「愛してる、そばにいて」
第7章 光と影①

愛してる、そばにいて472

 ←愛してる、そばにいて0471 →愛してる、そばにいて473
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

~第7章 光と影~


 煌びやかな紳士淑女が笑いさざめく中、一際美しく目立つ男女が衆人の注目を浴び威風堂々と並び立っている。
 その中央に座するに相応しい佇まいと気品、そして美貌だけでも彼らが只人ではないことは一目瞭然で、その前後左右、所狭しと少しでも彼らに近づこうと押し合いへしあう人々の様を、その一方の男が冷然と睥睨していた。
 「本当にお似合いで、これほどの良縁は近年では実現しなかったことですから、社交界でも特に今、喜ばしい話題としてどこのサロンでも持ちきりですのよ」
 「ありがとうございます。私なんて一時期、社交界からも遠ざかっていましたし、こうした華やかな場どころかほとんど引きこもっているようなものでしたから、皆さんにはもうすっかり忘れ去られたものと思っていたんですよ」
 「あらあらまあ、なんてことを。大河原財閥のご令嬢を蔑ろにできる方なんているわけがないじゃありませんか」
 びっしりとしたバサバサの睫毛に囲まれた青い目を瞬かせ、大袈裟に驚いて見せる女の顔は真からそう思っているように見える。
 しかし、表の顔と腹の中とでは、真逆180度異なる海千山千の古狸女狐たちなど、もはや珍しいものではない社交界の人間にとって、そんな女のあからさまなお追従を本気にする者などいるはずもなかった。
 当然、そのお追従の的となっている当の二人にしても当然のこと。
 …ホント、よく言うわ。私が家を出た時なんて、真っ先に後ろ指差してせせら笑ってたクチのくせして。
 そんな嘲りを綺麗に笑顔の中に隠して、
 「そうですね。変わり者の出戻り変人女でも、そうした生まれがあればこそ、今をときめく美貌の御曹司を射止められたわけですものね。おかげさまで、一層大きな顔をして幅を利かせられるようになりましたし?なんだかんだ言って、面と向かって嫌がらせをされることもありませんから、神経がか細くてもなんとかやって行けそうですわ。ほほほほ」
 内心でフンと鼻を鳴らし、高らかに笑うことでまでしてのける。
 「…ま、まあ、そんなご冗談を。ほ、ほほほほ」
 あきらかなあてこすりにヒクヒクと顔を引き攣らせている相手の顔に、少しは溜飲が下がった。
 「滋」
 美声ではある。
 しかし、人間味を感じない冷たい声音が彼女―――滋の名前を呼んで、しゃくられた顎の先へと視線を向ければ、彼ら二人が今夜このパーティに参加した目的の人物のうちの一人の姿が、人ごみの間でチラチラと見え隠れしていた。
 よくやるといえばこの目の前の男にしてもそうで、自分と滋が、影で何を言われているかわかっているくせに、何食わぬ顔で平然としていられる神経の野太さには、同じく図太い自覚のある滋にしても大いに感心させられるところだ。
 …ホント、こいつって見かけそのまんま、中身まで機械かなんかでできてるんじゃないの?
 そんなことを思いつつ、表面はあくまでも朗らかに幸せの絶頂カップルを演出して、滋は世間で言うところの似合いの婚約者である男へとニッコリ微笑み頷き返した。
 そして、周囲を取り巻く追従者たちへと、
 「では、知り合いを見かけましたので、私たちはこれで失礼させていただきますわね」
 会釈する。
 滋にそう言われてしまえば、それ以上彼らを引き止めておくことが出来る人間など、この場にいるはずもない。
 仕方なく道を開け、口々にまたの機会を願って司や滋へと挨拶を返し、三々五々にと散開してゆく。
 優雅な仕草で差し出される司の腕に腕を絡めて素直に寄り添いながら、前を向いたまま笑顔の滋が小声で毒づいた。
 「ちょっと、司。何自分だけ涼しい顔で他人事みたいな顔して、おべっか使い連中のあしらいを、ちゃっかり私一人に押し付けてくれちゃってるのよ…」
 「連中の嘘くせえ愛想笑い以上に、ぶ厚い脂粉だの香水の臭いが臭くてたまんねぇ」
 「臭いのは私も同じだっつーの。いくら私が会社のことでは役に立てないからって、首振りお愛想人形の役目なんてひどいじゃないの」
 傍目にはどこまでも仲睦まじい婚約者同士の語らいにしか見えなかっただろう。
 「実際それくらいしか役に立たねぇんだから、少しくらい辛抱しておとなしく俺の露払いしてろ」
 「キ~ッ。あんたって、マジでめっちゃムカつく」
 一人威勢を上げ文句を言っている滋を軽くあしらい、すでに司の意識は好奇や敵意など、さまざまな意図をもって彼を観察している周囲の視線の主たちへと向かってしまっている。
 そうした視線の主たち同じく、司もまた相手を値踏みして、敵と引き入れるべき相手、あるいは中立のまま牽制すべき相手を見定め、無言の戦いを繰り広げていた。
 滋にしても元々がそうした世界に生まれついた女だ。
 その中で生きるべく育ち、目を養われ、振る舞いを教え込まれて育っているだけに、くだらない文句を言いつつも、如才なく振る舞いけっして司の妨げになるような言動はしていなかった。
 それが彼女にとってもごく自然なことで、息をするように苦を感じることもない―――司と同様に。
 目的の人物の目前に経てば、それまでの子供っぽい抗議など嘘のように表情を取り繕い、いかにもセレブな貴婦人然とした優美な笑みを浮かべ、彼らに気づいた相手へと自ら声をかける司のサポートへと回る。
 「Mr.マッカシー」
 「…おお、これは、Mr.道明寺と?」
 「私の婚約者の…滋・ワハビです」
 「そうか!君が大河原氏の!」
 「初めまして、Mr.マッカシー。お噂はかねがね父からも伺っていました。お会いできてとても嬉しいですわ」




*****
 



 「はあ~、疲れたぁ」
 部屋に入るなり、大ぶりのカウチソファへとダイビングして大の字になる滋の後から司が入室して、自分の部屋よろしく寛いでいる女を絶対零度の冷たい視線でチラ見し、無言のまま居間を通り抜けて寝室へと入ってしまう。
 ガチャン、バタンという二重の開閉音からして、シャワー室にでも篭ったのだろう。
 それほど神経質な男には一見見えないが、ここ1年弱の間で、何十回となくパーティのパートナーとして同伴した滋には、経験から容易に推測できる。
 …そういえば、あの目の周りに箒みたいなツケ睫毛した女にかなり触られてたっけ。
 人一倍女を惹きつける外見の男が、並み居る美女たちの誘惑を撥ね退け、それどころか嫌悪してすらいるように忌避している奇妙を思う。
 「息子がいるんだから、まさか、本当に噂通りゲイってわけでもないよねぇ?」



◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ




web拍手 by FC2





※時系列…

第2章 『罪』

第5章 『罰』

***

第1章 『泡沫に沈む月』

第3章 『風になる日』

第4章 『凍える牙』

第6章 『始まりの刻橋(きざはし)』

第7章 『光と影』

となります。
関連記事
総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0471】へ
  • 【愛してる、そばにいて473】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0471】へ
  • 【愛してる、そばにいて473】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
女性に大人気!ビジネスから恋愛相談まで全部500円~!  
価格満足度97%、日本最大級のココナラに今すぐ登録!!

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘