「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋③

愛してる、そばにいて0471

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 切れた電話をしばし見つめ、司は携帯電話をジャケットの内ポケットに戻した。
 『…そろそろお屋敷に到着いたします』
 インターフォンからの運転手の報告に、見るともなく見慣れた屋敷への道筋を車窓から眺める。
 なんの感慨もない。
 だが、今日は不思議に心がざわめいて、滅多に動くことがなかった感情が再び揺れるのを司は感じていた。
 …なんだ。
 見慣れた生垣の木々の合間から指す木漏れ日が、チラチラと道路をキャンバスに描く影絵に目を細める。
 空が青い。
 曇が白い。
 おそらく夏の初めに差し掛かった日差しは、それそこに強いが、NYのこの時期はとても過ごしやすく、車の外を吹き抜ける風はきっと気持ち良いだろうと、ふと司はそんなことを思う。
 ‘彼女’を失って以来、そんなことを思ったことなどこれまでなかったというのに、その気配さえ感じることのできないこの遠く離れたこの地で…。
 すべて‘彼女’が教えてくれたことだ。
 …総二郎と話したからか。
 ‘彼女’の住まう国からの風が、一時、司にそんな感覚を取り戻させたのかと一人忍び笑う。
 だが、やがてはそんな奇妙な感覚も、屋敷の敷地内に入り、車がエントランスに近づくとともに徐々に薄れて行った。
 『お待たせいたしました』
 …こんな天気のいい日は、あいつと散歩してぇな。



 ーーー司ぁ!ほらほらぁ、早く来て!風が気持ちいいよぉ。お日様が暖かいんだからぁ、お散歩に行こう。少しでも外に出て気分転換をすれば、すっごく元気になれるんだから!あはははは。




*****




 「「「「「おかえりなさいませ」」」」」
 花道に連なって並ぶ使用人たちの間を無言で通り過ぎ、司は屋敷の家屋内へと足を踏み入れる。
 2週間ぶりの我が家。
 我が家といっても、司にとっては世界中に散らばる屋敷の一つにすぎず、ただここに帰れば他の屋敷にはいないただ一人の存在ゆえに、特別な思い入れがあるだけのことだ。
 「おかえりなさいませ、若旦那様」
 正面玄関の中央にて出迎えた総執事長に小さく頷き、司はぐるりとエントランスホールを一巡見回した。
 「…戒は?」
 「ここ数日、帰宅されていません」
 総執事長の言葉に内心肩で大きくため息をつき、それでも予想の範囲内だったので、「そうか」と一言頷き、再び歩き出す。
 その司に付き従う総執事が、司の不在の間の出来事を事細やかに報告し、その一つ一つに頷き、あるいは質問を返し、だいたいのことを把握してゆく。
 「そのロッソとかいう戒が入り浸ってる家のダチっていうのは、身元がハッキリしてんだろうな?」
 「…それが、十数年前に渡米してきたイタリア系移民の家のようでして、どちらかといえば坊ちゃんがお付き合いされるような家柄の方ではないようです」
 「ふぅん?そんなガキと、いったい戒のヤツどこで知り合ったんだ?」
 司は戒を、いわゆる日本で言う英徳のようなハイクラスの子供たちが通学する私立小学校に通わせてた。
 それだけに、そうそうその範疇から外れた子供と知り合う機会などあるはずがないのだ。
 司が不審に首を傾げる。
 「スポーツ入学で入ってきた特待生だそうです」
 私立校ではありとあらゆる栄誉を得るために、学力のみならず、スポーツなどでも各所から優秀な人材を引き抜き、学内の水準をあげるべく貢献させることがよくあるのは日本でも一般的な話だ。
 現在戒が付き合っているという友人も、そうして入学してきた一般階級の子供とかで、どちらかといえば権高い楓などは、眉を潜めるタイプの人間だろうが、司は特にそこらへんは気にしなかった。
 もちろん、若き日の彼であれば、楓と似たような価値観に固執していたことだろう。
 しかしそもそも戒の母親であり、彼が唯一愛した女こそ、その一般階級の最たる家に生まれた娘だったのだ。
 …一般階級どころか、あいつの場合貧民か?
 当時のつくしの家は、司の庇護を得たことで、そこまでひどい状況には陥いってはいなかったが、それでもやはり司の認識的にはあまりそこに大差はない。
 「ま、いいんじゃねぇの?入学時に、学校側でもそれなりに家庭環境については調査してるだろうし、せっかくできたダチのことを、親が一々あれこれ言うのもなんだろうしな」
 司が鷹揚に許可を出す。
 「…ただ」
 しかし、総執事長の顔はあまり晴れ晴れとしたものではなかった。
 いつもは明朗に報告してくる総執事長の屈託有りげな様子に、司が首を傾げて続きを促す。
 「なんだ?」
 「はい…実は」
 バアァンッ!!
 勢い良く開かれたドアの開閉音に、顔を顰めてそちらを向けば、無数にあるドアのうちの一つが内側から廊下に向かって開かれ、中からウェディングドレス姿の女が飛び出してきた。
 「お~!おっかえり!!」
 「……………」
 「どうどう?似合う?!」
 駆け寄ってくるなり、司の一歩手前で大業にクルリと回って、女が自分のドレス姿を盛大に司へと披露する。
 満面の笑顔で愛想を振りまく姿は十分に美しく、美女の範疇だが、やってることの奇妙さは、この年齢になると無邪気というよりはエキセントリックと言ったほうが相応しい。
 が、滋には滋なりの思慮もあるらしく、無言の司を相手に一人芝居よろしくあれだこれだと思い悩み、そうかと思えば一人で勝手に納得している。
 「やっぱり最初が肝心じゃない?いくら二度目だって言ったって、綺麗な若奥様とそうじゃないのじゃ、全然印象が違うだろうし?どうせやるなら、派手にやりたいわよね」
 アホらしいとさっさと滋を無視して再び歩き出した司に伴走して、総執事長と一緒に滋も小走りについてくる。
 「そんなことより、招待客の選抜は終わったのか?」
 「もちろん、バッチリよ!こういう機会って、かなり面白い人間関係が垣間見られるものだもんね。そこは任せておいて?」
 「ああ」
 「それで、ドレスのことなんだけど…」
 「…悪いが、俺は結婚式や披露宴のことまでかかずらわってられないから、秘書とそこは詰めておいてくれと言っておいたよな?」
 「まあ、それはそうだろうけどさ」
 司の激務は、似たような規模の企業を経営する一族に生まれた滋も承知している。
 自らは経営に携わることはなかったが、そうした家の妻になるべく、相応しい教育を幼い頃から叩き込まれてもいた。
 「すぐに書斎に篭っちゃうんだろうけどさ。移動の間くらいいいじゃない?サラッと見てよ、サラッと。あんたのタキシードとの兼ね合いもあるんだから」
 「…フゥ」
 あからさまなため息だったが、滋の方はまったくめげる風情がない。
 図太いというか無神経というか、この滋という女はほとんど初対面の時からそうで、司にとってはある意味つくしにも匹敵する変わった手合いだった。
 …うぜぇ。
 不思議に嫌なウザさではないが、もちろん歓迎したいわけでもない。
 「二度目だけど、あんまり若い頃とスタイル変わってなくって良かったわぁ。どうせだったら、日本に帰国して神前式のもやってみたかったんだよね、ホントは。でもまあ、とりあえずはこれで、結婚式の出席者をバッチリカンカン、うっとりと見惚れさせてみせるからさ!」




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うれぴ

前回のパスワードをクリスマスの多忙の中取得する事ができませんでした。( ; _ ; )
18日、やっと読む事ができ一気に読破。
おもしろかったー!!
ありがとう、こ茶子さん。

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