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「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影①

愛してる、そばにいて473

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 待つことしばし、寝室から出てきた司はすでにバスローブに着替え、濡れ髪のまま居間へと現れた。
 見るともなく居間のソファに腰掛けたまま、テレビを観ていた滋が振り返れば、どうみても歓迎しているようではなかったが、それでも特に彼女を追い出すでもなく、一応は許容してくれているらしい。
 ジロジロと男のストレートになった髪型を見回してやる。
 「あいかわらず妙な髪質。最初、ずいぶんきっついパーマかけてるもんだなって思ってたけど、癖っ毛てそんな風に濡れると真っ直ぐになるもんなんだ?」
 別に女として興味を持って欲しいわけではなかったけれど、それでも枯れるにはまだまだ若いつもりでいる滋にしてみても、司の自分に対するあまりに興味のない態度は面白くない。
 曲りなりにとも婚約者なのだ。
 …これでも、けっこうプロポーションには自信あるんですけど。
 もちろん、最初から双方メリットあっての契約関係だということは十分承知していた。
 愛だの、恋だの、そんな甘い感情を求めていたわけではない。
 それどころか女として見られでもして、妻としての役割を求められてもそれはそれで厄介だと思っていたところなのだ。
 だから司の割り切った態度はむしろ彼女にしても望むところで、またそういう男だからこそ滋もこの結婚に乗り出したのである。
 それなのに、 
 …なんか、つまんない男だよね。
 綺麗なのは見かけばかり、ふるいつきたくなるほど美しい男だというのに、彼には人間らしい息吹や温もりが感じられず、機械仕掛けのロボットのようで、正直滋は司を気味が悪くも感じていた。
 司はどこから持ってきたのか、手に持っていたA4サイズの封筒をカウンターに投げ出すと、冷蔵庫からペットボトルを取り出し、キャップを捻って水を口に含んだ。
 ゴクゴクと水を飲み干す度に、司の動く喉仏に妙な色気と妙な動揺を感じて、滋は視線を外す。
 ―――男に飢えているつもりではないのに。
 「パ、パーティっ!」
 「……………」
 「今回のはブッ通し一週間もやるんですって?今時どこも緊縮財政で、派手なヤツは控えているっていうのに、いくら道明寺家の威信を示す機会にしてもずいぶん見栄を張りすぎなんじゃないの?」
 「…まあ、たしかに、そうだな。が、今回のはプロジェクト成功の祝賀というより、示威行為がメインだな」
 「示威行為?」
 まだ1/3ほど残ったペットボトルをカウンターにドンと置き、かわりに先ほど投げ出した封筒を手に司が滋へと歩み寄る。
 「長年のオヤジの長患いが原因で、ウチの屋台骨がかなり揺らいじまってたのを、世間のキツネやタヌキどもにもたいがい見透かされてるからな。すっかり足元を見られていた。それを新社長である俺の下、磐石であることを示す必要がある」
 「でも、まだ旧勢力を完全には駆逐できていないんでしょ?」
 「元々、そう簡単に完全に駆逐できるもんじゃねぇのは承知のことだ。…お袋を実質実権のない名誉会長に押し上げたことで、そいつらの表立った動きを封じ込めたってだけだからな」
 「……親子で覇権争いとか、ホント、ゾッとしないわ、あんたんちって」
 顔を顰める滋を、司がフンと鼻で嗤う。
 そして彼女が座っているカウチソファではなく、対面側の一人がけソファへと腰を下ろして、手に持った封筒を滋へと差し出した。
 「…なに?」
 尋ねても、受け取れと顎をしゃくられるだけで答えない司にため息をついて、滋が仕方なく封筒を受け取る。
 「どちらにせよ、お前の方でも俺との関係を誇示して、政敵どもに見せつけるチャンスだろ?自分と…娘の安全を確保したけりゃあ、せいぜい気張れよ」
 「わかってるわよ。そうでもなければ、誰があんたみたいな冷血漢と婚約なんて身売りするようなマネするかっていうのっ!」
 イヤイヤながら手渡された封筒から書類を引き出し、滋がざっと一読する。
 「……え?これって」
 驚きに滋が目を見開き、司へと視線を戻した。
 しかし、当の司はコーヒーテーブルの上のシュガレットケースからタバコを一本取り出し、口にくわえただけで顔色一つ変えるでもなく、滋へはいちべつもくれない。
 「道明寺でも大河原所有でもない、俺のダチんとこの別荘だ。クリスマスを挟んで1週間、そこで娘と過ごせ。…ウチのSPが24時間警護する」
 「でも、萌奈の誘拐を防ぐ為には、不審人物が入れない全寮制の女子校の寮からは当分出せないって」
 「だから、クリスマス休暇だ。休暇が終われば再びお前の娘は学校の寮へ、お前もここへ戻れ。お前のオヤジの後釜を狙う連中にしてみれば、お前と俺が結婚してガキができることを何よりも恐れてるんだ。…今時世襲なんて、それこそどれだけ時代遅れなんだよっつーやつだけどな」
 「あんたが言う?」
 誰よりも世襲に縛られ、また、その生まれを最大限利用して、財閥に長年貢献してきた母親さえも追いやる勢いで野心を達成してゆく男の淡々とした横顔を滋が睨む。
 しかし、当の男は軽く肩を竦めて、火をつけたばかりのタバコを口に咥えたまま、琥珀色のウィスキーをバカラのショットグラス※に注ぐばかりだ。
 「ちょっとぉ!ウィスキーをストレートでだなんて、明日も仕事の後にパーティに参加しなきゃならないのに、飲み過ぎじゃない?」
 滋がいわずもがなな忠告をしてしまったのはなぜだろう。
 …どうせ、私の言うことなんか、ロクにまともに聞きやしないのに。
 そしてもちろん、滋の予想通り彼女の気遣いの言葉を司は一切斟酌することなく聞き流す。
 「俺だからこそ言うんだ。どれだけ時代錯誤だと思ってたところで、むやみやたらにそうしたことに逆らって、知らん顔しててどうする?自分がどう思っていようと、他人はそうは見てくれねぇ。お前がいい例だろ?」
 「……」
 その通りだった。
 結果的に、大切な人たちを守れず、危険に晒すことになり、司を頼らざる得なかった滋にはグウの音も出ない。
 「大事なもんを守りたけりゃ、何を犠牲にしても、利用してでも自分自身で力を持たなけりゃウソだ」
 いずれ愚かさのツケを払うようになる。
 自分と…そして、自分が大切にする者たちが。
 それは滋にしてみても大いに自覚し、実感していたことだったのだろう。
 それ以上反駁することなく、手の中の書類に見入って…ジワジワと湧き上がってきた喜びに顔が輝き出す。
 「……嬉しい。あんたが、こんなことを私にしてくれるとは全然思ってなかったから」
 「別にお前の為ってわけじゃない。年末年始のこの忙しい時期にまで、俺はお前にかかずらってられないのが正直なところだし、下手にベッタリ四六時中一緒にいるのもそれはそれで危険だ」
 滋が結婚前にして道明寺家に間借りしているのもそうした危険回避…暗殺や誘拐を防ぐ目的が一つだったが、強硬手段に出ようとしてくる人間がいないとも限らない。
 しかし、実際には常に厳重な警備を張り付かせ、警戒を怠らない司と一緒で危険に晒される心配は少なかったし、いくら大河原財閥という強大な力と財を狙う者たちが暗躍しているとは言っても、大河原財閥のみならず道明寺財閥をも真っ向から相手取り、喧嘩を売れる相手もいようはずがなかった。
 「言っておくが、お前や娘が万が一誘拐されても、最悪の場合、俺はお前たちを見捨てるぞ?」



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※ショットグラス=ウイスキーやリキュールなどをストレートで飲むための小さなグラス。ストレートグラスとも呼ばれている。


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