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「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影①

愛してる、そばにいて489

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 「お前が俺を助けてくれたから?」
 疑問形なのはともかくとして、たしかにそういう意味で恩義を感じているらしいことは、戒にもなんとなくわかっている。
 約一年近く前、戒の在籍する私立校の中等部に、スポーツ推薦で外部入学したジュリオと戒とでは、それまでまるで接点がなかった。
 当然といえば当然のことだが、同じ敷地内であるとはいえ、校舎も異なり、日本の英徳学園の大学と高等部のように交流が可能なカフェがあるわけでもない。
 もちろん、中等部生以上の学年に関しては利用可能なカフェもあるが、小等部生の戒が利用できる場所ではなかった。
 それ以前に互いに属する階級が異なる。
 人種差別以上にアメリカという国は、階級差別の激しい国だった。
 そんな彼らが出会ったのは、学校内ではなく、まったく関わりのない場所。
 学校内でのゲーム=赤札にもいいかげん飽きが来ていた戒が、再び日本にいた頃のように、繁華街をウロつくようになった頃のこと。
 かつては母親を捜すためのそれは、NYではただ時間が過ぎるのを待つ、退屈凌ぎに過ぎない時間となっていた。
 ―――お母さんに逢いたい。
 かつて振り絞るように切実だった願いは、いつの間にか細切れに四散して、元の原型がわからないほどに変化してしまっていたのだ。
 毎日のように眺めていた写真はベッドヘッドの引き出しから、クローゼットの奥底、適当な箱にしまい込まれ、さすがに捨てることまではしなかったが、取り出すこともなくなっていた。
 あまりに早すぎる戒の幼少時代の終焉は、本当にある日突然に衝撃的に訪れ、彼を陰鬱な孤独へと突き落とした。
 「あの時、お前が証言してくれなかったら、俺は確実にサツに捕まって…せっかくロハで入学できた名門私立校も退学になってた」
 ジュリオは非行少年たちのひったくりグループの一員と勘違いされ、警察に連行されかけていたのだ。
 たまたまジュリオの顔馴染みだった少年の一人が、彼のバッグに財布を押し込んでいるのを、戒と連れのSPが目撃していた。
 そのまま見て見ぬフリをすることも当然できたし、その時の戒に、あえてその揺れ衣を晴らしてやるほどの親切心も熱意もあったわけではない。
 しかしーーー、
 『絶対違う!頑張って頑張って、やっとフットボールで有名私立校に入学できたばかりなんだ!こんなことでそれをフイになんかしたら、応援してくれてた死んだ母さんを泣かせることになるから、そんな馬鹿なことなんか絶対にやらない!!』
 切実なジュリオの叫びの何が、彼の琴線に触れたのだろう。
 悪いことに、悪たれどもがジュリオのかつての仲間であったことも災いして、中々警察には信じてもらえなかった。
 しかし、そこをいかにも上流階級の子息の戒が口利きをしたことと、一緒にいた大人ーーー戒のSPたちも目撃証言に協力したこと、…そして、何よりも戒の指示で捕まえさえた少年たちの一人が白状したことで、ジュリオは無罪放免となったのだ。
 当然、少年たちには脅しと鼻薬を効かせたことは言うまでもない。
 「俺の夢は、フットボールで名を馳せて、家族を裕福にすることなんだ。まだその入口に立ったばかりだって言うのに、その俺の成功を妬んだ奴らに足を引っ張られて、危うくフイになんかさせられてたら、俺は今頃、悔やんでも悔やみきれなかったし、きっと腐ってた」
 「…………そうか」
 「だから、お前はただ単にあの場を助けてくれたってだけじゃない。俺の人生と魂を救ってくれたんだ」
 どんなに我武者羅に頑張ってきたにせよ、ジュリオのように戒は切実な望みを持ったことがなかった。
 自分の為に、誰かの為に何かを望んで、血を吐くような努力で勝ち取ったものなど、これまで何一つなかった。
 だからだろうか。
 熱い眼差しで野心を語るジュリオが、戒の目にひどく眩しい気がした。
 「それに…俺はお前が好きなんだよ」
 ストレートな告白に、照れて盛んに頭を掻いて視線を反らすジュリオの横顔を戒がマジマジと見つめ、それでなおいっそう、ジュリオが照れて不機嫌に顔を歪める。
 「…あんまりジッと見んなよぉ」
 「俺、たぶん男はムリだけど?」
 「ち、ちげーよ!俺もゲイじゃないっ、じゃなくって…なんつーか、その…友情を感じてる」
 「友情?」
 たしかに戒にしてみても、取り巻きたちに比べれば、よほどジュリオのことを、友達と言っても差し支えなくらいには思っていた。
 だが、ここまでテレテレと言われるほどの、熱烈さを感じていたわけではない。
 それなのに、だ。
 気が付けば、鼻で嗤ってしまっていた。
 友達が欲しいと願っていた、幼い日の彼とはもはや違うのだ。
 「友情ってなんだよ?お前も俺から何かを引き出したい、そういうことかよ?」
 「そうじゃねぇよ」
 「じゃあ、俺の何を見て、友情を感じてるって?お前をたった一度助けたから、ただそれだけで、お前は友情を誰にでも感じるわけか?」
 奇妙に攻撃的な気持ちになって、彼へと素直な好意を向けてくるジュリオを責め立てる。
 それに気を悪くするでもなく、戒からの問いかけに答えようとだろう。
 ジュリオが真剣な顔で、自分の中から上手い言葉を探そうとか、うーんと両手を組んで首を傾げて悩みだす。
 「なんていうか、俺より3才も年下の、まだエレメンタリースクールのガキのお前の友達になりたい、なんて変な話だと自分でも思うんだけどよ」
 「………………」
 「お前は他の誰とも違う気がするんだよ。学校の、自分の生まれを傘に来て、俺らみたいな貧乏人を見下す連中とは」
 「俺が気に入らないヤツに赤札を貼って、イジメるように命令してたのを、お前知らないのか?」



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