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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第四章 夢の続き①

夢で逢えたら157

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 「思いしれ!」
 の言葉と同時に、SPたちが飛び出してきた男を羽交い絞めにし、司へと浴びせようとした液体の入った瓶もすんでのところで取り上げた。
 だが、勢い余って、わずかに開いた口から液体が司の腕へと降りかかり、見る見るスーツの袖が変色し、多少飛び散った手の甲に火傷を作った。
 「硫酸だ!」 
 誰かの叫びがパニックを呼び、混乱の渦へと周囲を巻き込もうとしていたところを、当の被害者の司が制する。
 「…落ち着つけ!暴漢は取り押さえた。警察が来るまで、その場で待機していてくれ」
 低いが通る威厳のある声に、浮足立ちかけた報道陣も冷静になり、硫酸に焼かれた片手を抑えながら凛と立つ司へとカメラを向ける。
 「…道明寺さん」
 小声で呼びかける優紀に目だけで答え、SPたちを再び従え、モーゼの十戒のごとく開けた道を悠然と歩く。
 「遠山」
 「はい」
 「…後で記者会見を行う。スケジュール空けられるか?」
 司の静かな声に、優紀は司のこれからの予定を頭の中で組み替える。
 「空けます」
 空けられるでも、頑張りますでもなく、「空ける」とキッパリ言い切る頼もしい言い様に、司がふっと微笑む。
 「…いつまでも、こんな騒ぎに付き合ってられっかよ」
 わずかに痛みに震える司の手先の震えに、傍に控える優紀だけが気が付いていた。



 空は晴天。
 人々で賑わう通りを一人歩きながら、つくしはふと日の沈んだ夜空を見上げた。
 郊外に比べれば満天の星空とは言い難かったが、ここのところ雨が続いていただけに、つくしの気分も明るく和む。
 せっかくの日曜日。
 レンとデートでもしたかったが、何かと多忙なティーンエイジャーは、いつまでも母親のお供に付き合ってはくれなかった。
 友達と会う…とは言っていたが、どうせ可愛い女友達に決まっている。
 別に今更息子の交友関係に嫉妬しているわけではなかったが、こうして久しぶりの晴れた日、付き合ってくれる友人にも恵まれない母親を少しは労わって、たまには遊んでくれるくらいしてくれてもいいのではないだろうか。
 このところ、いくら経済的に余裕があるとはいえ、仕事もせずに家で燻っていることに屈託を感じてきた。
 どうやらレンはNYを離れるつもりはないようだし、司もつくしの嫌がることはしないと言っている。
 だとすれば、ここNYでまた再び就職先を見つけてもいいはずだったが、NYに留まれば、またズルズルと司や類との関係を続けてしまうことは想像に難くなかった。
 彼らと縁を切る…。
 なんて寂しく、哀しいことであるだろうか。
 正直、彼らと過ごす時間は楽しかった。
 ただ他愛無いことを話し、笑い、ただの友人として再び付き合っていければ…と考えなかったでもない。
 もっとも、男たちがそんな関係を許してはくれなかっただろうけれど、それでもそう願わずにはいられなかった。
 しかし、今となってはそんな友人関係さえも彼らと続けるわけにはいかない。
 ブルルルルル。
 携帯電話の振動に気が付き、つくしは肩に下げていたハンドバックから取り出した。
 そういえば、さきほど映画館で一人っきり!で映画を見た時にマナーモードにして、すっかり忘れていた。
 また、山ほどの携帯履歴に司の名前を見るのかと思うとうんざりする。
 逆に、いま、バイブの振動に気が付いたのが奇跡のようだった。
 「はい」
 『おはよ~、いま、何してた?』
 言葉とは裏腹に、相変わらず眠そうな類の言葉に、ぷっと吹き出す。
 「おはよ、ってこっちはこれから、そろそろお休みだよ。私はいま、映画見終わって、軽く食事してから帰るところ。そっちはこれから出社?」
 『…って、いうか移動中。いいなあ、俺もDr.と一緒に映画見て、デートしたかった。レンと?』
 「なんで、息子よ。私にだってデートする相手の一人や二人いるんだから」
 ツーンと澄ましていうつくしにお見通しなのか、類がクスリと笑って問い返す。
 『ふ~ん、デートしてるんだ?』
 「うっ」
 言葉に詰まるつくしをさらに追い詰める。
 『デート?』
 「…一人よ、どうせ。悔しい~」
 『はは、何も言ってないよ。それこそ、なんで悔しいのさ?あんたが俺じゃない誰かとデートしてたら、それこそ俺が悔しいでしょ?戻ったら俺とデートしよ?』
 返答に詰まって、つくしは言葉を返しそびれた。
 甘い声音に年甲斐もなくドキっとする自分が気恥ずかしく、誰も見ていないのにキョロキョロと周囲を見回す。
 けれど、類の方は別段返事がなくてもかまわなかったらしく、そのまま会話を続ける。
 『あ~、眠い。このまま、帰って寝たい気分』
 「また、そんなこと言って。秘書さんが泣いちゃうでしょ?」
 『もう泣いてる』
 「もう!類ったら」
 何気ない会話を交し合い、笑いあう。
 和やかな時間だった。
 『昨日、総二郎やあきら、滋たちと飲んでさ』
 「え~?本当?みんな元気だった?滋さん、NYに来なかったよね?うわ、会いたかったなあ」
 『相変わらずだよ、みんな。大河原、中東在住だから、顔色日本人じゃなくなってた』
 「はは!そうか、滋さん、あっちの人と結婚したんだっけ」
 それも王族に連なる人物という奴だ。
 大河原財閥の石油事業の関係だけでなく、それらのこともあって滋はオマーンにもう十数余駐留していた。
 『懐かしい人にも会った』
 「えー?誰?」
 『内緒』
 「…類~」
 人に興味を抱かせておいて、バッサリ切り捨てる類の相変わらずのイケズさに、つくしの口元がヒクヒクと震える。
 ふと目に入ったイタリアン・カフェのテラス席の客が食べていたピッツァが美味しそうで、立ち止まって店の看板を見上げた。
 …どうしようかな。
 『…Dr.?』
 「ああ、ごめん、なんだっけ?」
 やっぱり、ここで食べよう。
 ガラン、ガランと音を立て、店のドアをくぐり、空いた席に座る。
 ちょうど、横を通ったウェイターの持つ皿から香る、美味しそうなピッツァの濃厚なチーズとバジルの香りに、つくしは鼻をヒクつかせた。
 ここにして、正解!
 『総二郎とあきらが、あんたは何者かって聞いてきたよ』
 「……」
 『大河原と三条が、Dr.は牧野なんじゃないかって、あいつらに言ったらしいよ?』
 「…類、まさか」
 気色ばむつくしに、類が否定する。
 『俺は言ってないよ、何もね。ついでに言っておくけど、司も言ってない…かな。あんたが言わないことを、自分が言うわけにはいかないってさ。あの考えなしも、成長したよね、そう考えると?』
 「私が言わないことって…それって、もしかして微妙に肯定してる?」
 頭を抱えるつくしに、類がクスクスと電話の向こうで笑っている。
 『まあ、そう総二郎たちもとったみたいだけど?』
 「ちょっと!類!?」
 思わず大きな声をだしたつくしに、周囲が何事かと振り向く。
 それに小さく会釈で謝罪して、コソコソと小声に戻った。
 『あいつらは仲間だよ』
 「…わかってるわよ、そんなこと」
 『あんたが秘密にして欲しいこと、あんたが守って欲しいこと、あいつらは必ず秘密にするし守る。それじゃあ、ダメ?』
 わかってる。
 わかってるから、迷惑をかけたくない。
 大切な人たちだからこそ、危険な目や、窮地に陥れたくなかった。
 『みんな、牧野に会いたいんだよ』


 俺、この後の便で日本を発って、一度そっちに戻るから、という類との電話を切って、つくしは薄手のピザを口に運ぶ。
 あれほど食欲を刺激した味が、まるでわからなかった。
 ふと、ここのところ、顔を見ていない司を思い浮かべる。
 わざとではないが、ずっと出ることのできなかった携帯の履歴に目を止め、溜息をつく。
 どうしたらいいのか、自分がどうしたいのか。
 気が付けば司のことを考えてしまっていた。 
 …寂しいのかな。
 唐突に浮かび上がってきた考えに、ブルンブルンと必死で首をふり、頭から司の顔を振り払う。
 『~していた道明寺司氏の怪我の具合は…』
 ふと耳に入った司の名に、つくしは目を瞬かせ、物思いに耽っていた顔を上げる。
 ちょうど、ななめ前の席に座っている客の手元に握られた携帯電話のワンセグから流れてくる声なのに気が付いた。
 『犯人は、自分の未成年の娘が成年の男にレイプされた経験があり、その記憶を彷彿とさせた道明寺氏に対する悪意を深めたと供述中で、通りかかる氏に硫酸を浴びせかけ、怪我をさせた模様。薬物使用の疑いもあり、警視庁は早急に男の背後関係も確認する方針です』




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相互リンク・相互RSSの申し出くださった方へ

こんにちは^^
初めまして。
とても、たくさんの読書量、驚きました。
多方面に渡って、見識を広められているのだなあと感心しました。
私事ですが、我が家の次男は海の生物や、昆虫などが好きでよく図鑑を眺めていますが、クラゲのことはサラリと流す程度でしか感心をしましていませんでしたが、110種類もいるのですねぇ。
水族館などでその一部を見ますが、ホント、不気味ながらに美しいと言う相反する存在。

さて、前置きが長くなりましたが。
相互リンクのお誘いありがとうございましたm_ _m
とても光栄で嬉しく思います。
ですが、すいません。
まだ、当サイト、出来てから日が浅いためにまだまだ、いろいろな整理が追い付かず、リンクまで手が回らない状態。
いずれはリンク集なども作ってみたいのですが、いまのところその予定がなく。
また、花男の二次サイトであるために、将来的にリンクを貼るにしても
花男サイト様で構成したいと思っています。
リンクをしていただけることは、とても嬉しいので問題ありません。
そういうわけで、すいませんが、今回は当方からのリンクは遠慮させてください。
RSSについては、当方、基本毎日更新であることと、よそ様へはフラリと伺わせていただいていることから、
特に設定しておりません。
本当にすいません。そして、ありがとうございましたm_ _m
これから、そちら様の方にも度々、寄らせていただきたいと思います。

追伸…サイト様へ伺ったのですが、コメント欄にはメルアドを記載しないと書き込めなかったので、
  公開となってしまいますが、こちらに返信させていただきました。

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