「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影①

愛してる、そばにいて487

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 「なんだよ、それ」
 険を浮かべ、凄む戒に両手を上げ、ジュリオが降参の姿勢で後退る。
 まともにやりあったことはないが、いくら武道を叩き込まれているとはいえ、戒とではかなりの体格差がある。
 喧嘩になれば、戒が必ずしも勝つとは限らない相手だ。
 しかし、戒にしてみればつまらない出来事を恩義に感じて、この妙に義理堅い少年はいつも戒に一歩譲る。
 おもねって機嫌取りに励むばかりの取り巻きたちとは、何処か違った。
 「綺麗な顔して、そんな怖ぇ顔して睨むなよ」
 「……………」
 「クラスにいる女子たちよりもよほど美人のくせして、すげぇ凄みだぜ…って、わあぁ!タンマタンマ、謝るから近づくなっ!」
 バカにする奴を許すほど、戒も寛大じゃない。
 もちろん、ジュリオのいつもの軽口だとはわかっているが、一発くれてやろうと間合いを詰めた戒の足の動きに気がついたジュリオが、慌てて詰められた間合いの分だけさらに下がって、あっさりと降参する。
 「お前がエレメンタリースクールで、どれだけ暴れん坊か、俺だって知ってんだよ。ただデケェ家を傘に来て、幅効かせてるだけのガキじゃねぇってこともな!俺はスポーツ特待生なんだ。ケンカなんかして、怪我でもしてみろ、すぐにお払い箱になっちまうっ」
 切実で現金な訴えに、ため息一つで戒も鉾を収める。
 幼い頃は父親の性質によく似ていると、何かと周囲に心配されることも多かった戒だったが、成長するにつれ、父との差異が大きくなっていった。
 おそらく根本的にはよく似ているのだろう。
 しかし一卵性双生児の双子が同じ環境下で育ったとしても、まるで同じ人格にならないように、戒も父とは大きく性質を違えていった。
 「戒、お前は短気じゃねぇな」
 ジュリオの言葉に肩を竦めて、もう用はないとばかりに戒が踵を返す。
 ジーナが不在なら、彼がいつまでもここにいる理由はなかった。
 「ジーナにはオトコがいる」
 「……………」
 思わず振り返った戒の顔は、それでもショックを受けてはいなかったはずだ。
 「知ってたのかよ?」
 「…別に」
 知っていたか知らなかったかと言われれば、そうとジーナから知らされていたわけではないのだから、知らないのと同じことだっただろう。
 しかし、気が付いていなかったといえば嘘になる。
 そして気にならなかったわけではなかったけれど、今自分の目の前にいてくれる彼女だけが、戒にとってすべてだったのも確かだ。
 「元々、ここを借りて住んでたのもそいつだ」
 「へぇ?」
 「ジーナとは一回り近くも年上のヤツで、自称絵描きを名乗ってたけど、ホントはロクに仕事もしない単なるヒモだって、ウチの親父が毛嫌ってた。ジーナを遠ざけようとして、大喧嘩になって、結局ジーナが家を飛び出したんだ」
 「………………」
 知らなかった事実だが、やはり別にショックではなかった。
 戒の近辺では確かにない話だが、小説やドラマの中ではよくある話だし、現実でもこの界隈では似たような話や、もっとショッキング身の上話がゴロゴロと転がっている。
 そんな話をジーナがよく話してくれた。
 たいがいは興味の欠片もない戒に、一方的に彼女が、滔々と一人で語り続けるというスタイルだったけれど。
 「俺からしたら、あんな奴のどこがいいのかってくらい軟弱なヤツだったけどよ。俺らの親父が酔うとすぐに暴れたりお袋を殴るヤツだったから、姉ちゃんは真逆のヤツに惚れたのかもしれねぇ」
 「……そうか」
 ジーナがいないところで、戒はジーナの話など聞きたくはなかった。
 そのままジュリオの話など無視をして、その場を立ち去りたいのに、なぜかそうすることができずに、まるで足に根が生えたように、その場から去ることができない。
 「弱いヤツだったからな。知らないウチにヤクにハマってて、…中毒ってほどでもなかったみたいけど、当然そういうやつはしゃぶられやすいから、売人の三下みたいなことをさせられてたらしい。去年サツに引っ張られた。姉ちゃんもバカだからそれで目を覚ませばいいのに、いまだにこんなところで…そいつと住んでいたアパートなんかに住んでる」
 「…ジーナが」
 マリファナを悪魔の薬だと毛嫌って、弱い人間ほどダメになると悲しみ、戒にもけっしてそうした薬や売人にも近づくなと折に触れて話をしていた。
 「ジーナは、ここでその男を待ってる?」
 「…たぶん。金がないから引っ越さないだけだとか、俺には言ってるけどな。親父だって姉ちゃんが頭を下げれば、家に戻ることを許してくれるはずなんだ」
 しかし、それをジーナは望んでいない。
 たしかに男を待っているということもあるのかもしれない。
 しかし、彼女が何よりも、そんな父親の束縛と過干渉を嫌って、一人家を出たことを戒は知っていた。
 「ジーナがそうだと言っていないのなら、違うんだろ」
 「……あいつには借金もあるんだ。今のところ、あいつが出所してきてないから、表立ってはそういう胡散臭いヤツらもウロついてねぇけどな。初犯だったし、モノがコカインとかじゃなかったから、大した罪を問われなかった。だからヤツの刑期もあっという間だ。そうしたらまたゾロ、やばい奴らがこのアパートの周りをウロつくに決まってる。俺は弟だから仕方ねぇけど、戒、お前は違う。だから、もう一度言う。これ以上、お前はジーナに深入りするな。ご大層な家の経歴に傷がついちまうだろ?」



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