「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋②

愛してる、そばにいて0441

 ←愛してる、そばにいて0440 →愛してる、そばにいて0442
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 ぴっき~ん。
 今まさに、誰かが横で彼女を見ていたとしたら、そんな擬音そのまんまに固まってしまっているつくしを見て笑ってしまったことだろう。
 実際に―――、
 「ぷっ、凄い、まるで漫画みたいだ。人間って、本当ににそんなふうに固まったりできるもんなんだ」
 しかし、類の言っていることに対して反応する余裕は、今の彼女には欠片ともなかった。
 道明寺邸。
 ―――5年前、もう二度とここには戻ってこないと、待望を果たして自らの足で飛び出した場所。
 …なんで。
 「ふぅん。5年もすると東京もずいぶん変わってたけど、さすがにこの辺はほとんど変化がないな」
 キョロキョロと周囲を見回し、高い塀の向こう、広大な道明寺家の敷地を覗き込むようにして、類が長身を更に伸ばして仰ぎ見ている。
 「……帰ろう」
 咄嗟に踵を返したつくしの腕が、類に掴まれ阻まれる。
 「…っ、離してっ!」
 「そんなに焦って引き返さなくったって、どちらにせよ、ここにはもう司も戒もいないし、あんたを知ってる関係者もほとんどいないんだから堂々としてなよ?」
 「そんなわけ…って!!手っ!!!」
 焦るつくしの手を掴み寄せ、選りに選って手繋ぎ状態で、類がつくしを半ば引き摺りだす。 
 幸いにして今のところあたりに人影はないが、たとえ知り合いに出くわさなかったとしても、どこでどう知人の耳に入らないとも限らない。
 そして、その知人から司に…いや、戒の耳に自分のことが伝わるのが彼女は怖かった。
 …しかも、男と手を繋いでるとか。
 あってはならないことだ。

 「道明寺家の屋敷には多い時には、数百人からの人間が居住してたりするけど、それも主人一家の誰かしらがここにいてこそのことだよ」
 「え?」
 「敷地内には、本館の他にも離れ、その他にもいくつもの家屋があるからさ。その管理の為に常時それなりの人数の使用人は置いてるだろうけどね」
 類の説明に、あらためてつくしもまた道明寺邸の敷地を遠く透かし見る。
 「あそこの要員は主に警備と館の維持管理、それに定期的に行われる大規模なパーティの為かな。でも、今は一族の誰もここ住んでない。だから警備の大半はセキュリティシステムが担ってるから、維持管理にしても最低限家屋が劣化しない程度の人数に抑えているはずだよ?いくら世界に名だたる大財閥の屋敷だって言ったって、世界各国に似たような屋敷をいくつも持ってるんだし、今のご時世だからね」
 「……なるほど」
 その大豪邸の若夫人をしていたつくしにしても、実際のお財布事情までは把握しきれていなかったが、それでもたしかに、日本の屋敷だけでも相当莫大な維持費を要していることは想像に難くない。
 …敷地内に自家用ジェットの滑走路まであったものね。
 「その人員も、あの家では一部の根幹を握る人間以外わりと頻繁に入れ替えてるはずだよ。もちろんグループ内での移動が主だろうけど、主人一家と直接接触していた人間なんて、ホンのひと握りなんだから、あんたの顔をよくよく見知ってて、尚且つ今も残ってる人間なんて、それこそ一人二人いればいい方だし、下手したら誰もいないかも?第一、そういう人間が、ホケホケ意味もなく敷地外をほっつき歩いてることなんて、それこそ相当希なことなんじゃない?」 
 「……それは、そうかもしれないけど」
 「ま、巨大な美術館みたいなものかな」
 「うーん」
 ちょっと違う気がしたが、どういう気紛れにか、類はどうやらこの屋敷の周囲を周遊することに固執したいらしい。
 とりあえずは彼女が逃げ出さないと見たようで、握っていた手は離してくれた。
 …そりゃあ、こんな広い敷地の外周回ってるだけで、知り合いに会うことなんてまずないことなのかもしれないけど。
 それでも、どこかひんやりとした大きな手を離された途端、すぐにでも走って逃げ出したい衝動が湧き上がった。
 その衝動を堪えるのがひどく難しい。
 「さすがに木陰は涼しいね」
 塀から伸びた巨木の枝の作る影が、暑い日差しを遮って、優しい木陰を作っている。
 爽やかな風が広大な屋敷の森から吹き抜けて、わずかに汗ばんでいたつくしの体を冷ましてくれた。
 ふと見上げた塀と塀の間、鉄柵になっているところから遠く見える広い森のような敷地の向こうに、幼い戒の姿が見えた気がした。
 もちろん錯覚だ。
 つくしの罪悪感と哀切が見せた一瞬の幻にすぎない。
 ちょうど真夏の暑い時期、水を撒くつくしに纏わりついて、子犬のように駆け回って燥ぐ姿や、明るく笑いさざめき木の陰に隠れて笑う子供の姿が眼裏に浮かぶ。
 …たしか、あそこのもっと奥のあたりに本館があって、あの木がこんもりした辺りに大広間からの渡り廊下があったんだっけ。
 あれは司の東京本社副社長就任パーティの後のことだったか。
 どこだかの記者が敷地内で勝手に動き回り、司へと突撃インタビューを試みたこともあったと思い出す。
 …昔だったら、そんな相手はボコボコに殴って叩き出してただろうにね。
 司の態度はどこまでも沈着で、カリスマ経営者と世間で謳い評されるに相応しく、堂々たる態度で相手を威圧した。
 …ああ、そうか。その時に類に会ったのか。
 忘れていたピースがまた一つ、また一つと連鎖的に記憶が蘇り繋がってゆく。 
 日本の屋敷に彼女がいたのは、ホンの一年くらいのことだったというのに、こうしてあらためて振り返れば、本当にずいぶんたくさん出来事があったのだ。
 「司は5分の距離でも歩かない奴だったからさ。自分ちの周りでも歩いたことなんてほとんどなかっただろうけど、俺らはたまに天気のいい日くらいはこの辺を散歩がてら歩いて学校に行ったりしたよ。あんたはどうだった?」
 サラッと振られた話題に、つくしも自然に答えてしまっていた。
 「そうだね。…あたしも思えば、ここにいた間はそんなに歩いたりしなかったかな」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0440】へ
  • 【愛してる、そばにいて0442】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0440】へ
  • 【愛してる、そばにいて0442】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
女性に大人気!ビジネスから恋愛相談まで全部500円~!  
価格満足度97%、日本最大級のココナラに今すぐ登録!!

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘