「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影②

愛してる、そばにいて520

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 人の顔を内側から見た光景とでも言うべきだろうか、凹凸が反転状態になっている。
 「あれって女神様の目の裏だよね?」 
 「そうだね。すげぇシュールだけど」
 「普通このアングルから見ることってありえないものね」
 汗だくになって何度となく挫折しかけたが、これを見るだけでも一見の価値がある。
 目や鼻、口の裏側を物珍しく眺めながら、さらに上へと登り、ついには王冠部分のスペースへ。
 今度は、人型の像の頭の内側だとは、とても思えなかった。
 「ふわぁ、なんか凄い」
 ぐるっと頭部の円周は小さな窓になっていて、外の景色を一望して覗けるようになっている。
 あまり広くはないから長々といられるわけではないし、景色を眺めるだけならば、もっと高層ビルの展望台の方が高く遠くまで見れただろう。
 けれど、つくしは十分に満足していた。
 隣に並んだ類が、つくしと同じ窓から外を眺める。
 青い空と青い海、そして地平線で交わる対岸のビル群が一つの絵のように、つくしの目に焼き付いて映る。
 何年もNYにいて、これまで見ることがなかった景観。
 余裕がなかった。
 時間的にも、気持ち的にも。
 少女時代の…病んでしまう以前の彼女だったならば、きっと今のように観光をしてみたかったことだろう。
 けれど、あの頃の彼女は、一足飛びに大人になるしかなかったから。
 「……どう?来てよかった?」 
 …来てよかった。
 大変だったけれど。
 「うん。ありがとう、類」




******




 やはり登りに比べれば下りは遥かに楽で、おそらく半分にも満たないくらいの所要時間で降りられたのではないだろうか。
 「さすがに、今日このままセントラルパークまで回るのは無理そうだけど、どうする?ここの美術館を見たりもできるけど?」
 「うん、セントラルパークの方は無理しなくていいよ。美術館も…今回はいいかな」
 日本にいる家族や友人たちのために、土産屋には寄ってみたいが、美術館でさらに自由の女神についての資料を観覧するほど女神フリークなわけでもない。
 「ねぇ、フェリーに乗るまでもう少し時間があるなら、ちょっとだけでもそこら辺をブラブラしない?」
 もしかしたら、もう二度と訪れることはないかもしれない。
 かつて司の妻だった時代だったのならばともかく、それだけ今の彼女にとって、アメリカは遠い異国だった。
 かつて住んでいたマンハッタンの高層ビルの町並みや、道明寺邸のあった横に広大な屋敷とはまるで違うこの小さな島で、つくしはただの異邦人としての自分を楽しみたかったのだ。
 誰も彼女を注目することなく、誰も彼女を知らない。
 時折類に気がついて、彼に見惚れる人間もいたが、それでもこの非日常を恋人や家族、友人たちと過ごすために来た人達は、互いに夢中で誰もそう長く彼らを気にする人間はいなかった。
 「時間は…まあ、特に次の予定があるわけじゃないから、どうとでもなるけどね。ここには自由の女神と美術館以外、特に何があるわけでもないよ?」
 「ダメかな?」
 「いいよ。牧野がそうしたいなら…行こ?」
 先に立って歩き出そうとした類の手を、逆につくしが引いて立ち止まらせる。
 「あ、ちょっと待って」
 つくしが目を煌めかせて見ている方向へと、類も顔を向け、小さく苦笑した。




*****




 島内の至るところに設置されているベンチに二人並んで座る。
 夏場や、陽気のいい季節には人でごった返していて、そのベンチに座ることさえできないことがあるらしいが、天気がいいとは言えまだまだ寒い季節。
 午後もだいぶ過ぎて、そろそろ日も落ちようとしている島内はかなり寒く、寒空の下、屋外でアイスクリームを食べているもの好きもそうはいない。
 「フェリーでさんざん、寒い寒いってボヤいてなかったっけ?」
 「ん~、こういうのは別腹?ちょっと違うか。でもさ、なんでだか冬だとよけいに、アイスって食べたくならない?」
 「…ならない」
 さすがに類が手に持っているのはアイスクリームではなく、近くの売店で購入したホットドリンクだ。
 「それにあんたの場合、別に冬じゃなくても、夏にだって食べるんだろ?」
 「もちろんよ!」
 類の顔は呆れているようでもあり、けれど、親指を立てて戯けるつくしを見る彼の目は柔らかく優しい。
 「結局…今日はここだけで終わっちゃったね」
 「…まあ、仕方ないわよ。どっかの旅行ツアーに組み込まれてるとかならともかく、そこまでしゃかりきに観光するっていうのもねぇ」
 それ以前に、元々が観光目的の旅行ではなかったのだ。
 類の予想外の同伴と申し出で、なぜかいつの間にかそんなようになってしまっているというだけのことで。
 「明日、行くんでしょ?」
 「…………」
 「病院」
 正直、つくしの中でもまだ迷いがないわけではない。
 白血病の治療のために渡米した陽太は、幸運にも治験の治療法がマッチして白血病自体は良好な状態を保っていた。
 徐々に寛解にも向かい、現在は快癒を見据えた治療へと移行し順調。
 しかし、そんな折に見つかった胃への癌細胞の転移。
 幸いまだそれほどステージの進んでいない状態だったが、進行の早い子供ということもあって、早期に内視鏡手術を行うことになったのだが…。
 陽太とは渡米後もメールでの交流が続いていて、その手術の日程やある程度の詳細もあらかじめ聞いていた。
 成功率の高い手術だ。
 しかし珍しく陽太が手術を前にして、ワガママ―――つくしに逢いたいと言ってきたのだ。
 「…どうしよう」
 もちろん陽太の父親の隼斗にも連絡を取り、面会を申し込んで承諾を得てはいる。
 彼との離婚は泥沼ではなかった。
 経緯はともかく、互いに納得の上で離婚できたとつくしも思っている。
 けれど、陽太と会えばどうしても隼斗とも会わないわけにはいかないだろう。
 離婚して一年余り…、かつての夫との再会に、つくしは二の足を踏んでいた。



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