「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋②

愛してる、そばにいて0442

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 そもそもつくしが司の屋敷に連れ込まれて以来、その歩かない男とほとんどが一緒の生活だったのだ。
 また大人になって副社長となった司やその家族には、会社関連の逆恨みや誘拐等の危険もあったからなおさらのこと、彼らが一人で出歩くようなことはなかったし、司の妻であったつくしも同様だった。
 もちろん道明寺邸より出奔してから、訪れたことは一度もなかったが、当時でさえこの屋敷を彼女がよく知っていたとは言い難い。
 この広大な屋敷そのものが彼女を捕らえる檻であり、たとえ鉄格子の中に囚われてはいなくても、つくしにとって真実、獄舎のようなものだったのだ。
 豪奢なる檻。
 司の恋慕という名の妄執の鎖に繋がれて、つくしはどこへゆくことも許されなかったのだから。
 …そうだ。
 遠く見え隠れし始めたあの建物の影は、あの正面玄関へと続く門前のあたりに違いない。
 司と二人で乗ったリムジンへと自ら飛び込んできた男が、引き起こした事件を思い起こす。
 しかし、彼女がまだこの屋敷に住んでいた頃の一時期は、その事件が元でしばらくの間、厳重な警備体制がとられ、あの門扉の辺りにも警備員の姿があったものだ。
 だが、今はもう類の言うとおり、どこかの広大な美術館の敷地の一角であるかのように閑散として、荘厳な佇まいを晒しているだけで、ごく一般的な感慨をしかつくしに感じさせなかった。
 …あいつがいない。
 そして、また戒やタマも。
 そうである以上、ここは懐かしくもなく…ただいつまでも馴染むことができなかった豪奢で、だが空虚な…つくしとはまるで関わりのない悪夢の世界の宮殿でしかなかった。
 「こんなだったんだ」
 「…ん?」
 つい呟いてしまった言葉は、類への語りかけではなかった。
 けれど、『なに?』という類の問うような視線に、ただ首を振る。
 拒絶ではなかった。
 だから、ポツリと心に思い浮かんだままを、小さく呟く。
 「こんなところだったんだな、って」
 「……………」
 「本当に凄く広くて、大きくて…ここがあたしたちの住んでる同じ日本だなんて、ホント信じられない」 
 そして、そんな屋敷に自分が住んでいたことがあるだなんて…と、自嘲の笑みを浮かべ、つくしは改めて今は閉じられた門扉の向こうをじっくりと眺めた。
 「その広くて、大きな家に、あいつはいつも一人でいたよ」
 「……………」
 ボソッと独り言のような言葉につくしが振り返れば、類もまた彼女と同じく門扉の向こうを、遠い過去へと思いを馳せるようにボンヤリと眺めていた。
 その秀麗な横顔はほとんど表情がなく、どうかすると生きている人間の息吹を感じられないほどに整いすぎていけれど、つくしは不思議にそんな彼を冷たいとは思わなかった。
 …きっと。
 きっと、彼もまた、寂しければ温もりを求め、哀しければ辛いと嘆く一人の人間に過ぎないと今ではわかっているから。
 彼女が幻想を抱いていたスーパーヒーロー。
 つくしのピンチを何度となく救い、彼女の憧れの全てだった人。
 夢の王子様のように崇め、眩しさに真っ直ぐに見つめることすらできなかったこともある。
 けれど、今はその頃よりもずっと彼を身近に感じる。
 そのどこか哀しげで美しい横顔を、つくしはジッと見つめた。
 「総二郎にしても俺にしても、家族愛に恵まれてるとは言えたものじゃないけど、あいつは寂しがり屋だったから…いつの間にか荒んで歪んでた」 
 ―――そして、つくしを見つけた。
 ごく平凡な少女でしかなかった彼女の何が、あの非凡な男の琴線に触れたというのだろう。
 「そんなあいつをどうかしてやらなきゃならないなんて、思ったことがなかったんだ。…あいつに負けず劣らず、俺らも歪んでたからさ」
 「………そう」




*****




 なぜ類がつくしを道明寺邸に連れて行ったのかわからないまま、不可解な散歩を終え、二人は付近の駅まで引き返して、なんとなく下車した駅の適当な店でランチをとることにした。
 特にアテがあったわけではない。
 しかし、なんとなくあまりに煩雑としたところへは行きたくなかったのだ。
 「けっこう歩いたわよね」
 「そうだね」
 ものぐさで、汚部屋も平気な男だが、さすがにお金持ちのお坊ちゃま。
 レディファーストは堂にいったもので、どんな店でもつくしよりも先にドアを開け、優雅な仕草でエスコートしてくれる。
 「いらっしゃい!」
 いかにも下町の『おばちゃん』風の女将が出迎えてくれる超庶民的な定食屋では、彼の西洋人形じみた美貌ともども、彼の紳士具合は違和感ありまくりだったが。
 「い、い、いらっしゃいませ」
 なぜか吃りながらの二度言いだ。
 「空いてるね、奥の座敷にしようか」
 「いいけど。あんた正座とか大丈夫なの?」
 なんとなく彼のバタ臭い外見からして、畳に正座する姿がどうにも想像しにくい。
 に~っこり。
 「これでも日本男児だよ?」
 「うーん、なんか一番似合わない人にそんなこと言われてもね」
 「…へぇ、ここ手打ちなんだ。牧野、あんた何にする?」
 繊細な外見に反して真から図太い類は、つくしの辛口批評もサラリとガン無視だ。
 つくしはつくしで、いつの間にか彼のテンポにもすっかり馴染んでいる。
 無視されたことも気にせず、メニュー表を片手にさっさと話に乗っていた。
 「わぁ、10割蕎麦だって、あたし食べた事ないんだよね。そう言えば」
 「そうなの?じゃ、あんたそれにする?」
 「うん、カツ丼とセットのやつにしようかな?類は?」 
 「俺、動物性タンパク質苦手だし、野菜天とセットのやつにしようかな」
 「野菜だって、食べられない物だらけじゃない」
 「食べられないわけじゃない。苦手なだけ」
 「まあ、そうか」
 等々。
 「い、い、い、いらっしゃいませ」
 …だから、それはもういいって。
 真っ赤な顔でぽう~っと類の横顔に見惚れた状態で、お冷を出してくれる女将の様子につくしも苦笑しつつ、メニュー表を指差して注文する。
 「あたしは、10割蕎麦とカツ丼のセット、それとこっちの海鮮丼の小鉢で。蕎麦は大盛りでお願いします」




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>あるまじろ様

こんにちは^^!
こちらこそご無沙汰しております。

ちょ~っとというかかなり、皆さんからのコメント返信をとどこっておりますので、ご質問の回答だけm_ _m

おそらくご質問の呟きでの~というのは、R(イチャコラ)推進委員会本部→ http://rsuishin.blog.fc2.com/  のしりとりのことでしょうかねぇ?

こちらは実はなぞなぞになってるパスワードなんですねぇ。
パスワード画面にヒントが載っていますので、どうぞよろしくお願いいたしますm_ _m
よそのサイトさんなので、パスについてはちょっとお答えできず、すみません^^;

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ありがとうございました

ありがとうございます❣ヒントの存在に気が付かなかった、、、予想とはまた違う理由で楽しませていただいてます。お腹が痛くなりました。

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管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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