「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋③

愛してる、そばにいて0456

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 『総二郎』
 ホッとしたようなあきらの視線の先を辿れば、人波の間から見慣れた美男が現れる。
 わざわざ彼が人垣をかきわけずとも、総二郎が歩みを一歩進めば、人垣の方が彼を見て道を開けた―――司の場合と同様に。
 彼らはそこにいるだけで、力を持った特別な存在なのだと、誰もが認めて。
 『お、牧野じゃん』
 すぐにつくしを認めて、いかにも親しげに馴れ馴れしく声をかけてくる総二郎に、つくしも簡潔な挨拶を返す。 
 『…こんばんは』
 『おう、久しぶりだな。牧野と一緒にいるっつーことは、あきら、司、見つかったのかよ?』
 『今、挨拶周りしてる』
 『ほ~。なんだかんだ言って、あいつも道明寺財閥の跡取り息子の役割を、けっこうよく果たしてんよな』 
 立ち話を始めた二人の背後、なんとはなしに周囲を見回す。
 キョロキョロしているつくしの様子に、気がついたあきらも周囲を見回し、首を傾げて総二郎へと問いかける。
 『類は?』
 『あっち。ひっきりなしに女が入れ替わり立ち替わり盛況になりすぎて、類のヤツもさすがにうざがってよ。ねみぃっつーから、コーナーの休憩所でちょっと一息いれるかってな。あきら、お前を探してたところなんだよ』
 『あ~、そうだな、どうすっか』
 あきらが逡巡している理由に、総二郎もすぐに気がついたらしい。
 『どうせ司のヤツが、牧野のお守りをお前に頼んだんだろ?牧野にしてみても、こんなところで壁の花してんじゃ、落ち着かねぇだろ?…牧野も来いよ』
 『いや、それは…』
 あきらが困ったようにつくしを見ているのに気がついて、つくしの方が気を利かせる。
 『あたしのことはいいよ。美作さん、西門さんと一緒に行きなよ』
 おそらくあきらは、司につくしのそばについていてくれと言外に頼まれたのを気にしているのだろう。
 あの男のことだ。
 ここで待てというものを、勝手に移動してしまえば、機嫌を損ねるだろうことくらい、つくしにも容易に察せられた。
 あきらはともかくとして、司にとってのつくしは彼の所有物なのだ。
 自分がつくしを振り回すことは平気でも、彼女の都合で動かされるなど我慢ならないことに違いない。
 …美作さんに当り散らすことまではしないにしても、文句くらい言われちゃうものね。
 つくしにしてみても、小さな子供ではないのだ。
 司が戻ってくるまでの間、ここで一人で待っていることくらいなんということもない。
 たとえ針のムシロのように、人々の好奇と蔑みに満ちた視線に、どれだけ居心地が悪い思いをしたとしても。
 …そんなの慣れてる。
 『いや、それもな。…お前も』
 迷っているようだったが、思い切ったらしいあきらが誘いかけてくる。
 『牧野も移動しよう。後で俺がまた、司は捕まえてくるさ』
 しかし、
 『お……』
 『類』
 まるで…まるで、一筋の光が伸びてくるかのように、こちらへと向かって歩み寄ってくる類の姿に、つくしもすぐに気がついた。
 たとえ総二郎たちのように、人垣が自ら彼に道を開けてはいなくても、そこに彼がいるだけで、淡い光が滲むような錯覚につくしは目を細める。
 闇の化身、あるいは漆黒の太陽のような司とは真逆の男。
 しかし、類は一人ではなかった。
 まとわりつく様にして、彼の腕にしがみついている女が類に何かを言われ、不満そうに顔を歪めているのがつくしの目につく。
 しかし、すぐに女が伸び上がって、背の高い類の耳に何かを囁いた。
 そして、その意を受けてだろう、類が女の腰に腕を回し、ぐっと引き寄せ、その唇に軽いキスを落とす。
 わっと上がった歓声に、総二郎とあきらが口笛を吹いた。
 『やるじゃん』
 『へぇ?いつの間にあいつ、ツーショットになってたんだよ。あれ、M&Jコーポレーションの角田代表の娘だろ?』
 『ああ、そっち系か。たしか花沢の役員から独立したとかいう、中規模の新興企業だよな。それにしても、オヤジの会社は会社だって、お愛想の一つもしなかったヤツが、ずいぶん砕けたっつーか、弾けたっつーか』
 交わされていたあきらと総二郎の会話は、つくしの耳には入っていなかった。
 いや、おそらく聞こえてはいた。
 ただ今見た光景が信じられなかっただけだ。
 …ウソ。どうして?
 なぜなのだと、自分が何を問いかけたいのかも分からないままに、ただ呆然と類と女の一幕を、つくしは見つめていた。
 ただ本当に信じられなかったのだ。
 今目の前で見た光景が。
 無愛想で何事にも関心が薄く、静以外の女になど目もくれなかった類が、他の女とお軽くキスを交わすなんて、と。
 …それとも、あの人のことが好きなの?
 ボウッと類の顔に見惚れている女の腰から手を離して、一人になった類が今度こそ歩み寄ってくる。
 『なんだよ、類、お安くねぇな』
 『もうリザーブしたのかよ?』
 『まさか。パートナーがいないなら、一緒してくれってやたらとしつこくて。キスしてくれたら、今日はもう付き纏うの辞めるっていうからさ。面倒臭くてそうしてやっただけ』
 『はぁ~、今までのお前だったら、丸無視して終わりだっただろ?お前の絶対零度の視線浴びせられて、いつまでも付き纏えるような強者もいねぇだろうに、知り合いだからか?』
 『知り合い…ってほどでもないね。たしかにオヤジの会社の関係で、そこそこ顔知ってるって言ったら知ってるけど、話したのも今日初めて』
 『ふ~ん』 
 男たちの会話に入ることもできずに、見るともなく彼らを見ていたつくしの視線に気がついたのか、類が振り返って彼女へとわずかに微笑む。
 『こんばんは』
 『こ、こんばんは』
 条件反射のように挨拶を返す。
 『…ずいぶん久しぶりだね。元気だった?』




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