「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋③

愛してる、そばにいて0467

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 「う~ん、気持ちいい!」
 海風にあたって、つくしはご機嫌に伸びをした。
 顔にかかった髪をかきあげ、振り返れば、稀に見る美男が仕方なさそうに苦笑している。
 なんだかんだで、気がつけば世間は夜の闇に包まれていた。
 「本当にアルコール弱いんだ」
 「まあね。醜態さらすほど酔ったことないけど、こんなに飲んだのは久しぶりかも」
 とはいえ、今の所つくしが飲んだのは、美味いからと類に勧められた日本酒をお猪口で3杯と、ロックの梅酒をまだ2杯だけ。
 『やけ酒』と宣言したが、実際にはそんなものを飲むような気分ではなく、ほとんどムシャムシャと、相変わらずの旺盛な食欲を発揮して、自分でも呆れてしまったくらいだ。
 …これじゃあ、女は図太い呼ばわりされてもしょうがないか。
 類の言っていた表現とは微妙に違うが、ようはそう言いたかったのだろう。
 程良いアルコールのもたらす緩やかな酩酊が気持ちいい。
 「美味しかったな」
 「…そ?」
 「うん」
 二人並んで埠頭の柵に肘をついて、夜の海を眺める。
 対岸側のビルの灯は煌々と明るく、夜空の星明かりをかき消してしまうほどに華やかで…どこか冷たく物悲しい。
 …ううん、違うか。
 無生物にそんな感慨を抱いていしまうのは、人間の勝手な感情であって、それらのものはただそこにあるだけ。
 今、彼女が感じている孤独感と寂寥は、あくまでも彼女だけのものなのだ。
 まるで世界中から切り離されたようなこの感慨を、いったい自分は何度感じたことだろう。
 かつての…少女時代のつくしが知らなかった想い。
 そして、『道明寺つくし』として過ごした日々にも、そんなことを思ったことはなかったと、いまさらながらに思い起こす。
 そこには、いつも司がいたから。
 あの人一倍寂しがり屋で、一途な男がいてくれたから。
 彼女を愛して包み込んでくれる男が、寂寥も孤独も感じる暇もないほどにいつも傍にいてくれた。
 あれほど激務で世界中を飛び回っていた男が、たとえ実際には傍にいることができなかったとしても、心だけは常に彼女の傍にいると信じさせてくれたのだ。
 熱く激しい愛と、彼女への妄執にも似た恋慕で。
 司、戒、そして陽太や隼斗とも別れ、またつくしはたった一人、手探りで道をゆく。
 求めた自由は、けっして楽なものではなく、常に孤独や寂寥と表裏一体のものだったけれど。
 「あ~あ、また一人になっちゃったぁ」
 いつかと同じようにボヤいた呟きは、ぞんがいに弱々しく、自分でもイヤになるほど寂しげで…。
 「…俺がいるよ」
 「……………」
 見上げた類の顔は、彼女ではなく、真っ直ぐに夜景に向けられたまま、白皙の美貌は相変わらず怜悧で、今彼女が聞いた言葉は、空耳だったかのようになんの表情も浮かべてはいなかった。
 …聞き違いだった?
 しかしわずかに染まった彼の頬の赤味が、そんな彼女の疑念を否定する。
 「俺が支える」
 「……類」
 「あの日…あの時から、ずっと、後悔してた。あんたを見捨てたことを」
 「……………」
 「今、俺が感じてるこの感情がなんなのか、俺にもまだわからない。もしかしたら、あの時の罪悪感から同情してるだけなのかもしれないとも思った。でも、あんたといると…俺も寂しくないんだ。世界中で、俺だけが切り離されてるみたいな孤独感を感じないでいられる」
 類の顔がつくしへと向けられる。
 真摯な眼差しで、今、彼が感じている感情のすべてを、つくしへと開け放って。
 自分でさえ理解できないというその感情を、何一つ隠すことなく。
 差し出された大きな手を、つくしはいつものようにジッと見つめた。
 この手はいつも彼女を救ってくれた。
 けっして優しくはなく、慕う彼女を振り向いてくれることはなかったけれど…しかし、やはり類は優しかった。
 彼女が彼のことを、『花沢類』と呼んでいた遠い昔からずっと。
 今なら彼が、つくしを気にかけてくれていたのだと理解できる。
 冷たい横顔と素っ気ない言動とは裏腹に、彼もまた不器用な優しさを彼女へと分け与えてくれていたのだ。
 たとえそれが、つくしの望んだ彼女と同じ気持ちではなかったとしても。
 …あんただけが、私を助けてくれた。
 そして、今、その類の手がまた再び彼女へと差し伸べられ、今度は彼自身も彼女といることで孤独を癒したいと望んでくれている。
 もしかしたらそれは恋や愛ではなく、互いに相憐れむ単なる馴れ合いで、依存に過ぎないのかもしれない。
 それでも、互いに補えるものがあるのなら…。
 「…あんたには、見合いの話があるでしょ?」
 「もう見合いはしない。……好きでもない女と結婚する気はないよ」
 いつだったか、花沢物産の都合で結婚するだろうと嘯いた男のセリフとも思えない言葉。
 それに小さく笑って、つくしが類の手に手を乗せると、ギュッと握り締められる。
 いつの日か、彼ともまた、別れる日が来るのかもしれない。
 それでも、今は…この手の温もりにすべてを任せ、共に歩いてゆくのもいいだろう、と。
 「そろそろ帰ろうか」
 「そうだね。………ああ、そうだ、ね、類」
 「ん?」
 つくしの問いかけに類が首を傾げる。
 「そういえばあんたって、私が毎日のように魘されてたって知ってても、病院に行けって言ったことなかったね?」
 桜子はもちろんのこと、執拗にではなかったが、それでも夫だった隼斗も、つくしのPTSDを知る人間は必ずのように、カウンセラーなり彼女に精神科の通院を勧めた。
 しかし、思えば再会してこっち、類もかなりつくしの事情を把握していたにも関わらず、一度として病院への通院を勧めなかったことをあらためて不審に思う。
 …以前は、単にそこまで私に興味ないだけだと思ってたけど。
 たかが使用人、そこまで親身になるつもりはないのだろうと。
 しかし、
 「だって病院って、なんか嫌じゃん」 
 「は?」
 らしいと言えばらしい、子供みたいな言い草につくしの目が点になる。
 「あんたが行きたいと思えるのなら、反対しないしサポートもする。もちろん行かないことに何か障害があるのなら、俺がなんとでもしてあげる。…でも、無理強いはしない。支えるって言ったろ?」
 お前の気持ちのままに…と、誰もつくしには言ってくれなかった言葉をくれる男。
 「…そうだね。ありがとう」
 今はまだ、積極的に自らの病に積極的に立ち向かおうとは思えないけど。
 それでもいつか、諸々の問題を乗り越えることができたなら。
 「あ!そうだ、類、あんた車なのに飲んじゃって、帰りどうすんのよ!」
 「………いまさら?」
 「やだ、あたしも飲んじゃったわよ!」




*****




 トゥルルルルルルル、トゥルルルルルルルル…プッ。
  「俺だ」
  『司か?俺だ、総二郎だ。…お前に話がある』




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