「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影①

愛してる、そばにいて483

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 「こうしてお前とゆっくり飲むのも、ずいぶん久しぶりだな」
 手渡されたワイングラスを受け取って、珍しく濁った灰色の空ではなく青く澄んだ空を窓越しに眺めながら話す。
 司もデキャンタとグラスを手に、ソファを回り込んであきらの対面側へと腰を落とした。
 「…おいおい、司。お前、真昼間からいったいどんだけ飲むつもりだよ?」
 「昨日まで、愛想笑い振りまくばっかでロクに晩酌もしてねぇんだ。久しぶりなんだから、お前も付き合えよ」
 「まあ、俺の方は、どうせこっちに来てる間は半分オフだし、今日明日は正真正銘のオフだしな」
 道明寺ホールディングス主催の大型プロジェクト祝賀を兼ねたNY本社設立50周年を記念したパーティをやっと閉幕させ、一息ついた次の日、自社のNY社屋の視察を終えたあきらが道明寺邸を訪問して来ていた。
 「いつロンドンに帰るんだ?」
 「来週だな。一応、トラブルがなきゃ代理のヤツでしばらくは事足りるんだが、来月には欧州会議で新議長が就任の最初の声明を出すことになってるし、ちょうど今の時分、あっちこちとヨーロッパは火種を抱えてるから早々のんびりもしてらんねぇ」
 「…そうだな」
 「それでも、俺にしてみれば久々のオフだ。仕事人間のお前じゃねぇから、多少はのんびりさせてもらわにゃやってらんねぇからよ」
 ニヤリと笑うあきらの顔に、往年の遊び人の影が彷彿とする。
 とはいえ、
 「婚約者は?」
 「桜子?あいつは今ドイツで事業を始めてっから、やっぱり物見遊山ってわけにもいかねぇからよ。明日の午後にはドイツに戻ることになってる」
 「事業?」
 怪訝な司に、あきらが肩を竦めて苦笑する。
 「いわゆる美容ビジネスってやつだな。ミュンヘンを中心に、ドイツ国内にいくつか事業展開している」
 「ああ、あそこは今、BMWi(※ドイツ連邦経済技術省)主導で起業家の支援策の充実を図ってるからな。ドイツ国外からの進出も歓迎してるか」
 「あれでかなり商才があるみたいで、近々日本への進出も考えてるらしい」
 「…ふぅん?」
 大して司には興味はなさそうだが、それでも一応は相槌を打っているところに歳月があるだろうか。
 「て、ことで、さすがにオールナイトで…とかは付き合えねぇぜ?」
 そんな悪戯っぽい牽制に、司が鼻で笑った。
 「それこそ、俺の方が無理な話だ」
 「だよな」
 「まあ、それじゃあ、ウチに泊まって行けっつーのも、野暮な話か」
 「だな。今夜は一年の大半を離れ離れの婚約者とまったり過ごすことにしてっから、男同士で面突き合せて飲むのはまたの機会にするわ」
 気楽にそんなことをあきらは言ってのけるが、そうした機会を持てるのも今夜を逃せば、果たしていったいどれだけ先のことになるか。
 だが、それで互いに特に痛痒は感じないし、たとえこの後何十年とそうした約束を果たせなかったとしても、それでもまた会うことがあれば、どれだけブランクがあろうと彼らの間は変わらないという互いへの信頼がある。
 おそらく…類とも。
 しかし、今はまだあえて会う機会を設ける必要性を感じていないというだけで、会えればそれはそれでかつてと同じ付き合いができるのだろう。
 「婚約者といえば、お前の方の婚約者殿はどうした?」
 「最愛のヤツとクリスマス休暇に出かけた」
 「最愛のヤツぅ!?そりゃ、お安くないな。結婚前から、もうお互い仮面夫婦予備軍かよ?」
 さすがに驚いているあきらに皮肉に笑んで、司がぐびりとワインを口に含む。
 「予備軍も何も、最初からそのものだな」
 「……………」
 はぁ~と大きく溜息をつくあきらの言いたいことなど、もちろん司もわかっている。
 わかっているだろう司に対して、それでも言わずにいられないのはあきらの性分だ。
 「…相変わらず不毛な人生やってんな」
 「ふん」
 「それに付き合わされるカミさん…じゃ、まだねぇけど、相手も気の毒な話だ」
 そこらへんはさすがに人非人の自覚のある司にしても同意できる。

 けれど、そんな人非人をわざわざ選んで契約を持ち込んだのは滋の方なのだ。
 本来なら、誰に咎められることでもないはずだった。
 「もしかして、ウチの別荘使いたいって」
 「ああ」
 「かぁ~、亭主公認どころか、斡旋してるってか」
 自分だってもっと若い頃には、そうした夫婦の妻を掠め取って無聊の手慰みに遊んでいただろうに、まるで常識人のように頭を抱えるのがおかしい。
 「ま、そうしてやるのもやぶさかじゃねぇが」
 「…あ?」
 あきらが鼻で嗤う司を不審げに見返す。
 「娘だ」
 「娘…ぇっ!?って、ああ、そっか。亡くなった前夫との間にできたハーフの娘ってやつか」
 「だな」
 さすがに音に聞こえた大財閥の令嬢のことだ。
 自身には直接関わりのない相手ではあるが、あきらもある程度滋の事情も把握していた。
 「彼女もきっと、悩ましいことがいろいろあるんだろうな」
 「……………」
 無言が肯定で、司は特には口に出さないが、それだけであきらもあらかたの事情は察しだのだろう。
 それ以上は、彼の婚約者については話題に乗せない。
 もちろんからかうには彼らの婚約が、他のそうであるカップルよりもさらに政略的で、たとえ本人たちが望んで結んだ関係であったにしても、あまりに冷え冷えとしたものであることがあきらかだったから。
 「で、お前の方のは?」
 「俺の方…なんだ、それは?」
 怪訝に眉根を寄せる司を、あきらが呆れたように見やる。
 「戒だよ、戒。お前の息子のことだよ。真面目に学校に通ってんのか?屋敷にいるなら、呼べよ。俺も久しぶりに顔見てぇし、一応土産も用意してるんだぜ?どうせなら、小遣いの一つもやりてぇじゃねぇか」
 さすがに気遣いの男だ。
 そんな如才のないことを言う。
 けれど…。
 「ああ、せっかくだが、あいつならここんとこ女のとこに入り浸ってる」
 予想外の返答に、あきらが目を瞬かせた。
 「女ぁ?へぇ、やるなぁ。高校生になるまでまったく女に興味の欠片もなかったお前とは…………って、おい!あいつ今、いったいいくつだよ!?」
 あきらが驚愕の声を上げた。



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