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「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影①

愛してる、そばにいて474

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 「………わかってる」
 それはもともとの契約の一つだった。
 司と滋が結んだ契約。
 互いが互いの持っているものを利用しあい、互いの目的達成のために協力し合うこと。
 司は滋…というよりは、彼女に付随する大河原財閥総帥の一人娘の娘婿という立場を最大限に利用して、道明寺財閥での支配権を完全に掌握することを。
 滋はテロで夫を亡くし、寡婦になったことで再び大河原財閥の次期後継者を巡る争いに巻き込まれることになり、それらの危険からの庇護を司に求めた。
 ―――娘と自分の命を、そして娘の心と尊厳を守ってほしい。
 大河原財閥の実権や富を望む者たちにとって、大河原家の唯一無二の継承者であり、世界中に散らばる会社の筆頭株主である総帥の保有する株ほとんどすべてを継承することになる滋母子は垂涎の的だったのだ。
 まさに今時と言えるようなことだったが、金や権力が絡めば人は容易に血で血を争うようなマネをする生きものなのだ、いつの時代も。
 自分たちの身の安全を条件に、滋はいつか大河原財閥そのものを司に売り渡すと約束していた。
 …本当にパパさえ元気でいてくれてたら。
 あるいは、滋が家を捨てた時点で、その父が後継者を別に指名し、株券を分配してしまってくれていれば、けっしてこんな博打のような契約など結ばなかったのにと、つい父親に申し訳ないことを考えてしまう。
 しかし、だからと言って、一つの大企業を守るものとしての父親にも立場と責任がある。
 いくら我が子のためにしろ、有為の後継者が見つからないままそう簡単に自身の地位を退くことも、また筆頭株主として保有している株を分配してしまうわけにもいかなかったのだろう。
 「俺にとっては、道明寺を掌握するのが第一の目的で、大河原なんぞしょせん副次的なもんだ」
 「それでも、その最悪の時が来ないように、精一杯私たちを守ってくれるんでしょ?」
 いまだ、滋は司を信じきれてはいなかったが、しかし、それでも彼女の直感が告げたのだ。
 信じるに足る男。
 …この男なら信じられる。
 たとえそうでなくても、彼女はこの男を信じるしかなかった。
 滋と結婚して、子供を生ませた後に、彼女の娘を殺すような男ではないと。
 だから、
 「お願い。私と…萌奈を、私のこの世で一番大切な私の娘を守ってよ」
 …そのためにならなんでもする。
 言外の覚悟をその眼差しに宿して、司へと懇願する。
 「……契約だからな。お前たちが俺の庇護下で俺の指示に従う限り、お前たちを守ると約束した。…お前たちがその約束を守るかぎり、俺も約束したことは守ろう」
 「…わかった」 
 今はそれだけで。
 滋は一つ頷き、ソファから立ち上がる。
 司はそれを見送るでもなく、引き止めるでもなく、一人淡々とグラスを煽り、あとは滋を一顧だにしない。
 そんな男の秀麗な横顔をなんとはなしに振り返り、ふと滋の心の内に悪戯心が湧き上がった。
 この女などまるで興味のなさそうな、感情など欠片も残っていなさそうな男が、熱くなる時とはいったいどんな時なのだろうと。
 …私のことなんて、周りを飛び回る蠅ほどにも興味を抱いてなさそうだけど。
 すでに以前、一度試してもいた。
 しかし、あえて滋は気配を殺すことをせず、無防備な背中を晒している…晒しているように見える男の肩から抱きついて、唇を耳元に寄せる。
 「ねっ?司って、…まだED治ってないの?」
 「……………」
 ピクリとも反応することなく、滋に抱きつかせたまま酒を煽る男の形の良い耳朶に唇を寄せ、含もうとして大きな手のひらに阻まれる。
 「チュッ…ありゃ?」
 「…男漁りしたいなら止めねぇから、身元の確かな適当なヤツをベッドにでも引っ張り込めよ?」
 「ええ~、なによそれぇ~、失礼しちゃうわねぇ」
 激烈な反応ではなかったが、微動だにしない冷たい表情のままの横顔が彼女を拒んでいるのはあきらかだ。
 それでも、なけなしの女のプライドがくすぐられて、なおも迫ってみる。
 「ED完治してないなら、私で試してみるってどう?」
 「断る」
 「はぁ~、なんか徹底してるわねぇ。まあ、これまでも年頃?の男女が寝室で顔を突き合わせてたって、まったくあんたにそうした素振りがないからわかってはいたけどさ」  しまいには、迫った滋をまるで蛆虫でも見るかのような目で見た挙句に、触れたところに鳥肌を立てていたことさえあるのだから、彼女が司をゲイではないかと疑うのも無理のないことだろう。
 「一応私もね、曲りなりとも婚約者がいる身で、よそで男漁りとか、そういうことするほど貞操観念緩くないのよね。いくら婚約者とはそういう関係にはなれないとしてもさ?契約している間は私も仁義を守るわ」
 「…それは、けっこうなこったな」
 司の方はどうでもよさそうに、その秀麗な美貌に薄ら嗤いを浮かべるのみで特別な感慨を受けた素振りもない。
 「あんただって、そこは守ってよ。いくら恋愛抜き、夫婦生活なしを承知の婚約関係だって言ったって、それなりに世間体だって外聞だってあるんですからね!」
 「ふん」
 「なんかムカつく~」
 鼻で嗤う司の手をかいくぐり、滋が半ば意地になって垣間見える男の首筋に直接唇を落とす。
 「チュッ」
 が、触れた首筋にやはり浮いている鳥肌に気がついて、さすがの滋も呆れて鼻白んだ。
 …やっぱ、こいつってゲイ?
 「離せ」
 「…了解」
 静かな声音の中の司の嫌悪と怒気を感じて、滋はパッと離れた。
 「俺の後ろに忍び足で近づかなかったのは正解だが、初めにも言っておいた通り、必要以上に俺に触んな。…関わろうとするな」



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