「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影②

愛してる、そばにいて524

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 素直に頭を下げる隼斗をみやって、思わず固まってしまっていたつくしがハッと我に返る。
 「やだ、頭なんか下げないで!隼斗さんっ」
 隼斗はけっしてむやみにプライドの高い人間ではなかったが、それでも大の男がそう簡単に頭を下げられるものではないことを、つくしも理解している。
 陽太の治療費を工面してくれと頼んだ時とは事情が違うのだ。
 「ホント、やめて。陽ちゃんや……隼斗さんが赦してくれるなら、私は今でも陽ちゃんの母親だと思ってるし、できるだけのことはしてあげたいと思っているの」
 本心だ。
 失われた息子の代わりに…そう隼斗にはかつて言われてしまったが、それだけではない愛情と絆が確かにあの優しい少年との間にはある。
 赦せることはできるだけ赦してあげたいと語った、あの慈愛に満ちた少年への尊敬と感謝と共に。
 「顔を上げて…お願い」
 再三のつくしからの懇願に、ようやく隼斗が頭を上げた。
 「本当は…本当は今日、俺は同席しない方がいいだろうとは思った」 
 「え?」
 困ったような隼斗の顔が、彼もまた気後れしていたのだとつくしへと悟らせる。
 「でも、どうしても、君に礼と…謝罪をしたかった」
 「隼斗さん」
 恨みに思った一瞬が確かになかったとは言えなかったけれど、それでも今のつくしには彼に対して感謝と…そして、彼と同様詫びる思いしかなかった。
 だから、
 「いいの、お互い様」
 「…つくし」
 「たぶん、あなたも悪かったし、私も悪かったの」
 人と人との関わりに、どちらかが絶対的に悪く、またどちらかに罪があるとは言えないものなのだ。
 おそらく、どちらも悪かったし、どちらも悪くはなかったのだろう。
 巡り合わせ…そうとしかいいようのない物事もある。
 隼斗がかつて彼女へと糾弾した言葉は、ある意味、的を得たもので、同時に自身の罪を隠すための単なる言い訳でもあった。
 人は間違い惑う生きものであるからこそ、他人を求め、恋い慕い、愛おしくも感じるのだ。
 …完璧な人なんていやしない。
 「私はあなたや陽ちゃんに出会えて、家族になれて、本当に幸せだったから」
 もう二度とは戻らない日々。
 そして、もう戻ろうとは思わないけれど。
 「…なんか、変わったな」
 「え?」
 「君が」
 「そう、かな」
 だいぶ以前、総二郎にも言われた言葉。
 しかし、あの時とは違う感慨で、つくしはその言葉を受け止める。
 かつては、何を言っているんだとしか思わなかったけれど。
 「嬉しい。…それって、いい意味なんでしょ?」
 「ああ、もちろん」
 二人なんとなく思いついて、歩き出す。
 思い起こせば、かつて家族として暮らした日々ではなかったことだ。
 隼斗もつくしも仕事が忙しかったし、たまの休みの日にも、日常に追われて散歩どころではなかった。
 一緒に出かけることがあっても、そこには常に陽太がいて、本当に自分たちは‘夫婦’というよりは‘家族’だったんだとあらためて思う。
 しかし、それもまた一つの愛のカタチだ。
 10人いれば10人、100人いれば100人違うように、家族もまた、人の数だけ家族の数だけ様々なカタチがある。
 「こんなことを言ったら失礼かもしれないけど…」
 「………」
 「なんか、大人になったよな」
 「……そうかな?」
 言葉を探す隼斗の言葉に、ジッと耳を傾ける。
 聞けるのならば、どう変わったのか聞きたかった。
 「あの頃の君は、バリバリ仕事もして、地に足をつけてちゃんと一人で生きていたけど、…それでもどこか頼りな気で、心細そうだった」
 理解されていた。
 理解されようとも努力していなかったのに。
 ただ温もりを求めて、黙ってそこいることだけを求めていた。
 横顔を見つめていたつくしへと振り返って、隼斗が小さく照れ臭そうに微笑む。
 「そんな君を守ってやりたかったんだ」
 「……うん」
 隼斗ならばきっとそうだろう。
 「今、誰か君の傍にいるのか?」
 隼斗の問いかけに、つくしは自然に頷いていた。
 「うん、いるよ」
 「そうか」
 脳裏に浮かぶ面影は、薄茶色の髪とビー玉みたいな目の子供じみた男。
 飄々とした顔で、突拍子もないことをしでかして、けれど誰よりも、彼女の心に寄り添ってくれる繊細な気遣いを持った人。
 「どんな人……あ、いや、いい、言わなくて」
 隼斗が慌てて訂正するのに、つくしが首を傾げる。
 「良かったって思ってる、本当に」
 「…うん?」
 「けど、少し妬けるからさ」
 複雑な顔で拗ねたように言う隼斗の言葉に、つくしも小さく笑ってしまう。
 「隼斗さんは?隼斗さんの好きな人ってどんな人なの?」
 「え?」
 「ほら、さっき」
 自分にお鉢が回ってきて、急に隼斗が焦りだす。
 …なんだか可笑しい。
 先ほどと同じ感慨を抱き、つくしは微笑ましくそんな隼斗を見つめた。
 「その…すまない」
 「なんで謝るの?」
 「君に陽太の治療費をおんぶに抱っこの今の状況で、浮かれてる場合じゃないって、もちろんわかっているんだ。陽太の容態も完全に落ち着いたわけじゃないし……」
 生真面目な隼斗らしい恐縮に、首を横に振る。
 「陽ちゃんは私の息子でもあるの。だから、わたしが陽ちゃんにできるかぎりのことをするのは、当然のことじゃない。さっきもそう言ったわよね?…それとも違うの?」
 「つくし」
 真剣なつくしの眼差しと、想いを受け取ってくれたのだろう、だがそれでも、隼斗は彼女への小さな会釈を返して同意する。
 「もちろんだよ。君があいつを息子だと思ってくれる限り、あいつは君の息子であり、君はあいつの大事な母親だ」
 「うん」



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