「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋③

愛してる、そばにいて0453

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 司とつくしの結婚式は地味なものだった。
 そこには司の両親の姿はなく、新郎側には椿と総二郎とあきらの二人の友人たち、新婦側には両親と進と当時それなりに親しく付き合っていた数人の人々だけの本当に質素なもので、本来、司の立場と生まれからしてとてもありえざるものだったというのに、つくしはその結婚に満足していた。
 一生の思い出だった。
 司としてはもっと財閥を上げて盛大にやるつもりだったのだが、当然のように道明寺家側から難色が示され、またつくしがそうした派手な結婚式や司の実家との相克を深める行為を忌避したからこそのこと。
 …誰も祝ってくれない結婚式なんて意味がない。
 そしてその結婚式とはまた別の光景が、彼女の胸にある。
 …あれは。
 あれは、フランスの片田舎でのこと。
 どういう経緯でそういうことになったのかまでは、今となっては思い出せない。
 しかし、通りかかった小さな教会を、車の窓からぼんやりと見ていた司が突然言い出したのだ。
 『あそこで、今から、二人だけの結婚式をしようぜ?』
 『は?今って…今ああっ!?』
 本来ならば大学を卒業する年齢である22才まで、ほとんど司の隠された妻だったつくしは、道明寺家の奥方教育を受ける一方、ほとんど表舞台に出ることはもちろんのこと、本来ならばあるだろう道明寺家の威信をかけた結婚式も披露宴もしていなかった。
 一つには、籍を入れることを道明寺家が最後まで許さなかったこともある。
 そして、何よりも司が彼女ばかりではなく、自身の両親を欺くように籍を入れた当時は、つくしの妊娠、彼女との仲を強引にでも認めさせるために、司が拡大させた財閥内のいざこざやマスコミ攻勢、あげくの司自身の流転でそれどころではなかったのだ。
 日本では男性は18才、女性は16才で結婚できるにはできるが、20才にならなければ親の同意が必要。
 だが、アメリカでは州によって結婚できる年齢が異なりはするが、概ね18才をすぎれば親の同意も必要がない。
 当然、つくしの両親が彼らの結婚を認めないわけがなく、当時、司の父親が病床に伏した一連の出来事で攻勢を強めていた反対勢力を司が利用して、そうした抗争に楓がかかりっきりになっている隙に、司は強引に入籍してしまったのだ。
 そうした事情があって、楓も息子の結婚問題にいつまでもかかずらっていられなかったからこそ、司の目論見のまま続いた薄氷の結婚生活だったとも言える。
 「別にそんなつもりで見てたわけでもないのに」
 どう教会に話をつけたのか、単に視察で訪れた地で、移動と移動の間に忙しくなく行われた…二人っきりの結婚式は、ドレスもなく、ただ一人の招待客もいなかった。
 けれど、当時のつくしにとって、一生の宝物の幸せな思い出になったのだ。
 『…いつか、ちゃんともっとすげぇ豪勢な結婚式やってやるから、今はこれで我慢しろよ』
 すまなそうにそんなことを言う司に、思わず抱きついてキスをしてしまい、式を取り仕切った神父に苦笑されてしまったものだ。
 「あれはあいつが、妙に興に乗っちゃって、とんでもなく濃厚なのにしちゃったせいだったよね、絶対」
 込み上げてきた切ない想いに思わず涙ぐんでしまいそうになってしまい、慌てて憎まれ口でそんな自分の感傷を振り払う。
 「…ああ、結婚式やってるんだ」
 「類」
 スッと横に並んで、階下を覗き込む類の秀麗な美貌を仰ぎ見る。
 その横顔はどこか切なげで、彼もまた過ぎし遠い過去を振り返っているのだと、不思議につくしにも察せられた。
 シンパシー。
 かつてはまったく見えなかった、近づくことさえ許されなかった彼の心が透けて見える気がする。
 つくしの視線に気がついた類が、振り返ってふっと小さく笑った。
 「静の…静の花嫁姿も、スゲェ綺麗だったよ」
 驚いてつくしが類を見つめ、目を瞬かせる。
 わずかに目を伏せた類の顔には、もはや当時の苦痛は浮かんではいなかったけれど。
 「俺も結婚式に招待されたけど、結局行かなかったからさ。直接は見てないないんだ。でも、後で親…人から見せられたよ」
 「…そう」
 あきらか総二郎あたりか。
 司は確かその結婚式には参加していないはずだが、当時の状況を思えば、彼本人にしてもそれどころではなかったのだ。
 あるいは、つくしが類と再会してしまうのを危惧していたのかもしれない。
 「…ほんとに、綺麗だった」
 再度呟く類を、ジッと見やる。
 静ならば、それはそれは美しかったことだろう。
 しかし、類にとってのそれは、その他大勢の持つ当たり前の感慨などでなく、‘彼女’だからこそで、たとえ静が絶世の美女ではなかったとしても、きっとそう思ったに違いない。
 「帰ろうか」
 「………うん」



*****



 誘われた当初は、類とデートだなんてどんなものなのかと思っていたが、気が付けばあっという間に一日が過ぎて、帰宅したのはかなり遅い時間帯だった。
 「もう寝る?」
 「…あっと、ちょっとだけ明日の朝食の下ごしらえしてから」
 マンションに戻れば、メイドという自分の立場をつくしは忘れていない。
 たとえ敬語を使わず友人のように過ごしていても、そこは報酬をもらっている以上当然のケジメだ。
 そんなつくしの生真面目さに、類も特には否やは言わず、
 「そう…じゃあ、俺もちょっとだけ、仕事してから寝ようかな」
 珍しい発言に、実は彼には今日も本当は仕事があったのではないかと、つくしも思い当たった。
 「もしかして、今日デートなんかしてる場合じゃなかったんじゃ?」
 「…ん?」
 「あたしったら、つい調子に乗ってのんびりさせてもらっちゃったりして…」
 恥じ入るつくしを、キョトンと見ていた類が苦笑する。
 「俺が誘ったのに、なんであんたが謝るの?」
 「…だって」
 「第一、どれだけ仕事があるにしたって、土日祝日もなく働くなんて俺はゴメンだよ。もちろん最低限の義務は果たすつもりだから、さすがに一般社員のように週休二日とまでは言わないけど、機械じゃないんだから、馬車馬みたいに働いたって効率なんて上がらないよ」
 もっともな言い分だが、意外といえば意外で。
 しかし、怠惰な猫のような彼も知っているので、さもありなんと納得できる気もする。
 「ま、あんたはほとんど仕事中毒な道明寺家にいたから、そういう感覚が意外かもしれないけど」
 「…花沢家は違うんだね」
 「似たようなもんだよ」
 ガクッ。
 道明寺家がどうのと、たとえに出しておいてのその言いよう。
 …ようは、あんた一人だけが違うってだけのことかい。
 「だからさ」
 「…はい?」
 珍しくホンのわずかに言いあぐねたように口ごもって、
 「あんたもやること終わったら、今日は俺と一緒に寝ない?」




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