「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影②

愛してる、そばにいて505

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 『少し、頭を冷やせ』
 父の鶴の一声で決まった戒のロスアンゼルス行き。
 これまでとは異なり、そこに彼の意思が斟酌されることはなかった。
 いや、違ったか。
 …いつだって、あんたたちは自分たちの好きにするんだ。
 戒の意志を無視して。
 父が母を追い出し、新しい母親だと遥香を押し付けた時も。
 母を恋しがった彼から、母親の存在を消しされと命じた時もそうだ。
 そして―――、
 「よく来たわね!まったく、この子ったら何度呼んでも、クリスマスでさえロクに遊びに来てくれないなんて、どれだけ薄情なのよっ」
 ぐわぁばっ!!
 「ぶっ」
 男並みにデカイ伯母に勢いよく抱きつかれて、半ば背面側に反り返りながら、プルプルと足を震わせそれでもなんとか持ち堪える。
 「ちょ、お、おばっ」
 「ああっ、もうっ、ホントあんたったら、見るたびにデカくなって!男の子って、ドンドン加速度的成長するものなのねっ」
 女とは思えないバカ力で半ば羽交い締めにされながら、懸命に踏みとどまっている戒の努力を丸無視で椿が感涙に咽ぶ。
 「せ、背骨」
 「顔!顔をもっとよく見せてっ!」
 なんとか意志疎通を図ろうと試みるも、まったく人の話を聞いちゃいねぇ状態の伯母の勢いに押され、戒がまごついている間に、顔を掴まれ覗き込まれる。
 「やだっ、あんたちょっと痩せたんじゃないのっ!?司のヤツもやたらと子供の頃は偏食で少食だったけど、あんたはちゃんと食べてるんでしょうねっ!」
 「いたたたた、食べてるって!」
 偏食はともかく、司の場合はいまだに食に関して関心が薄く、少食のままだったが。
 「本当にっ!?子供はね!もっと、ふくふくしてるくらいでちょうどいいの。あんたいったい体脂肪率どれくらいよっ?司の子供の頃よりひどいんじゃないの?」
 「…いや、だから」
 「まったく自分が食べることに興味がないからって、息子にまでロクなもん食べさせてないんじゃないでしょうね!これだから、男親の子育てはっ」
 矢継ぎ早に繰り出されるオーバーアクションと、マシンガントークに戒が口を挟む間もない。
 「そうだっ、ちょっと早いけどお夕飯にしましょう!ウチのジェットで来たんならともかく、アメリカ系の民間航空機の機内食なんてロクなもんないんだからっ。これがアラブ系やアジア系ならまだ食べれるけど、6時間も乗ってなきゃならないんだから、もうちょっとサービス向上できないものかしらね」
 「いや、い」
 「育ち盛りですものね!」
 聞いちゃいねぇ。
 「………ママ、襟首持ってそんなにブンブン振るのはやめてあげたら?、戒が酸欠で半死半生になってるわよ。ご飯の前に、まずは空気を吸わせてあげた方がいいんじゃないの?」
 「え?」
 呆れたような声音での制止に、やっと椿も我に返ってくれたらしい。
 「あら…」
 「ゴホッ、……伯母さん。気遣いは嬉しいけど、夕食の前に部屋で少し休ませてくれない?どうせ、おじい様やおばあ様たちにも、ご挨拶しなきゃなんないんだろうからさ?」
 現在、椿夫妻は道明寺一家とは異なり、伯父の両親と同居していた。
 もちろん、同居とはいっても広大な屋敷のこと。
 家族同士でも集まろうとしなければめったに顔を合わせることもないだろうが、伯母の立場とメンツを考えれば、しばらくとはいえ世話になる以上、挨拶をしないわけにはいかなかった。
 「……ああ、そうね」
 とたんに椿の歯切れが悪くなった。
 明朗快活な椿だったが、困ったようなその美貌に浮かんでいる複雑な笑みが、彼女とこの舅夫妻との関係を如実に物語っている。
 「それとも、先にご挨拶を済ませておいた方がいい?おじい様はともかくとして、おばあ様はご在宅なんだろ?」
 「……………」
 「……………」
 しかし、困惑した顔になったのは椿だけではなく、椿の魔の手?から戒を救った従姉妹の咲の方もで、母子揃って顔を見合わせていた。
 「なに?」
 「いえ、ご挨拶は…明日でいいと思うわ」
 「うん、私もその方がいいと思う。今日はお祖父様はパパと同伴で出かけてらしてるし、なんだかんだとバタバタしてるから明日の方がゆっくりできるもの。お祖父様がいらっしゃらないところでは、お祖母様をいきなり戒に会わせるのもちょっとアレよね?」
 「そうね」
 咲の妙な言い回しと椿の複雑な顔に、戒が怪訝に眉根を寄せる。
 「…やっぱ、俺は歓迎されてないってこと?」
 「何言ってんのよ!」
 「そんなわけないでしょっ!」
 異口同音母子が目を剥き、戒を窘める。
 「とにかく明日になればゆっくりできるから、それから話はまたあらためてにして…そうね。夕食の前に、戒は少し休んだほうがいいわね」
 「私が案内するわよ。…凄い久しぶりだもの」
 トコトコと歩み寄ってきた咲が、腰を落として斜め下から戒の顔を覗き込み、にこっと笑う。
 「前に会った時は、私よりずっとおチビさんだったのに。ホントにずいぶん背が伸びたのね、戒」
 一才年上のこの従姉妹と会うのもほとんど4,5年ぶり。
 伯母一家もここ5年家庭内でゴタゴタがあり、彼自身もまた両親の離婚、間を置かぬ父の再婚、そして弟の死などさまざまなことがあった。
 そうしたことから、伯母とはタマの葬式の折になど何度か顔を合わせているが、道明寺一族というよりは椿の嫁ぎ先の一族である咲とは、ここ数年は1,2度顔を合わせた程度だ。
 最後に彼女とゆっくり会ったのは、両親が離婚する直前、一緒にディズニーランドに行った時だったか。
 幼い頃は本当の姉弟のように仲が良かった相手だが、ここ近年の付き合いは希薄だったから、人懐っこいとは言い難い戒的には大いに気兼ねがある。
 「私より背が高いわよね?150cm超えた?」
 「ああ」
 咲の方はもともとの性格もあるのだろう。
 容姿はあまり似てはいないが、伯母と同じく快活なこの従姉妹は、無愛想な戒にも物怖じせず、気さくに話しかけてくる。
 そんな二人のやりとりを椿も微笑ましく見守って、
 「じゃ、戒の案内は咲に頼もうかしら。私も戒とは話したいことがたくさんあるんだけど、それはまあ、お夕飯の時でもいいわね」
 「そうよ。それよりママ、そろそろ彩もお昼寝から起きてくる時間じゃないの?」 
 「え~、さっき寝室に見に行ったら、ぐっすり寝てたわよ?」
 しかし、噂をすれば影。
 トントン、
 『…若奥様』
 メイドが呼びかけてくる声に、椿が振り返る。
 「ほら、あの子、目が覚めた時にママがいないと愚図るから、ナニーが呼びに来たじゃない」
 「あらやだ、ごめんなさいね。せっかく遊びに来てくれたのに、なんだか忙しなくて」
 椿の謝罪に戒が肩を竦める。
 「別にいいよ」
 「じゃ、戒。部屋には私が案内するから、一緒に行こう?」
 
 

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