「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影①

愛してる、そばにいて499

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 「………いや」
 滋が飛び込んでこなかったら、司は親としての信念からではなく、激情のままに戒を殴ってしまったことだろう。
 …失敗した。
 それはたしかだった。
 そして、これまで司の罪と不明によって傷つけてきた愛する息子を、さらに傷つけてしまうところだったのだ。
 だから、
 「助かった、礼を言う」
司が滋へと素直に頭を下げる。
 「え?ええ?ええーーっ!?」
 滋の素っ頓狂な叫び声に顔を顰め、司はもう一度ため息をついた。
 「ふぅん、あんたみたいな男でも、やっぱり息子のことは可愛いんだ?」
 「……………」
 「まさか、あたしにお礼を言ったりすることがあるだなんてねぇ」
 「………もういいだろ、いいかげん出て行ってくれ」
 謝意を感じることと、滋を許容することは違う。
 ケンモホロロに追い出しにかかる司を矯めつ眇めつ眺めていた滋が、ポンと、両手を小さく叩き合わせて提案してくる。
 「ね、一緒にお酒飲もうか?」
 「ああ?」
 「あんた、たしか今日は一日オフなんだよね?」
 そうだとも違うとも言わない司を無視して、いきなり壁際の書類棚へと歩み寄ると、滋がしゃがみだす。
 そして、棚の下部にある引き出しに手をかけると、一気に開け放って快哉を叫んだ。
 「おお!あったあった!うちのパパもさ、仕事場のこういうところによく隠してたのよね」
 立ち上がった彼女に手には、テキーラのボトルと、いったいどれだけ飲むつもりなのか、大振りのゴブレットグラス。
 「まさかこれって、養命酒ってことはないわよね?」
 「…出て行け」
 「いいじゃん!お互いの頭が冷えるまで、どうせしばらくは、戒君のところにも行かないんでしょ?いつまでもそんな凶悪な顔してたら、またカッカきちゃって、上手く話せるものも上手く話せなくなっちゃうわよ」
 凶悪…まさに滋が言った形容詞そのままの険悪な顔で睨む司をものともせず、それでもやや引き攣り気味ではあるが、滋がにっこり笑って司の対面側に腰を下ろす。
 「だからね、そんなに怖い顔しないでってば」
 「気に入らねぇなら、さっさと出て行けと言ってるだろ」
 「…気に入らないっていうんでもいないんだけどね。むしろ見直したっていうか。…自分に反発してる息子にも、真摯に向かい合ってる父親のあんたに感心したのかな。いや、まあ、それはいいんだけどっ!…ほら、鬱憤溜め込んでると、よけいにギスギスしちゃうじゃない?あんたなんて日頃から激務なんだしさ」
 「……………」
 いかにも歓迎していない彼のあからさまな態度にも、まったくたじろがない滋に、司は内心うんざりだ。
 これまでの滋も、むやみやたらに司を恐れるというところがなかった。
 それでも、司の覇気をまともに受け止められるほどではなく、ビクビクしたり媚を売るわけではなくても、それなりに距離を測って、警戒していたというのに。
 正直、調子を狂わされる滋の馴れ馴れしさや図々しさが、戒と同様司も苦手だった。
 「て、ことで?お互い、中々同じ年頃の子供たちがいる親たちと交流を深めたり、悩み事を相談したりできない立場だし?あたしのことは、ママ友みたいに思って、ここはドーンと子育ての悩み事を―――ってぇぇっ!!」
 ガシッと滋の首根っこを捕まえた司が、まるで猫の仔を掴むようにして、無理矢理に部屋の外へと引きずってゆく。
 「ちょ、ちょとおおおおっ!」
 ズズズズズ――ッ、ぽいっ、ズベシャッ!
 「あぎゃっ!」 
 バッタンッ、ガチャッ。
 廊下の外へと滋を放り捨てて、ドアを締め、鍵を掛けるまでの一連の動作を流れるようにこなし、司がそのまま再び、固定電話の受話器を取り上げる。
 「俺だっ、大河原滋をしばらく俺の行動範囲に近づけるな。…ああ、戒の部屋にもだっ!」
 ドンドンドンドンドンッ!!
 『つかさあああ、ちょっとぉ、開けてって…え、やだ、ちょっとぉ!どこに引き摺ってゆくのよぉ~っ!!』




*****
 
 


 「こちらです」
 SPの案内で足を踏み入れた建物は、彼がよく知るバーやクラブとはまるで違った。
 猥雑で汚らしく、いかにも如何わしげなその雰囲気に、司が鼻を鳴らす。
 どちらにせよ、お上品な輩が集うような場所ではないのはあきらかで、単なるツレを装った司と同年輩のSPが警戒を一気に強め、彼の周囲を視線鋭く見回している。
 「…………どこだ?」
 司の問いかけに答えて、SPとはまた別の…こちらはごく平凡で、小柄な外見の中年男が視線を巡回させて、店の一角を指し示す。
 「あちらです」
 写真の中で戒と共に微笑んでいた赤毛の少女が、カウンター席の客に酒を配膳して、にこやかに接客していた。
 すぐに司たちに気がついた店のボーイが近づいてきて、愛想よく応対してくる。
 「いらっしゃいませ」
 「3人だけど、席、空いてる?」
 「…ええ」
 見慣れぬ風体の彼らを値踏みして眺め回し、だが、瞬時に司たちが上客だと見極めたらしい。
 「カウンターとスタンド席、二階にはテーブル席がございますが?」
 「二階のテーブル席で……女の子指名できるかな?」
 司の目配せを受けて、案内役の中年男が、ボーイの手に金を握らせる。
 握らされた手のひらを見ることすらなく、握らされた札束の厚みに、ボーイがホクホクと笑って頷いた。
 「もちろんです」
 「じゃあ、あそこの…カウンター席で接客してる赤毛の彼女を」



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