「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影①

愛してる、そばにいて488

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 今度こそ踵を返し、部屋を出ようとする戒を慌ててジュリオが追いかけてくる。
 それを特に追い払うでもなく、しかし、けっして戒はジュリオを…誰も待つことはしない―――ジーナ以外には。
 「………ガッコ、来いよ」
 「お前は俺の親かよ?」
 「ぶっ…はは、ホントだ。今のセリフ、俺も自分でそう思った」
 「………」
 ゲラゲラ笑うジュリオを放置して、アパートを出たところで、携帯電話で迎えの車を呼び出す。
 ジーナとはなるべく普通に付き合いたいから、極力彼女といる時には彼女に合わせた生活を心がけていたけれど、彼女がいないのならよけいな労力を使うのもバカバカしいことだ。
 いつの間にか隣に並んで歩きだしたジュリオが、滔々と自分の生い立ちを話しだしたのを聞くともなく聞きながら歩く。
 「俺は22才の姉貴を筆頭に、8人いる兄弟の真ん中なんだ。ジーナは兄貴の下、3番目だな。ちょうど俺とは三つ違いで、ジーナと俺にはお前より一つ下の弟もいるんだよ。だからだろうな、なんかそんなことがつい気になっちまう」
 「別に俺にはもっとガキの頃から家庭教師がついてるし、とっくの昔にジュニアハイくらいまでの勉強なら教え込まれてるから、特にエレメンタリースクール程度の学習なら通学して勉強する必要なんかない」
 「ああ、そういえばそうなんだっけか。知ってる、知ってる。えらく頭イイって、ジーナが話してたよ。でも、お前、ここにべったり入り浸って、ジーナの後つけ回してるんじゃその家庭教師と勉強する暇もロクにないんじゃねぇの?」
 図星だ。
 正直のところ、いつまでもこうして遊んでいるわけには行かない身の上であることは自分でも十分に自覚している。
 もちろんいまだ、同年代の子供たちに学力で引けを取るものではなかったけれど、それでも、日本にいる頃や、NYに転居してまもなくの頃は真面目すぎるほどに勉強に力を入れていたのだ。
 学校への通学に関しては父親の放任もあって、特に求められてはいなかったから自身の気分のまま適当なものだったが、それでもかつては母を悪く言われたくなくってしゃかりきに頑張っていた。
 そして、NYに来たばかりの頃は―――。
 「………俺にも弟がいたよ」
 「は?」
 「6才違いだけど」
 「へぇ、けっこう年離れてるな」
 「母親違うし」
 「あ~」
 微妙な間に、ふっと戒が皮肉に嗤う。
 ジュリオはたいがい図々しい少年だが、こうした話題を出した時に決まってする人々の反応そのまんまだったから。
 「別に珍しくないだろ?」
 「…まあな。仲悪いのか?」
 「いや、赤ん坊みたいなものだったから」
 「まあ、6才も離れてりゃあな。お前が今10才だから、プリスクール(※幼稚園)か?」
 「墓の中」
 「………」
 今度はさすがに完全に言葉に詰まってしまったらしい。
 口を半開きにしたまま、二の句を継ぎかねて、間抜けヅラを晒している少年がおかしいと、戒がクスクスと笑い出す。
 それをジュリオが、真っ赤な顔で睨みつけてくる。
 「悪趣味なヤツだな。そんな冗談ありかよ!」
 「ジョークじゃないさ」
 「…っ…………死んだのか?いつ?」
 「一年前…いや一昨年の夏だから、もう一年半くらい前か」
 「そう…か」
 黙り込んでしまったジュリオを横目に、戒は車の到着を待ちながら内心困惑してもいた。
 これまで佑都のことは彼の前ではタブーで、屋敷の人間はもちろんのこと誰も話すことがなかったが、戒自身も誰かに話したことはただ一度もなかった―――ジーナにすら。
 忌避しているつもりはない。
 いや、やはり忌避していたのか。
 自分でも不思議なことではあったが、佑都が運び込まれた病院で小さな遺体に対面して以来、なぜかあの小さな弟に対する感情が痺れたよう麻痺していてなんの感情も抱くことができないでいた。
 単純に憎んでいたから悲しむことができないのか、それとも自分はあの冷血漢な男の息子だからやはり同じように弟の死にさえ何も感じることができない欠陥品なのか。
 もちろん、彼に向かってブツけてきた遥香の憎悪の叫びが不当なもので、けっして自分が弟を殺したなどとは欠片とも思ってはいなかった。
 しかし、そうして彼を糾弾した遥香の言葉は、まるで夢の中で聞いた言葉のように不鮮明で、奇妙なくらいに彼の中には残っていなかったのだ。
 だから憤ることもできないし…嘆くことも、苦しむこともできない。
 ただ…彼らのことを思い起こすたびに、じんわりと頭が重くなって、ただでさえ鈍りがちな感情を見失ってしまうだけ。
 それなのに、時々、ほんの時々だが、突如として泣きたいような笑い出したいような奇妙な感覚が沸き起こってきて混乱することがある。
 自分を傷つけることで、誤魔化せるのならきっとそうした。
 けれど、そうするには、戒はプライドが高すぎたのか。
 だから、そんな自分がイヤで、一時は自分でも異常なくらいに、我武者羅に何かを成し遂げようとしたこともあるし、それだけでは自分でもわけのわからないモヤモヤを晴らすことができずに、そうした矛先を他者に向けたこともある。
 しかし、イラつきは返ってひどくなるばかりで、無意味な八つ当たりがけっして彼の鬱屈を晴らしてくれなどしないことにも、直に気がついて辞めてしまった。
 …物や人に当たっても、全然、楽になんかならない。
 だが、そうした時期に取り巻きになった連中が、今や彼を押したて、まるで猿山のボスのごとく、学校内で派閥を形成しているのを今の彼はせせら嗤って眺めていた。
 学校内でどれだけ幅を利かせようとも、それらも彼らの親たちの権勢を傘にきているだけ、所詮、虎の威を借りているだけのことに過ぎないのだから。
 「ジュリオ、どうして、お前は俺にかまうんだ?」
 「…は?」
 「お前はジュニアハイのヤツだから、俺におもねったところで、学校で威張れるわけでもない。俺がジュニアハイに上がる頃には、もうハイスクールだろ?そりゃあ、ジュニアハイにだって、親の会社の大小で態度を変えるヤツは珍しくはないから、俺の名前を出せば多少は便宜も利くかもしれない。でも、お前の場合はそういうことを頼んできたこともないし、むしろエレメンタリースクール生の俺とツルんでると、ジュニアハイを取り仕切ってるヤツらがいい顔しないだろ?」



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