FC2ブログ

「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影①

愛してる、そばにいて486

 ←愛してる、そばにいて485 →愛してる、そばにいて487
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 …見た目は随分違うけどな。
 戒の母親と共通項なのは、年齢のわりには童顔なことと、小柄なことくらいで後は面影が重なることはない。
 しかし、それも当たり前のことだろう。
 戒は司とは違う。
 また司も‘彼女’の外見に惹かれたのではなかった。
 彼女の魂に惹かれたから…愛したから、彼女のすべて、姿形、声、心根、その彼に為した所業さえもが慕わしく愛おしい。
 たとえそれが彼を裏切り、破滅させる行為であったとしても、彼女から与えられるもの、あるいは彼女を忍ぶことのできるものではあればなんでも甘美だった。
 …ふっ、とんだマゾだぜ。
 「どちらにせよ、ほっておくわけにも行かねぇか。まさかこの俺が、どっかの因業ババア張りにティーンエイジャーの恋愛ごとに割り入るハメになるとはな」
 戒にとっての少女が、司にとってのつくしのような存在でないことを祈りつつ、司は報告書に貼り付けられた数人の男達と密会する赤毛の少女の写真をくしゃりと握り込んだ。



*****




 コン、コンコン、コンッ。
 いつものように拍子をとってノックを4つ。
 ほとんど崩壊寸前の安アパートとは言え、かつては界隈でもモダンなアパートメントだったのだ。
 もちろんインターフォンの一つもついている。
 しかし、壊れたまま放置されているセントラルヒーティングの暖房機器同様、それも壊れたまま放置された状態で、むしろここにあるもので完全な状態を保った物の方が少ない。
 これまで戒が知らなかった世界。
 それは必ずしも美しくも優しくもなかったけれど、それでも眠ったままのように澱んだ世界でただ立ちすくんでいるよりも、よほど鮮烈で刺激的だった。
 …眠ったまま腐っていくよりずっとマシだ。
 しばらく応答を待つ。
 しかし、いつもは快活な声で出迎えてくれる少女の応えはなかった。
 …留守にしてる?
 昼間のうちに短時間とは言え一度は屋敷に帰ったものの、昨夜を除き父がガッツリ屋敷にいた二日間を挟んでここ3日ほどは、まさに入り浸り状態で連泊していたからさすがに昨日は泊めてもらえず、ほとんどジーナに蹴り出されるようにして追い出されてしまっている。
 そうなってしまえば、気持ちはともかく実際には小学生でしかない戒には、父に無断で外泊させてくれるところなどそうあるものではない。
 もちろん彼が望めば、屋敷への連絡付きではあったが両手を広げて歓迎してくれる‘学友’の心当たりはいくつもある。
 しかし、ただ父と顔を合わせたくないが為だけに、そうした取り巻きたちを頼るのは憂鬱だった。
 少しも一緒にいたいとも思えない輩ばかり。
 …滋オバサンはクリスマス休暇でハワイだかタヒチだからの別荘行ってるから、まあいいけど。
 一週間にも及んだ大祝賀会パーティの後、数年ぶりのオフをとっていた父も、さすがに今は再び激務に立ち向かい、出張がなければ屋敷に寝に帰る程度の生活に戻っている。
 戒は父親を避けていた。
 自分でもいかにもガキっぽい反抗だとは思うが、いつの頃からか、あれほど大好きだった司と顔を合わせるのを忌避するようになっていた。
 けっして父を嫌っているわけではない。
 だが、戒に見せる優しい父親の顔の向こう側に、まるで違う顔が二重写しに見える気がして、いつの間にか司を避けるのが戒の習い性となってしまっていたのだ。
 もし、うっかり顔を合わせてしまって、自分の知りたくない何かが父の口から飛び出してしまったら?
 すべてを知りたいという気持ちとは裏腹に、その真実のすべてを知っていて答えることのできる唯一の人間であるはずの父から、その真実を聞いてしまうのが怖いのだ。
 もし、知ってしまったら…、その先を想像することがきない、そうすることが何よりも恐ろしかった。
 …俺は。
 ガチャ、
 「なんだよ、朝っぱらからうるせぇから誰だと思ったら、戒、やっぱお前かよ」
 彼の執拗なノックに出迎えたのは、期待していた赤毛の少女ではなく、彼女の巨漢の弟だった。
 「…ジュリオ」
 とても小学校を卒業したばかりの少年には見えない太々しい顔の中で、クリッとしたつぶらな目だけが彼の姉によく似ていた。
 戒だと見て取って脇にどいたジュリオの横を、勝手知ったるなんとやらでさっさとくぐり抜ける。
 だが、やはり戒の屋敷とは異なり、すぐに見通せる程度の広さのアパートの部屋のどこにもジーナの姿はなかった。
 昨日までは、どこかに出かけるという話はしていなかったはずだ。
 「ジーナなら、エバンスさんとこの双子のガキの子守に出てるぜ?あそこの奥さんが急に産気づいて、旦那と病院行くからって昨晩ジーナが呼び出されたんだ。…お前が来るかもしれねぇって、俺は留守番頼まれたんだけどよ。お前、昨日ここに携帯忘れただろ?」
 「ああ」
 スウェットのポケットから出した携帯を差し出され、戒は黙って受け取る。
 画面をくれば、当のジーナからのメールも入っていて、連絡がとれないことに文句タラタラ、その連絡先である携帯は当のジーナの家にあったというのだから、笑ってしまう。
 そんな戒の笑顔が珍しかったのだろう、面食らったように彼の顔をマジマジと見ているジュリオの間抜けヅラに出くわし、戒が不機嫌にムッと顔を背ける。
 「なに?お前って、たった一日留守にするくらいで、来るかもしれねぇとか姉ちゃんに心配されるほどここに入り浸ってんの?」
 弟とは言え、ジュリオが姉の下を訪れるのはせいぜい一ヶ月に1、2度くらいのことで、すっかり不登校になってしまっている戒ともそうそう顔を合わせることがなかったから、事情を知らないのも無理のない話だ。
 「…お前に関係ないだろ?」 
 「ん~、まあ、そりゃそうかもしれないけどよ」
 戒に突っぱねられて、口ごもるジュリオの顔は困惑している。
 それはそうだろう。
 ジーナは彼の姉なのだ。
 関係ないはずかない。
 しかし、彼の口から出たのは、ジーナを案ずるがゆえの言葉ではなかった。
 「関係ないっていうか、俺が口出す義理じゃねぇのかもしれねぇけど。でも、お前、あんまり姉ちゃんに近づき過ぎない方がいいぜ?悪ぃことは言わねぇ。お坊ちゃんはお坊ちゃんの世界に帰れ。お前に相応しいお嬢さんかなんかとママゴトしてろよ?」



◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ




web拍手 by FC2



関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて485】へ
  • 【愛してる、そばにいて487】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて485】へ
  • 【愛してる、そばにいて487】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク