌を巻くことがたびたびで、これでさらに彼に勤勉さが加わっていれば完璧なのに、と彼を取り巻く人々の為に溜息。
 結局、陽太の入院する病院に迎えに来た類の言い草―――予定変更は、
 『花沢副社長の急な体調不良で、NY支社の視察が明日に繰り上げになったんだ』
 花沢副社長というのは、当然、類自身のことで、彼にしてみれば、
 『しゃかりきに日本での仕事を片付けてきて、こっちでまでこき使われたくないよ』
ということらしかったが、しかし、いくら鈍いつくしにしても、彼がどうして午後の予定を変更までして、病院の前に残って彼女を待っていてくれたのかくらいわからないはずもない。
 …嬉しかった。
 哀しかったり、辛い再会ではなかったけれど、それでも一頃は家族と呼びあって、ともに生きていた人々と違う人生を生きている今に、ホロ苦い寂寥を感じていないわけではなかったから。
 「これでよし!」
 炒めたゴボウと人参をお重に詰めて、一人でニッコリ。
 よもやNYに来てまで弁当を作ることになるとは思わなかったが、日本でさえ好き嫌いの多い類のこと、アメリカンスタイルの昼食など取りたくないとダダを捏ねだした。
 …もうなんでも食べられるとか言ってたくせに。
 あっという間にワガママし放題。
 それでも会食ではちゃんとそれなりに残さず食べているそうだから、ただつくしに甘えたいだけなのかもしれない。
 いい年をした大人のワガママ。
 しかし、そんな彼のワガママが、迷惑をかけるばかりで少しも彼の役に立つことのできない自分の気持ちを、わずかなりとも軽くしてくれている気がした。
 あるいは、いやたぶん、そうしたことさえ彼の気遣いの一つなのかもしれない。
 …いやいや、単純に類の場合はやりたいことやってるだけだって。
 そんなふうにも思うが、つい彼を買い被ってしまう自分がおかしい。
 現在、二人が宿泊しているホテルのスウィート・ルームは、居間ばかりかなぜかちょっとしたキッチンまで要したホームパーティを開けるタイプの部屋で、どうやら類は初めから、NYでもそれなりに彼女に料理を作らせるつもりだったらしい。
 もちろん、日本にいる時のように掃除や洗濯まで求められてはいないが、おそらく、まったくのフリーにさせられたとしても、一人で過ごさなければならないつくしへのそれが類なりの気遣いだった。
 『…あんたは貧乏性だからね』
 そんな苦笑をして、嫌いなものはつめないでくれと言う男の顔を思い浮かべ、つくしは小さく微笑む。
 「さ、そろそろ寝坊助を起こしてこないと」
 類が出勤ギリギリまで寝ているのは、日本でもアメリカでも変わらないように、彼女の朝一番の大仕事も、そんな彼を叩き起こすことなのは変わりがなかった。



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