「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋③

愛してる、そばにいて0455

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 いつしかつくしも、爽やかな柑橘類のいい匂いに包まれているうちに、人肌の温もりと心地よさも加わって、だんだんと瞼が重くなってきた。 
 …あ、寝れそう。
 それが寝入る前の、彼女の最後の思考だった。
 「スゥ~~~」
 「………ん」




*****



 …綺麗な顔。
 つくしは高校生になるまで、これほど綺麗な男が実際にいるとは知らなかった。
 美しい顔、長い手足と、バランスのとれた抜群のプロポーション、…そして、それらで補ってあまりあるほどに醜悪な性根を持った少年たち―――それがF4だった。
 あれはたしか、高校2年のクリスマス直前の頃、
司に連れられた、どこだかのクリスマスパーティでのことだったか。
 挨拶周りに出かけるからと、それでもつくしへの気遣いからだろう。
 出くわしたあきらと二人、パーティ会場の一角に取り残され、つくしはぼんやりと司が人垣の向こうへと消えてゆくの見つめていた。
 彼が一人になったと見るや、わっと周囲を取り囲む人垣が出来る。
 そして、その背中はあっという間に、人々の壁に遮られて、彼女からは見えなくなってしまった。
 …あれが、あいつの本来の姿。
 英徳でも、こういった社交場でも、…たとえ通りすがりの道端でさえ、彼が埋もれてしまうことはない。
 常に人々の中で燦然と光輝き、人目を惹いて、たとえ司自身が意図せずとも、人々が自ら頭を垂れ傲然と君臨する特別な存在。
 『食欲ないようなら、休憩コーナーの方へ移動すっか?けっこうここだと人目が気になって、お前、ゆっくりできねぇだろ?』
 『え…ああ』
 自分へと問いかけていることに気がついてつくしが顔を上げれば、仕方なさそうな…それでも十分に彼女への気遣いに満ちた顔で、和やかに微笑むあきらが、ソファに座ってボウッとしていたつくしを見下ろしていた。
 『ごめん、美作さんも忙しいんでしょ?あたしにかまわないで行っちゃって?』
 『いや、司、言いだしたら聞かねぇし。お前を一人で残してウロウロしてんのバレたら、面倒臭ぇことになるの間違いねぇからよ』
 『そう、じゃあ』
 どうぞ、と、座るように空いている自分の隣の席を指し示すが、それにもあきらは片手を上げて、彼女の誘いを遠慮する。
 嫉妬深い司の性格を配慮してのことなのは、つくしにも容易に推察できた。
 心底うんざりしているようなのに、それでもそんな面倒臭い相手の司を見捨てないあきら。
 それが他の人間だったなら、司の権力におもねっている、あるいは恐れてのことに違いないが、あきらの場合は違うのだろう。
 …あんな男なのに。
 以前のつくしだったら、きっとこう思った―――似た者同士。
 あるいは類友だからだと、あきらのことも軽蔑したかもしれなかった。
 今でもそんな気持ちがないでもない。
 それでも…、
 『あんな奴でも、優しいところもあんだよ』
 黙ってジッと見るつくしの視線を受け止めきれないのか、あきらはわずかに視線を反らし、小さく吐息をついて、それでも言葉を継いだ。
 『…意地っ張りで天邪鬼なしょうもねぇヤツだけどさ。俺らと違って、一途で純粋なところもある。今は荒んじまってるけど、ガキの頃はワガママでも可愛いところもあった。……たぶん、俺がお前に青池のことなんかをフッちまったのが、気に入らなくてあんな態度とったんだと思うが、本気じゃねぇ。あんまり悪く思わないでやってくれないか?』
 あきらの司への友愛。
 高等部の裏庭で、総二郎と共に囲まれた時には反発しか感じなかったのに、不思議に素直な気持ちで聞くことができた。
 …あんな奴でも優しいところもある。
 不思議に、つくしにもストンと腑に落ちた。
 かつては司のことを極悪非道の人非人、人の心など微塵も持たない悪魔のようにも思っていたが、今ではそうでないことを彼女も知っていた。
 たしかに人並みならぬ傲慢さと冷酷さ、無慈悲も兼ね備えている男だ。
 だが、司はそれだけの人間ではない。
 …馬鹿みたい。
 蔑まれ虐げられ、いまや身体どころか心までも蝕まれて…そこまでされたというのに、司を憎みきれない自分の愚かさを皮肉に嘲笑う。
 それなのに、以前ほどの反発をつくしがあきらの言葉に感じなくなってしまったのは、おそらくあきらもまた、司と同様、優しさもあれば思いやりや友情も感じる一人の人間なのだと彼女が気づいてしまったから。
 以前のあきらと総二郎には、司をつくしが受け入れて当然、自分たちこそが正しく誰もが彼らの意志に従い尊重すべきだという傲慢さがあった。
 言い方は違えど、かつて司が自邸に拉致して着飾らせたつくしを前にして、彼女に提案した言い草や、常日頃の言動と同じことだったのだ。
 ―――自分たちは世間に名だたる資産家一族の人間なのだ。
 敬われて当然、自分たちがその気になれば、金で買えないものも、できないこともない。
 そんな自分たちが、つくしたちのような庶民と同じ人間であるはずがないだろう。
 彼らの言うことに、下位の人間が従うのは当然のことで、気に入られたことを感謝しこそすれ、拒絶することなど許されない、いやそもそもありえないのだ、と、彼らは言外にも言っていた。
 しかし、今あきらが司を庇ってつくしへととり持ってくるその言葉には、そうした驕りではなく、司という幼馴染みへの真摯な友愛と、つくしへの疚しさにも似た気遣いがあるように彼女にも思えた。
 それでも、
 『美作さんには、関係ないことだよ』
 司が優しかろうが、つくしに対してなされる侮辱的な言動や暴言が、彼の天邪鬼ゆえのものであったのだとしても、それはつくしの罪でもなければ、あきらが仲介すべきものでもない。
 すべては司自身が招き築いてきたつくしとの関係であり、そして、つくしもまた、あきらに何を言われたとしても、とても今の司を受け入れることなど到底できないのだから。 
 我を殺して、服従することが当たり前の関係であるはずがない。
 当たり前の関係ではない以上、今つくしが感じている司への情じみた感情も、加虐者と被虐者の歪な心理でしかないのに違いなかった。
 『……牧野』
 『前にも言ったでしょ?』
 あきらはまだ何か言いたいげだったが、それでもつくしの言葉に理を認めたのだろう。
 『そうだな、悪い』
 気不味い空気が流れ、あきらが次の言葉を探しているのがわかったが、つくしにももう何も言うべき言葉は見つからなかった。
 『お、あきら、お前どこに行ってたんだよ』




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