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「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影②

愛してる、そばにいて506

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 富裕の屋敷はどこもかしこも代わり映えがないようでいて、椿一家の屋敷は、道明寺家の屋敷とはまるで趣が違った。
 NYの屋敷にしてもそうだが、道明寺家の持ち家はコロニアル式を基調にした家屋が多い。
 質実剛健な家風とは真逆のようだが、数代前の当主が華美を好んだとかで、その流れを組んで一族が経営するホテルもそれに習っている。
 「こっちが、以前から戒が使ってた部屋への道筋…憶えてる?」
 「あんまり」
 建物どころか、咲のことですら記憶は朧げだった。
 案内される道すがら、あれこれ話しかけてくる咲は戒に興味津々のようで、遠巻きに眺めてくる同級生の女の子たちとはまた別種の生き物のようだ。
 …伯母さんとはあんまり似てないな。
 「俺が使ってた部屋…って、またそこ?」
 「そう。以前はしょっちゅう行き来してたから、戒の部屋もちゃん残してあるの」
 「へぇ?」
 この年頃の一才差は大きい。
 もしかしたら咲の親密さは、戒よりも彼と過ごした記憶が、彼女の中に戒よりも多く残っているからなのかもしれない。
 それでも、戒の方でもそれなりにこの少女への気兼ねが柔らいでいた。
 構えることなく雑談に応じられるくらいには。
 「お祖父さんやお祖母さん、お父さんは元気?」
 「うん。司叔父さんほどじゃないけど、うちのパパもめったにうちにいられないくらい忙しいよ。お祖父様の方はもうお年だって、前ほど仕事はされていないけどね。ロングアイランドのお祖父様とは違って、大きな病気はされてないから、そこは安心かな」
 「…そっか」
 ‘ロングアイランドのお祖父様’というのは、戒にとっても祖父にあたる人物で、椿と司の父親だ。
 しかし、気安げに呼ぶ咲とは異なり、戒にとっては他人よりもさらに遠い存在だ。
 …会ったことない人だし。
 周囲の話によると、一度として彼の顔を見てはいないらしい。
 祖母の楓も、彼にとってはとても肉親とは言えない相手だが、祖父はさらにその上を行く。
 「お祖母さんは?」
 「…ああ、元気、かな?」
 曖昧な咲の言い方に内心で首を傾げるが、戒にしてもあくまでも社交辞令の範囲で尋ねたに過ぎず、大して興味があるわけではない。
 戒の記憶の中での彼らは、それほど近しいわけではなかった。
 しかし、実の祖父母よりは、よほど情がある人たちだったように思う。
 それがたとえ司に対して、あるいは道明寺家に対しての配慮、そして孫娘の咲の為であったとしても。
 「妹は?大きくなった?」
 「憶えてるんだ?」
 「まあね」
 さすがに自分が最後に滞在していた当時、お腹が大きかった伯母が子供を生んで、赤ん坊を抱いて帰宅して来た時のことくらい憶えている。
 …猿みたいだと思ったけど。
 その後、異母弟の佑都の顔を見て、人間の赤ん坊というものは、元来そういうものなのだと納得したものだ。
 「後で会わせるけど、すっごいうるさいから覚悟してね?」
 「そ?」
 「めちゃおしゃべり」 
 思わず咲の顔をマジマジと見れば、なに?と首を傾げられる。
 「君…咲より?」
 「ママより」
 「…………」
 黙り込んだ戒に、咲がクスクスと笑う。
 「戒のところは…」
 尋ねようとして、咲があっと口に手をあてる。
 言い淀んだ所を見れば、誰か家族のことでも尋ねようとしたのだろう。
 案の定、困ったように言葉に逡巡しているのを、戒が小さく嗤う。
 「えっと、…その」
 「……父さん?」
 「そ、そう」
 「忙しいんじゃない?」
 投げやりに答える。
 可愛らしい外見とは裏腹に、やはり椿の娘だ。
 突っ込んで聞いてくる。
 「………知らないの?」
 「どうだろ」
 「変な言い方」
 「……………」
 「……………」
 言葉が途切れた。
 別にどうということもない。
 咲としては、話題の流れで聞いたに過ぎないだろうし、どちらにせよ親族なのだ。
 伯母がどこまで子供たちに話しているか知らないが、咲の気まずい表情からして、それでも叔父の家庭の事情くらいは、それなりに聞かされているのだろう。
 親族として、叔父の二番目の妻であった遥香とも咲は面識があるだろうし、佑都にも当然会ったことがあるはずだ。
 その会合のいずれにも戒は同席していない。
 だが、佑都は祖父母が待望した跡継ぎだった。
 しかし、その佑都が亡くなり、司は遥香と二度目の離婚をした。
 現在、3度目の結婚に踏み切ろうとしている。
 そもそもそうしたことすべて、たとえ親族でなくても、政財界の著名人である一家の事情など、誰でも知っていることだったか。
 妙に自虐的な気持ちになって、戒が歪んだ笑みを浮かべる。
 「お義母さんは、って聞けよ?」
 「あ…えっとぉ」
 「聞いてるんだろ?」
 異母弟殺しと言われた自分のことを。
 「それって…つくし叔母さんのこと?」
 「……っ」
 思わぬところで、思わぬ相手の口から飛び出した名前に、戒が虚を突かれて言葉を失う。
 …誰だって?
 長く追い求めて、ついには諦めたはずのその名がなぜ今ここで?
 「たしかつくし叔母さんも離婚して、今東京に戻ってきてるんだよね?戒、つくし叔母さんに会ってるの?」
 …母さんっ!?



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