「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋③

愛してる、そばにいて0466

 ←愛してる、そばにいて0465 →愛してる、そばにいて0467
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「ん~!これで名実ともに、牧野つくし!バツ2になりました!!」
 「……ぷっ、なんで威張ってるわけ?」
 「いや、なんとなく」
 笑われながら迎えられるのに、小さく自分でも噴き出して、特に支障なく離婚届を出すことができた最寄りの市役所を後にする。
 清々しい…という感じでもないが、それでも何かしら、肩にのしかかっていた重い何かが一つ降りた気がしていた。
 それと同時にどこか寂寞とした哀切も。
 …これで、陽ちゃんや隼斗さんとは、戸籍上でも家族じゃなくなっちゃったんだな。
 未練というのとも違うと思っていたが、やはりこれも未練なのかもしれなかった。
 「じゃ、とりあえず東京に戻ってから、ちょっと遅めのランチに行こうか」
 「…ランチに行こうかって、あんた仕事は?」
 「ん~、臨時休業?」
 「はあ!?臨時休業って、そんな」
 「っていうのは、まあ冗談だけど」
 真顔であっさり前言撤回をしてくれる類の顔を、ポカンと仰ぎ見る。 
 打てば響くように返事を返してくれるのは、十数年前とは違ってありがたい話だが、現在の彼は当時の彼よりも、数段性悪になった気がするのは彼女の気のせいか。
 …ていうか、きっとこっちが地なんだろうな。
 当時は、人に中々馴れない野良猫のような男だったから。
 「たぶん、落ち込んでるんじゃないかなって思ったからさ」
 連れ立って歩いていた類の急に真面目になった声音に顔をあげれば、声音のとおりに真剣な顔に出会う。
 「あらかじめ今日は午前の仕事だけで上がれるように、遠藤にスケジュールを調整させておいたんだ」
 「類」
 「で?あんたなら鬱々としちゃいそうな日は、どんな気晴らしをする?」
 そんなことを聞かれて面食らって、しかし、聞かれるままにちょっとだけ考えたらすぐに答えは出た。
 「…食べる、かな」
 「食べる?」
 「そ。美味しいものをたらふく食べて、たくさん寝るの」
 「ぷっ」
 またも噴き出されてしまう。
 そんなにおかしなことを言っただろうか?
 「なに?なんか変?」
 「…いや、面白いくらいに健全だなって思っただけ」
 「健全ね」
 たしかに、それは自分でも同意できる。
 しかし、人間それ以上の気晴らしや、気持ちの立て直しようがあるだろうか。
 けして、隼斗や陽太との別れは悲しいものではなかった。
 しかしそれでも、彼らと家族であった日々を愛しいと、切なくも寂しく思う。
 「あんたならどうするわけ?」
 「俺?」
 「そう」
 逆に問い返せば、悩むことすらなく類が即答する。
 「寝るよ」
 「…それで?」
 「寝る」
 「寝るって」
 「寝て、寝て、寝倒して…また寝る、かな」 
 どんだけだと、さすがのつくしも呆れてしまった。
 「…どこまで不健康なのよ」
 「そう?食べるってサイクルが入ってないだけでしょ?」
 「それが不健康だっつーの!」
 火を吹く勢いで文句を言うつくしに、類がくくくと笑う。
 彼は本当によく笑うようになった。
 つくしが知るかつての彼は、いつも仏頂面か、冷たい無表情でしかなかったというのに。
 …ああ、そうでもないか。
 まるで雲の切れ間から覗く陽光のように、ごく稀に見せてくれた類の笑顔は素敵だった。
 かつて、『お金で買えないものはあるか』と尋ねたつくしに、類は『空気』とか、とんちのような答えを返したが、その時つくしは思ったものだ。
 …お金で買えないもの、この人の笑顔。
 「なに?」
 ついマジマジと見入ってしまっていたらしい。
 怪訝に小首を傾げて聞いてくる類に、ううんと首を横に振り視線を外す。
 …やだわ。
 乙女チックな自分が気恥ずかしくもあり、また、その時の気持ちが蘇って無性に照れてしまったのだ。
 「よし!今日はやけ食いよっ。奢るから付き合ってよね、花沢類!」
 「いや、別に奢ってくれなくてもいいけど、ヤケ食いって、…前旦那に未練あるわけ?」
 「やだ、そんなの100%まったくあるわけないでしょ」
 サクッと断言するつくしに、類が複雑な顔で苦笑する。
 それを見咎め、今度はつくしの方が首を傾げた。
 「なに?」
 「いや」
 「なによ、言ってよ」
 隠されると余計に知りたくなってしまうものだ。
 類にしても別段隠すつもりではないらしく、肩を竦めて話し出した。
 「女って、逞しいっていうか、やっぱり残酷な生き物なんだな、ってあらためて思っただけ」
 「は?」
 残酷?
 なにが?
 思いっきり目を点にしたつくしを、類が車の前までエスコートして、助手席へと導いてくれる。
 「私、自分の車でここまで来たんですけど」
 「ん、そっちはウチの連中に乗って帰らせるから、こっちに乗って?俺、あんたの軽じゃ手足縮めないと乗れないし、東京までもつ自信ない」
 「…あんたって、やっぱりあいつら…F4の仲間なのね。めっちゃ強引だし、なに気にけっこうイヤミなヤツ」




*****




 正直、類の運転は間違っても上手いとは言えないものだった。
 天は二物を与えず、を平気で裏切るような連中がF4だが、司が人格的に問題を抱えていたのと同じようにかどうかはともかくとして、類の場合はさらにその性格にプラスして、この運転もその一つのようだ。
 急発進、急停止は当たり前、急ハンドルは切るわ、気がつけばガンガンスピードが上がっていて、彼の車に乗車中ずっと、つくしはびっしょりと冷や汗をかかされることとなってしまった。
 とにかく運転が荒い。
 …まあ、誰にでも欠点の一つや二つあるか。西門さんにしても女癖悪いわ、下半身も口も緩いしね。
 総二郎に対して、何気にそんなとてつもなく失礼なことを思う。
 司に関しては言うに及ばず。
 唯一、あきらだけはそうした悪癖を克服したようだがと、天下のF4に対してたいがい散々な評価。
 「酷いな。俺、別に運転下手じゃないよ。ちょっと楽しくなっちゃって、遊んじゃうだけ??」
 「………私があんたの車をオカマ掘っちゃったのも、なんか自分のせいだけじゃない気がしてきたわ」
 くい込んだシートベルトを外し、額の汗をハンカチで拭いながら、いまさらなことを蒸し返す。
 「ま、そうかも?」
 「は?ちょっと!」
 「冗談だよ。不審ならドライブレコーダーを確認する?」
 「……いえ、けっこうです」
 さすがにつくしも、そこまで厚かましくはない。
 類に連れてこられたのは、先日のディナーのようなコテコテの高級レストランではなかったが、それでも座敷ごとの個室仕様になっている和洋折衷のレストランで、かなり料亭に近い。
 「って、なに昼間っからお酒なんて注文してるのよっ!」
 「やけ食いするなら、少しくらいは酒もかなって。ま、たまにはいいんじゃない?」
 「……まあ」
 つくしにしてみても、別に未成年なわけではないのだ。
 …たまにはいっか。
 「う~ん、美味しそうな匂い!よし!じゃあ、今日はむちゃくちゃ吐くほど飲むぞう!!類、後のことはよろしくね!!」
 「…いや、ほとほどにしてくれる?」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0465】へ
  • 【愛してる、そばにいて0467】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0465】へ
  • 【愛してる、そばにいて0467】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
女性に大人気!ビジネスから恋愛相談まで全部500円~!  
価格満足度97%、日本最大級のココナラに今すぐ登録!!

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘