「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影②

愛してる、そばにいて525

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 ひとしきり互いの近況を話し合い、そろそろ仕事の時間だからという隼斗を見送って、つくしは巨大な病棟の白い建物を見上げた。
 「…どんな人かぁ」
 隼斗に問いかけられた問いをふいに思い出し、心の中であらためて適当な言葉を探し出す。
 …ボーッとした人。
 すぐに出てきた自分のあまりな類への評価に、我知らず一人噴き出してしまった。
 天下の花沢類にその評価はないだろう。
 しかし、何度考え直しても、それ以上に彼を形容するのにしっくりくる言葉がなかった。
 …ボーッとしてるっていうか、私がボーッとできるんだよね、きっと。
 安らぐ、それが一番ぴったりとくる言葉か。
 隼斗もまたそうした人を、ここアメリカで見つけていた。
 日系人のボランティアだというその女性とは、まだ実際には交際にまでは至っていないらしい。
 かといって、まるっきり片思いという感じではないのを、彼の言葉の端々からつくしも汲み取っていた。
 今度こそ、隼斗には幸せになって欲しい。
 自分の代わりに、というのではないが、それでも彼は十分優しく愛情に溢れた人で、愛されるに値する素晴らしい男性だったから。
 『……こっちで、息子に会っていかないのか?』
 隼斗からは、そんなことも聞かれた。
 当然、彼の言う息子とは、陽太のことではなく戒のこと。
 『今、ニューヨークにいないらしいから…』
 言葉を濁す彼女のその様子だけで、察したのだろう。
 …逢えるはずがない。
 望んでいないはずもなかったが、しかし、その望みが果たされることもないことを、つくしも十分に理解し諦めてもいた。
 彼ら…戒にも司にも立場があるのだ。
 同じNYに住んではいても、司のことはともかくとして、戒の動向については隼斗の耳にも入ったことがないらしかった。
 考えてみなくても当たり前のことではある。
 有名セレブの御曹司とはいえ、戒は芸能人ではなかったし、いまだローティーンにもならない未成年だ。
 しかし、隼斗は戒には、良くない噂もあると言っていた。
 どこからどこまでが真実か、単なるやっかみかも知れない信憑性のない噂。
 ―――道明寺の息子がイジメを先導し、親の威勢を傘に来て何人もの子供たちを学校から放校処分にしている。
 かつての司のように。
 …戒。
 「お母さん!」
 ビクッと肩が揺れた。
 どうやらいつのまにか、陽太の病室の前まで来ていたらしい。
 ちょうどつくしを探してか、病室から顔を覗かせていた陽太が彼女を見つけてニッコリと笑って、片手を振っていた。
 「こっちこっち!」




*****




 「やっぱりお母さん、明後日、病院に来てくれないの?」
 「うん、ごめんね、陽ちゃん」
 めったにワガママを言わない陽太がつくしに会いたいと言い、一度断ったことを蒸し返すのは、やはり子供ながらに彼にも不安があるからなのだろう。
 手術当日の付き添い―――とはいえ、病室で待つだけだが―――のことは、隼斗からも誘われていた。
 普通、本当の母親なら何を置いても付き添うべきだろう。
 隼斗や陽太にも‘母’だと言い切ったくらいだ。
 つくしにしてもそうしたかった。
 しかし、当日、隼斗の両親ばかりか、陽太の亡くなった母・美沙の母親が渡米して付き添うことになっていた。
 まだこれが隼斗と離婚していなければ、たとえ継母といえど彼女が遠慮をするいわれもなかっただろうが、さすがに現在なんの繋がりもない身の上だ。
 憚りもある。
 いくら金銭面で援助をしているにしても、それを前面に出して権利を主張するつもりはなかった。
 さっきまで楽しそうに雑談していたのに、俯いたまま黙り込んでしまった陽太の様子に、さらりと髪を撫でてやって、怪訝に顔を覗き込む。
 「どうしたの?疲れちゃった?少し眠る?」
 そのまま手を離して、陽太が横になるのを介助してやろうと立ち上がりかけたつくしの手を、逆に陽太が掴んで引き止め握り締めた。
 「陽ちゃん?」
 ぎゅうっと彼女の手を握り締める陽太の小さな手は、小刻みに震えていた。
 「……ボク、死んじゃわないよね?」
 衝撃的な問いかけに、つくしが動きを止める。
 「ボク、怖いんだ。……もし、手術して、そのまま目が覚めなかったら。もし、このまま二度と」
 つくしの手ごと握り締めた両手を目元へと持ってゆく陽太の動作に、ハッとつくしが我に返って怒鳴りつける。
 「何言ってるのよ!そんなわけないでしょっ!?」
 「…お母さん」
 「絶対に、そんなことない」
 抱きしめた小さな体は手と同様震えていた。
 小さな痩せた体に、たくさんの哀しみと苦しみ…恐怖と不安を抱え、一人堪えてきたのだと、つくしまでもが切ない気持ちに涙が滲んだ。
 「大丈夫だから、心配しないで?」
 「……………」 
 「先生もおっしゃってたでしょ?とても安全で、陽ちゃんの負担も少ない手術だから、ドーンと構えてなさいって、聞いたよね?」
 「………うん」
 抱きしめたつくしの胸元が、しっとりと涙に濡れる。
 シクシクと泣く少年の肩を抱き、髪を撫で、少しでも彼の力と勇気になるようにと祈る。
 大人になれば、大切な人たちを守れるのだと思っていた。
 もっと大きな力を持てるのだと。
 しかし、実際には自分のことでさえいつもいっぱいいっぱいで、いつでも無力を感じずにはいられなかった。
 けれど、せめて少しでも愛する人たちの心の慰めになりたい、大切に思っている気持ちを伝えて支えになりたいと願う。
 ひとしきり泣き咽いで気が済んだのか、スンと鼻を鳴らして顔を上げた陽太の顔は、涙に濡れてはいたが、それでも先程よりはいくぶんか元気になったようで、照れ臭そうな顔で小さく笑った。
 「ごめんね…お母さん。ボク、弱虫で」
 「ううん、陽ちゃんはいつも聞き分けが良すぎるくらいだから、こんな時くらい弱音を吐いたって全然いいんだよ?たまにはガス抜きしなきゃ」
 「お母さん」
 「それに、痛い時には痛い、苦しい時には苦しい、怖い時には怖いって、ちゃんと伝えて欲しい。陽ちゃんと一緒に頑張りたいから。お父さんもきっとそう思ってるよ?」
 「………うん」
 小さく頷く顔の涙を、懐から取り出したハンカチで優しく拭ってやり、柔らかく抱きしめなおす。
 「へへへ……お母さん、温かい」
 「そう?」
 「うん」
 照れ臭そうに笑う少年の顔に、つくしの顔にも自然に小さな笑みが浮んだ。
 「……そうだよね。ボク、まだ戒君にも会えてないんだもん。まだまだ死んじゃったり出来るわけがないよね」



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