「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影①

愛してる、そばにいて497

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 飛び出した言葉は戒の真実だったのだろう。
 司もわかってはいた。
 わかっていて、傍にいてやれなかった。
 物分りよく理解してくれていた幼い我が子に甘えていた自覚もある。
 だが、…分刻みの仕事が戒のそばにいてやりたい司の時間を縛り、そうとわかっていてもわずかな時間でそれらをフォローするのが、一人ではあまりにも彼には難しかったのだ。
 …こいつの叫びだ。
 ずっと我慢して我慢して、言えずに飲み込んでいた戒の叫び。
 戒の母親のつくしが父を理解してやれと言い続けた言葉が、彼女が去った後も戒を縛り続けた。
 それでも彼女が傍にいてくれていたなら、たとえ不在がちな父への寂しさを感じていたとしても、戒の孤独や哀しみはここまで深まることはなかっただろう。
 …すまねぇ。
 それもこれもすべては司のせいなのだ。
 戒から母親を奪ったのも、そして、つくしからこの目の前の息子を奪ったのもまた。
 「戒」
 戒は決して泣いてはいなかったが、それでも司には彼の傷ついて悲しんでいる心が見える気がした。
 「…戒」
 呼び続ける父から顔を背け、戒が席を立つ。
 「俺は…俺は、あんたの指図は受けない。…これからも行きたいところには行くし、したいことをする」
 そのまま部屋を出ようとする戒の手首を咄嗟に掴んで、司が引き止める。
 戒の気持ちは、司にも痛いくらいにわかってはいた。
 しかし、それでも彼自身のために、譲ることはできないのだ。
 「待て、戒、ダメだ。お前がやっぱり寂しいっつーのなら、俺ももっと考えてやる。場合によっては、しばらく学校を休学して俺の出張に同伴してもかまわねぇ。けど、あの娘のことに関してだけは、今のままを許すわけにはいかねぇ。ジーナは…」
 このままでは拉致があかないと、ある程度事情を話すつもりで口を開いた司に、カッと戒が激昂する。
 「呼ぶなっ!あんたがジーナの名前を呼ぶなぁっ!!」
 「戒っ!」
 「薄汚ねぇあんたが、ジーナの名前なんか呼ぶなよ!」
 息子にそこまで言われて、さすがの司も我慢の限界に達する。
 彼にしては驚異的な忍耐力で堪えてはいたが、我が子とは言え、年端もいかない子供にそこまで馬鹿にされ、生意気な口をきかれては、さすがにいつまでも我慢しきれるものではなかった。
 こめかみに青筋を浮かべ、戒の胸倉を掴んで引きずり寄せる。
 「…言うにことかいて、薄汚ねぇってか!?あんな薄汚ねぇ小娘にイれあげたあげく、父親の俺を薄汚ねぇだぁっ!?てめぇ、父親に向かってなんて口ききやがんだぁっ!」 
 一気に増した威圧感に声を震わせながらも、戒も声を張り上げ虚勢を張る。
 「お前なんか父親じゃないっ!」
 「ぬわぁにぃっ!」
 それでもまだ冷静さを保っていたつもりの司の頭が瞬時に沸騰して、だが次の瞬間には一気に下がり目眩が襲う。
 「誰がお前なんて父親なもんかっ!俺のっ、俺の母さんで遊んでたくせにっ!お前なんて赤札貼って、弱い者イジメしてた卑怯者じゃないかっ!!」
 「っ!」
 思わぬところで思わぬ相手―――戒の口から飛び出した過去の自らの汚点に、司が驚愕して絶句する。
 「…誰が」
 それでもなんとか絞り出した司の声音は、動揺にしゃがれていて、そんな父の聞きたいことを戒も理解したのだろう。
 怒りと憎しみで爛々と燠火のように燃えた目で司を睨む。
 そして、胸倉を司に掴まれたまま、爪先立ちに吊り上げられながらも屈することなく、司を嘲り続ける。
 「英徳で聞いたよ、あんたがやってたこと。クラスメートの母親が、母さんの元クラスメートだったんだ」
 いつか、本当にいつか、司もこの日がいずれやって来ることを全く予想していなかったわけではなかった。
 しかし、よもやこんなにその時が早いなんて…と歯噛みする。
 迂闊といえば迂闊だったが、英徳でならそういった相手―――当時の事情を知る人間がいても、初めからおかしくはない話だったのだ。
 ただ、司の威光が行き渡った場所で、司の意に沿わぬ事柄がよもや暴露されるとは思っていなかっただけのこと。
 司の傲慢と無知はまた結局は、彼の最愛の我が子を傷つけ苦しめ続ける。
 「戒」
 「それとも赤札とか、そういうのってそいつのウソだったとか言う?」
 「…いや」
 厚顔無恥の自覚のある司にしても、とても嘘まではつけなかった。
 たとえどんなに恥ずべき過去だとしても、そうした所業を為していたことは真実だったのだから。
 わずかに視線を落とした父の顔を見る戒の顔こそ、どれだけか悲痛に歪んでいたことだろう―――視線を伏せていた司は気付かなかったけれど。
 「俺もこっちに来て、あんたのマネしてやってみたよ?赤札」
 「戒?」
 司が目を見開く。
 「すげぇ面白かったよ!やっぱ、俺はあんたの息子だよなっ」
 「戒っ!」
 戒の歪んだ笑みはあまりに司自身にそっくりで、だがその目に浮かぶ軽蔑だけが違った。
 今目の前にいる…酷薄に彼を冷笑してる自分によく似た息子が、まるで十数年前の自分自身―――過去の亡霊が蘇った姿であるかのような錯覚に捕われ、司は愕然と戒をただ見つめ続けた。
 「本当は俺の母親みたいに貧乏でなんの取り柄もない、ゴミクズみたいなサイテーの女でもいれば、もっとゲームを楽しめたのにさ!」
 「黙れっ!!」
 司の激情が一瞬で噴き上がった。
 憤怒して怒声を上げた司が、片手を振り上げる。
 それでも戒の口は止まらない。
 自分を殴ろうとしている父親の顔をジッと睨み据え、毒を吐き続けた。
 「だから、あんたは母さんを捨てたんだろ?!そんな男の子供だから、母さんも俺のことを捨てたんだっ!」

 
 
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