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「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影②

愛してる、そばにいて517

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 「…さむっ」
 ロウアー・マンハッタンのビル群を眺めながら、ハドソン側を渡るフェリーの上から遠く眺める。
 わりに重装備で来たはずなのに、東京の寒さよりなお寒い気がして、つくしは手袋を外した手にはあぁと息を吐きかけた。
 「そんなに寒い?」
 「すっごい寒い」
 吐き出した息は、あっという間に白い結晶になってしまう。
 「まあ、だいぶ暖かくなってるとは言え、今日なんか氷点下超えてるだろうからね。特にこの時期なんかに、フェリー乗るのもたいがいもの好きだと思うし」
 「……もの好きって、自分が乗ろうって言ったんでしょ?」
 あんまりな言い草に、つくしが手を擦り合わせながらジト目で類の顔を見上げる。
 「だって自由の女神見に行こうって行ったじゃない?」
 「……そりゃそうだけどさぁ。まさか、島に渡ってまで見に行くつもりだとは」
 つくしにしてみれば、フェリー乗り場から遠目にでも見られれば…くらいな気持ちだったというのに、この突拍子もない宇宙人は、どうせなら王冠にも登ろうとか言い出しての今現在。
 「だって、俺、フェリー乗り場からなら、見るのも別に珍しくないし」
 「は?観光したことないって言ってなかったっけ?」
 「観光じゃないよ。あそこは俺にとって、英徳の非常階段みたいなもんかな。NYでボウッとするのが好きでさ。NYに来るとよく行くんだ」
 「へぇ」
 つくしにとっても、あの馴染まぬ世界で高等部の非常階段は唯一の憩いの場所だったから、類にとっての…波止場がどういう意味合いを持っているのかがよくわかった。
 …私とは全然違う境遇の人だったっていうのにね。
 居場所がないどころか、彼は誰よりもあの場所で光り輝いて、憧れられる立場の人間だったのだ…司や総二郎たちと同様に。
 「こういう時の為に買ったんだろうから、これ食べちゃいなよ?」
 手に持ったチープな紙袋を掲げて、おいでおいで、と手を差し伸べられる。
 さすがに露天のデッキでは類も寒すぎると思ったのか、階下のキャビンへと導かれた。
 もの好きなどと類は言っていたが、寒くてもそれなりにフェリーは混雑していた。
 「けっこう列に並んだものね」
 「今日はいい天気だからね」
 ホテルで一眠りする前、つくしと類が空港に到着したばかりの午前中は薄曇りに覆われていた空も、今やすっかり晴れて雲一つない晴天だ。
 海上のせいもあるのだろう。
 空気も澄んで、マンハッタンの景色がこの上なく美しく見える。
 …下に降りるのは、ちょっともったいない気もするけど。
 そうは思いつつ、さすがにつくしも寒すぎてこれ以上、屋上にいるのは厳しい。
 「あ~あ、せっかく公園で食べようと思って買ったのにな」
 そうボヤいて、座った膝の上に乗せられた紙袋から伝わる温もりに、自然と柔らかな笑みが浮かんだ。
 紙袋の中身はここに来る途中、通りかかった中華街でわざわざ立ち寄って購入した中華まんとホットティ。
 「まさかNYで中華まんが売ってるとはね」
 「チャイナタウン行ったことないんだ?」
 「ん…実は日本でも中華街とか行ったことないかも。行ってみたかったけどね」
 中学生の時はさすがにそれほど遠方ではないとは言え、都内ではない横浜まで友達と出ることは親に許されていなかったし、家族でも行ったことがなかった。
 高校に入ってからは…、
 …そんな余裕なかったしね。
 経済的な理由が主だったが、一緒に遊びに行く友人がいなかったこともある。
 チラチラと類を見る女の子たちの視線を感じつつ、それでも少女の頃のようには、そうしたことが過剰に気になることはなかった。
 ちょうどいいくらいに少し冷めた中華まんの温かさに顔を緩め、ガブリと豪快に齧り付く。
 「ん~温かぁい、美味しいぃ~」
 手足をバタバタさせ、子供みたいに無邪気に喜んでいる彼女の様子に、類の顔にも自然に優しい笑みが浮かぶ。
 「幸せ~」
 「ふ、それは良かった」
 「類は食べないの?」
 お茶の缶だけを残し、手渡した中華まんを、再びつくしの膝上の袋に戻す類の手元を眺めて首を傾げる。
 「まだ、いいかな。食べたかったら、それもあげる」
 「ええ~、いらないけど」
 いくらつくしが食いしん坊で、ランチからそれなりの時間が経っているとはいえ、ガッツリ食事もしてきたのだ。
 とてもではないが、手のひらより大きな饅頭を二つも食べられるはずがない。
 「ていうかさ。なんかエビとかソーセージとか、ゆで卵まで入ってる変わったの買ってたでしょ?」
 「肉が苦手だからね」
 「なんでも食べれるようになった…とか言ってたくせに、結局また偏食なんだから」
 「必要があれば食べるよ」
 発展途上国のドサ回りでなんでも食べれるようになったと言っていた類も、日本に帰ってきたことでワガママ坊ちゃんの本領発揮か、再び退化の一途を辿っている。
 「代わりのもので十分必要な栄養素とれるんだから、別に頑張ってまで無理する必要ないじゃん?」
 「…まあ、そりゃそうだけど」
 いくら子供じみてはいても、類は本当に子供なわけではないのだから、偏食くらいでとやかくいうこともないとはつくしもわかっている。
 …しょうがないなぁ。
 直接吹き付ける海風が遮られ、差し込んで来た陽光のおかげか、身を切るようだった寒さも緩和されてきていた。
 「ふわぁ……」
 「ん~、おいしい~。こういうのはさ、味だけじゃないんだよね」



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