「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影②

愛してる、そばにいて507

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 『本当に悪かったと思うわ。まさか、あんたとの電話のやりとりを、咲に聞かれていたとは思わなくって」
 いつもはハツラツとして張りのある椿の声音が、シュンと意気消沈していた。
 「いや、気にすんな……どちらにせよ、いつかはバレることだったからな」
 それでも、まだずっと先のこと―――戒がもっと年齢を重ね、ある程度さまざまな事情を自分とは別のことだと切り離せるようになるくらいに、成長してから知らせるつもりではあった。
 「で?」
 『…しばらくはかなり興奮していてね。久しぶりに会って、ずいぶん大人びた子になったな、って思ったところだったから、逆に驚いたっていうか…安心したわ』
 「安心?」
 電話の向こうの姉の意外な言葉に、テーブルに伸ばしかけた手を止め、司が聞き返す。
 テーブルの上の琥珀色の液体は、けっして彼の憂さを晴らしてはくれないが、それでも飲まずにはいられないのが彼の常だ。
 『あんたのように荒れるのも困ったもんだけど、あの子のように内側に閉じ込めてしまうのも、それはそれで心配なものだもの』
 「………………」
 我慢して我慢して…そして、ある時一気に爆発をする、そんな未来が手に取るように彼にも見える。
 かつて、そうして危うく‘彼女’を失うところだったのだから。
 …あいつはつくしの子だ。
 誰よりも優しく、他人を傷つけることよりも、自身を傷つけ、血だらけになりながらも懸命に前を見つめ、それでも捻じ曲がることなく真っ直ぐに立つことのできる人間。
 だが、人間である以上、誰しにも限界がある。
 その時に戒が傷つけるのが、他人ではなく、自分自身であろうことは司にはわかっていた。 
 …そうさせるわけにはいかねぇ。
 『つくしちゃんの居場所を教えてくれの一点張りで、私もこれ以上は隠しておけなかったから、聞かれたことは答えたわ』
 「……そうか」
 椿の言う、聞かれたこととは何をどこまを指すのか、果たして姉は、彼とつくしのどこまでのことを知っているのだろうか。
 「何を話した?」
 『何って…私が知っていることなんて、あんたから聞いたごくひと握りのことだけじゃないの。とりあえず、あんたとの離婚後しばらくして、つくしちゃんも再婚したこと。再婚して、地方へ転居していたこと。それが最近になって離婚したらしいこと。それで東京に戻ってるのかもしれないってことくらいかしら。…納得しがたくはあったみたいだけど、それでもひとまずは引き下がってくれたわ』
 「戒に話したのは、あいつの行方のことだけか?」
 『…そりゃあね、他には聞かれなかったもの。それでいいんでしょ?』
 「ああ」
 小さく溢れた吐息は、安堵からだっただろうか。
 いつの日かまた、再び戒から弾劾を受けることになるだろう。
 今度こそ、白日の下に晒されるだろう真実は、戒を司から永遠に遠ざける事になるに違いない。
 それでも今はまだ、戒の庇護者として彼を守ってやりたかった。
 たとえ、それに値しないとすでに見下げられ、父としての尊厳も、彼の親愛もすべて失われてしまっているのだとしても。
 『つくしちゃん、今も東京にいるんでしょ?』
 「…たぶんな」
 司とて、知らないのだ。
 彼女が継子のために、道明寺家の顧問弁護士である勅使河原と面談し、司との離婚の際に得た慰謝料の一部を夫である牧野隼斗に、残るすべての財産を医療関連のMPO法人に寄付したことまでしか承知していなかった。
 そして、アメリカに渡米してきたのは、隼斗と陽太だけであることだけ。
 ともすれば、自らの権力のすべてを使って、つくしの今現在を知りたい…知って関わりたいという欲望を抑えるのは至難の技だった。
 けれど、
 …あいつはそれを望んでねぇ。
 あれほど司から逃れたがっていたのだ。
 そして、それを果たした今、司からの干渉を毛嫌うことはあっても、けっして望んではいないだろう。
 彼女を守らなければならない。
 彼自身の執着と妄執から。
 『つくしちゃん、………幸せでいてくれてるかしら』
 「………………」
 『………………』 
 沈黙が続いた。
 姉弟それぞれの胸に去来するものを、互いに慮って言葉に迷う。
 しかし、先にその逡巡にケリをつけたのは、やはり姉の方だった。
 いつも男前で勇敢なのは女の方なのだと、改めて感じて司は一人、ひっそりと自嘲の笑みを唇の端に浮かべる。
 『それで?どうするつもりなの、司?…この前の話じゃ、あの子を、戒をしばらく海外か、州外の寄宿学校に入れるかどうかを検討しているようなことを言っていたけど、本気でそうするつもりなの?』
 「…どうするか」
 司の中でも迷いがある。
 自身の下に引き止めたいというエゴだけではなく…しかし、
 …このまま俺のところに留めても、果たしてあいつのためになるのだろうか。
 戒をつくしから引き離したことは、今も後悔はない。
 彼らは司を恨んだことだろうが、道明寺の軛から彼女が完全に逃れるためには、戒が傍にいては叶わないのだ。
 そうである以上、母親の不在を司が埋めてやるべきなのは当然だ。
 しかし、現在、そう出来ているとは言い兼ねる。
 『うちで預かってもいいのよ?』 
 それは司も考えなかったではない。
 「……そっちも今ゴタついてんだろ。バアさん、良くねぇんだって?」
 『まあ』
 元々政略結婚で娶された縁ではあるが、権高い婚家と由緒正しい権門の出身という望み得る限り最高の組み合わせでありながら、夫の親族と奔放なきらいのある椿とでは、常々その家風で衝突しがちだった。
 それだけに、子供ができる以前は、実家に一人で里帰りすることも少なくはなかったのだが…。
 『戒の一人や二人、私が守ってあげるわよ!お姉さまに任せなさいっ?』
 頼もしい断言に、自然司の顔が柔和に綻ぶ。
 『それかさ?…提案なんだけどね』
 語調を改めた姉の言葉を、無言で待つ。 
 『それか、いっそ、お母様に預けたらどうかしら?……あんたがCEOに就任することで、ある意味、お母様の重責も軽くなるわけだから、逆にあんたよりは戒の為に時間がとれるようになるはずよね?』
 


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